死体洗いのアルバイト
神原将リポート
神原将さんから死体洗いについてメールをもらった。
それは私が高校生の時でした。
社会科地理担当の先生(野球部顧問)がよく話してくれました。
彼は大学の頃に、上京。
金がなく、仕送りもままならない時に、大学の方へ
「死体洗い」というバイトの紙が張ってあったそうです。
だいたい、まる1日やるそうです。
死体置き場というか、ホルマリンでたっぷり満たされた
ちょっと大きい浴槽のような所に、死体は浮いている。
それを、先にカギのついた棒で、引き寄せるのだそうです。
彼(先生)は、オバケとか幽霊をまったく信じない人だったらしく
死体はもう死体だからと割り切っていたんだけど
さすがに「引き寄せる」時は「立っていられなかった」そうです。
そうして、引き寄せ、2人がかりで抱っこしてその死体を寝台に乗せよく洗う。
死体は死体でも「あそこ」もちゃんとあり、品定めなどしていた模様。
はっきり言って「普通」じゃねーよ。あんた。
それで、1日(1回のバイト)で4、5体できればいいとの事。
1体「1万〜2万」はあったそうです。
この先生今はもう30代後半なので、まぁその時代でこのバイト料。
しばらくは何もしないで生活はできるらしいのですが
流石に「飯」が食えない日が続くそうです。
特に「豆腐」が食べられないらしいです。
そうして、このバイトを約1年はやったそうです。
バイトの次の日は1人で部屋にはいられないそうです。
最後まで「慣れる」ことはなかったらしい。
余談ですが、この先生の家の隣りに住んでいる生徒がいました。
その生徒の話。
夜、遅くになると、いつも1階の部屋の灯がつき、なにやらガサゴソ
と聞こえてくる。土曜日の夜。
なんだろうと見ていると、なにやら風呂場で洗っているらしい。
1時間くらいは洗っている。
それが何なのかは、知ることはできなかったけど、どうやら人形らしい
マネキンのような感じで、けっこう大きいやつ。
もう、洗わずにはいられないのでしょう・・・。
ちゅーわけで、また先生から聞いた報告である。
今(1998)、25歳前後の人で、死体洗いの話を先生から聞いたという人が、これで4人になった。
しかも、それらすべては死体沈めバージョンで内容が非常に近いものばかりだ。
死体を探せ!
「死体を探せ!」(布施英利著・法蔵館)という本がある。
解剖学教室の研究室にたびたび電話がかかってくるそうだ。
死体洗いのアルバイトはありますか、という問い合わせである。
はっきりいって、そのようなアルバイトはない。いま募集していないだけでなく、これまで一度もなかったし、これからもない。(P6)
そして、噂の起源を次の2つではないかと推測している。
・大江健三郎の小説「死者の奢り」
・人類学者の植原和郎の「骨を読む」
「骨を読む」に取り上げられているのは、朝鮮戦争時の遺体処理の話で、死体洗いのアルバイトとは違う。
「死者の奢り」は、
死者たちは、濃褐色の液に浸って、腕を絡みあい、頭を押しつけあって、ぎっしり浮かび、また半ば沈みかかっている。
という文章ではじまる。
主人公の「僕」は、解剖用死体処理のアルバイトをする大学生。
その内容は、先生から聞いたという死体沈めバージョンとだぶる。
1957年の8月号の「文学界」に発表された処女作。翌年、「飼育」で芥川賞を受賞し、これらの作品は非常に注目を集めた。
前述の学校の先生たちは、「死者の奢り」が注目を浴びている時、ちょうど大学生ぐらいだったのではないか。
そして、その刺激的な内容が話題になり、そのようなアルバイトが本当にあるという噂が流れたとしてもおかしくはない。
そもそも解剖用の死体が運ばれると、ホルマリンを注入するのであって、死体置き場の大浴槽に浮かべるなどということはないらしい。ホルマリンを動脈に注入するのは、防腐処置であり、細菌などの感染も防ぐ。それは19世紀から始まった方法なのだそうだ。
大浴槽に浮かべるなどという大がかりなことをする必要性はないらしい。(このあたり解剖学関係の本で読んだのだがどの本だったか失念。御教授願う)
つくばから転々さんから、
死体洗いのバイトは、渡辺淳一先生の著書が原因だ・・と、西丸博也(字が違うかも。すみません)前(元?)横浜市立大学教授(法医学)の著書にありました。朝日文庫で、「法医学教室の午後」「続・法医学教室の午後」「法医学教室との別れ」のどれかです。
との情報をいただいた。未確認であるが報告しておく。
死体洗いのアルバイトをするか?
以上、死体洗いのアルバイトが存在したのかどうかは、完全には明確になっていない。
しかし、噂として流れているような大学のアルバイトで死体洗いをするということは、一般的にはないようだ。
死体洗いの第1回目の原稿の後、「死体洗いのアルバイトをさせてもらえるところがあるなら教えてください」というメールが来た。
もしあるとしたら、ぼくは、そのバイトをやるだろうか?
「エデンへの道-ある解剖医の1日」というドキュメント映画がある。
死体を解剖するシーンが多く18禁だそうである。
死体に魂はない、という語りに対して、映画はいくつかの対比を意識的に描写する。眠っている老人と、死体。ピチピチと跳ねている魚をさばくシーンと解剖のシーン。
ぼくたちは、魂をどこに感じ、どこに見ているのか?
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