Education in the US #1

Education in the US #1



RULES FOR GETTING ALONG IN JAPANESE SOCIETY 日本社会にとけ込むためのルール
1. You are a team member. When the team wins, you win. When the team loses, you lose. You are members of several teams: family, village, place of work, country.
2. team members must obey the rules of the team.
3. You cannot swich teams; you belong to a team for life.
4. If one team member makes a mistake or gets into trouble, it ruins the reputation of the entire team, It is not simply his/her mistake.
5. The best rewards in life are for good team work. Individual success may be nice, but it is not shared.

1. 君はチームの一員だ。チームが勝てば君も勝つ。チームの敗北は君の敗北だ。君は同時にいくつかのチームに属している、家族、町、職場、そして国家。
2. メンバーはチーム規則に従わなければならない。
3. チームは一生続くものなので、君は移籍することができない。
4. メンバーの一人が間違いを犯したりトラブルに巻き込まれたりすると、それはチーム全体の評判を落としかねない。一人の間違いでは済まされないのだ。
5. 人生で最も価値のあるものはチームワークだ。個人的成功は素晴らしいだろうが、分かち合うことはできない。

 上記は、日本文化の一面を紹介するために教室で配られた資料である。幾分か崩れかけているとは言いながら、やはりこれらが日本社会のルールだろう。よくも悪くも。
 さて、以下は日本語クラス1の生徒たちが考えたアメリカ社会のルール。これは大人ではなく、高校生の意見だが、十分にアメリカを語っている。

RULES OF AMERICAN SOCIETY アメリカ社会のルール

1. Stand up for yourself, be original, independent.
2. Think about the team, but don't get to be involved..
3. You're replacable.
4. Equality is valued.
5. Individuality is important.
6. Don't humble yourself to the people.
7. Watch your back. (Lock your car.)
8. More casual, ya ya ya.
9. Lazyness is common.
10. Be loved.

 この10項目の何と率直なこと。高校生らしい気楽さに笑いながら、二つの国のルールの違いにしばし考え込む。
ファーストエイド・セット

 新学期が始まって間もないある日、各教室に、ファーストエイド・セットが配られた。生徒がすり傷や切り傷を負った場合に使われるものらしい。透明のビニール袋に傷用テープ、それから薄いゴム手袋が2、3枚入っている。
「それは何?」
と尋ねると、Teacher Bは
「エイズがうつらないようにするための手袋。」
と平然と答える。
ここではHIV感染防止、という言葉がブラック・ユーモアではなく、日常的に使われている。いやはやアメリカなんだね、と思う瞬間だった。

Special Education 特殊教育

 LD (Learning Disability、学習困難) については10年ほど前に日本の新聞記事を読んだことがある。LDという用語そのものがアメリカから導入されたものだろう。その新聞記事には、記憶に間違いがなければ(けっこうあるけど)、LD児に薬を処方しクラスをコントロールする話がやや批判的に書かれていたと思う。

LD; Learning Disabilities
 言語に関する4技能(読むこと、書くこと、聞くこと、話すこと)または計算能力などが、通常より著しく劣ること。
E/B D; Emotional/Behavioral Disorder
 情緒的または行動上の落ち着きのなさが、学校や、家庭、コミュニティでの進歩を妨げること。
  Pysically Impaired(身体障害)、Visually Impaired(視覚障害)、Hearing Impaired(聴覚障害)、Autism(自閉症)など医学的な定義と異なり、LDやE/B Dは通常の生徒との境界が必ずしも明確ではない。私が興味を覚えたのは、その曖昧さの部分だった。ホスト・ティーチャーであるTeacher Bとも、よくこの話をした。
  LDやE/B Dは、子どもの発育に不安を持つ親がカウンセラーに相談するとか、教師が親に提案するなどして、一定の手続き(専門家によるテストなど)の後に認定される。アメリカの学校でよく聞くのは、main streamという言葉。これは通常の授業、大学への進学に向かう流れだろう。special ed.はこのメイン・ストリームに沿い、一部に合流地点が設定された形で進められる。つまり、特殊教育が必要な生徒も、個々の特徴に応じて投薬などの治療を受けながら、一般の授業も参加するのである。それを可能にする多数のスタッフと教育システムには、本当に感心させられる。

 が、しかし、日本語クラスに「次の生徒はE/BDです」という通知が来て、実際の生徒と関わるようになると、このシステムの問題点がかすかに見えてくる。E/BDやLDの生徒は、テストや宿題にある程度のexcuse(免除)が認められる。授業に参加したりしなかったりの結果、彼/彼女はCかDの成績を取り、何とか単位を取得することになるのだが、これは望ましいことなのか。
 例えば、かなり落ち着きのない生徒Xと、E/B Dと通知された生徒Yが、二人とも同程度に騒がしいという場合も考えられる。ひとつのクラスの中で、Xはテストでの及第点や宿題提出などを求められるけれど、Yの怠慢は事実上excuseとして容認されてゆく。しかし、 早々と投薬や免除を与えることが、どのくらいよい結果をもたらすだろうか。子供が本来持つ可能性を歪めることもあるのではないか。

 効率よく機能するシステムのメリットとデメリット? 教育においては、どんな理論やメソッドも結果を約束はしない。常に試行錯誤状態の中で子どもは育ってゆく。だから面白い、とも言えるけれど。


2002年


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