価値の多様化のなかでの女性の進路選択

かつて女性の役割や職業とのかかわりは、ほぼ確定しており「仕事か家庭か」の限られた選択であった。
選択股は限られていたが、選択に際して葛藤を生じることは少なかったのである。
しかし社会が豊かになり、価値観が多様化するにつれ、自らの役割を自己責任のもとで選択する社会となり、
自己の独自性、有用性を
確認することで、職業アイデンテイテイを成熟させていけるようになってきた。
その反面、女性が家事や育児の責任を負うことが多い為に結婚、出産とそれに引き続く育児、
あるいは介護に遭遇する度、
職業へのコミットの仕方を変えなければならない悩みも出てきたのある。
産業のソフト化、女性の高学歴化は、卒業後女性が仕事につくことを当たり前にし、
昨今の未婚化や晩婚化は若い時期のキャリア貯蓄を促進したのである。
一世代前までは多くの女性が「結婚までの腰掛け」ないしは「社会勉強の為」に就職したが、
今は一人の社会人として経済的な自立や自己実現を目指して働きたいと考えている。
多くの女性が直面している問題は働くか働かないかではなく、人生のどの地点でどのように働くのか
ということなのである。

まず第1に「女性向きキヤリア」からの自由である。
性別によるステレオタイプな枠組みからの職業選択の脱却である
市場における事務職削減の動きの中で、女性の選択が女性向きといわれる
事務職に集中していることがいっそう女性の就職環境を厳しくしていると考えられる。
また、終身雇用制の崩壊とともに中途採用や能力による人事考課が進み企業は、
個人の能力をはかる客観的な指標のひとつとしての資格に注目するようになった。
女性の資格所得の熱意は、技術革新や情報化に乗り遅れまいとする危機感から生じる
自己研磨の面と、自分探し、適職探しの一環という両面を志唆している。
「あれもこれもとりあえず」「みんながとっているから自分も」ではなく
就職後の職業人生を展望した有意味な資格をとるべきである。

第2に、「主体的な」進路選択である
価値の多様化や情報化は、何を選択すればよいのか決めにくい。
これから少子化や高齢化の時代に、時代の特色を考えて需要の増えていく"特技"のほうが有利ではあるが、
自分の興味、感心領域はどこにあるのか、自分の能力がどれほどなのか、目標を達成するには
何を伸ばしていけば良いのか
アイデンテイテイの棚卸が必要である。
男女雇用機会均等法により、本人の努力と能力で社会進出や活躍の場が増えた
女性向きの仕事を選ぶ人も多い反面、トラク、バス、タクシードライバーの運転手に女性がいるのも
珍しくは無くなってきたのも事実である。
また看護士、保育士など女性の職業とされていたものに男性もいるようになり
職業に性差というものがなくなってきた。
ニュービジネスへのチャレンジは今後の少子化や高齢化など需要を考慮
する必要があるが、やりたいこと、選択股が広がったことは自分がやる気があれば可能なのであり,
社会の一員として責任ある生き方をすべきである。

第3に職業への導入部分でのモデル、継続していく力になる心理的なサポーター職業的な能力を高め、
新たな展開にあたって力になるメンターを求める
ことである。有効な助言やサポートと、生活全般にわたるアドバイスや精神的な支えとなるような
安心を与えるサポートの両方に通じた上司や、パートナー親、きょうだい、その他サポーターである
仕事を人生の重要な要素としたいときこそが、パートナー選びがカキである

第4は、職業的な能力は自ら育てることである。
能力や適正は親や社会からの期待があれば育ち、期待されなければ特別な配慮や
恵まれた条件がない限り育たない。
女性の職業意識や能力、適正は、場や役割が与えられれば磨かれるものである。

しかし、みんなが正社員で働けるわけではない。子育て、介護、価値観の多様化で、
パートという働き方を望む人もいる。
現実は子育てが一段落した後、仕事を探しても低賃金のパート以外なかなか職
がない。能力や意欲のある女性たちが、相応に処遇されず、能力も発揮できないでいる。
男女共同参画社会に程遠く、企業や社会にとって大きな損失である
加速する少子化高齢社会にとっても問題である。
正社員とパートの境目をできるだけ縮め、男女や年齢の区別無く能力や家庭の事情などに応じて働ける
社会がくることが望ましい
現実、男性は成果を期待され、女性の育児休暇所得では戦力にならない
男性が子育てに挑戦できるきっかけをつくることが、ワークシエアリングのあるべき姿である。
働くことによる充実感や高い自己評価、働く環境を含めた職業生活が
個人のアイデンテイテイに大きな影響を及ぼすのである。
ますます進路選択,職業選択が生き方選択と分かちがたくなってきたのである。

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