アメリカの高校生は何を読むか
Bloomington学校区は中学校が2年制(7年生と8年生)、高校は9年生からの4年間だ。多感なこの時期、どんな本と出会うかはとても大事な問題だろう。いにしえの英米文学専攻生としては生徒が持っている英語(必修科目)のテキストに興味があり、色々と質問してみた。
このリストはassignment。公立高校の平均的な課題図書であり、多くの高校生がこれらの本を課題として読んでいる。つまり、以下の文学作品はアメリカ人の基礎教養、と考えてよいだろう。まあどのクラスにも、「全然面白くないっ」と文句タラタラの不心得者が若干名おりますが。
- 9th grade 9年生
- 10th grade 10年生
- 11th grade 11年生
- 12th grade 12年生
9年生
- Romeo and Juliet ロミオとジュリエット W.シェイクスピア
- Great Expectations 大いなる遺産 C.ディケンズ
- Lord of the Flies 蝿の王 W.ゴールディング
- The Odyssey オデッセイ ホメロス
- Inherit the Wind 聖書への反逆 J.ローレンス & R.E.リー
- To Kill a Mocking Bird アラバマ物語 H.リー
- Huckleberry Finn ハックルベリ・フィン M.トゥエイン
- The Great Gatsby グレート・ギャッツビィ S.フィッツジェラルド
- The Sonnet ソネット W.シェイクスピア
- Our Town T.ワイルダー
- MacBeth マクベス W.シェイクスピア
- Things Fall Apart Chinua Achebe(ナイジェリア人作家)
- Of Mice and Men 二十日鼠と人間 J.スタインベック
- The Crucible クルーシブル A.ミラー
- Ethan Frome イーサン・フローム E.ウォートン
- The Scarlet Letter 緋文字 N.ホーソン
- 1984 1984年 J.オーウェル
- Pride and Prejudice J.オースティン
- The Catcher in the Rye ライ麦畑でつかまえて J.D.サリンジャー
- Hamlet ハムレット W.シェイクスピア
notes:
- Inherit the Wind:
1925年テネシー州で起きたScopes Monkey Trial(スコープス・モンキー裁判)を題材とした小説。1960年にはスペンサー・トレイシー主演で映画化もされ、その後も数回テレビドラマになった。
当時、ファンダメンタリスト(聖書の内容を一字一句完全に正しいと信じているキリスト教根本主義者)の勢力が強かったテネシー州では、公立学校で進化論を教えることが禁じられていた。しかし、小さな町デイトンの高校教師スコープスがこれを講義し、逮捕されてしまう。
と書いたものの、実は小説も映画もまだ目を通していない。とても面白い法廷ドラマのようです。
- リストについての個人的感想:
高校生は毎年シェイクスピアを読む、というのがまず驚きだった。これは日本の中高生が国語の時間に古文を読まされる(?)のと同様、難解ではあるけれど、ある程度読み進んだ時に見えてくる、時代を超えた普遍性を意図したものでしょうか。
9年生の課題には、特に古典的作品が選ばれている。そして10年生からアメリカ小説、ホーソン、トゥエイン、スタインベックなどを読むことになる。イギリス文学がおよそ3割。フィッツジェラルドやサリンジャーが入っているのはうれしいが、ポー、フォークナー、ヘミングウェイが含まれてないのはちょっと不思議。
もちろん、これらが課題図書の全てではなく、分厚い国語の教科書には数多くの短編(ブラッドベリ、アシモフ、サキ、サーバー、カポーティなど)が入っているようだ。
- 読書好きではない生徒の場合:
02年の10月、東京の日本語学校会話コースのアメリカ人生徒に、この課題図書をどう思っていたか、質問してみた。
マサチューセッツ州の高校に通っていた彼は作品そのものを読まず、要領よくレポートを書き上げてAの成績を取ったそうだ。これらの本にはレポート対策の出版物も数多いので、そうしたことができるらしい。うーむ。