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なにわ修習記

2000年5月 民事裁判修習編


5月31日(水)

 今日で5月も終わり。昼休みに家賃の支払を済ませた後、アパートの解約通知を出す。実務修習もあと1か月、大阪の町で暮らすのもあと1か月ということで、寂しい気もする。まあ、何年か東京で弁護士をしてから戻ってくるという道もあるにはあるが・・。


5月30日(火)

 今日は、以前から発注を受けていた争点整理案を何とか仕上げて裁判官に提出した。当事者(及びその代理人)の主張を、法律適用の要件に分けて整理するものだが、生の主張をまとめるのは思った以上に難しい。研修所でも同じようなことはやってきたはずなのだが・・。

 午後、健康診断があって、その際体重も測定した。またちょっと太っている。ショックだ。運動せねば・・。

 夜、家に帰ると、L予備校から電話が。論文答練の添削の依頼だ。もちろん断った。添削やるヒマなどないよ。禁じられているし。それに、予備校にはほとんど恩義を感じていないし。特にLは、自習室以外は全くと言っていいほど使わなかったからな。むしろ気になったのは、私の今の電話番号をどのようにして知ったかである。そこのところを相手方にただしたら、それは言えないと口を濁していたが、自分の情報がどのようにして流れたかを知るのはプライバシーの権利の最も中核なような気がするが。これで、司法試験受験予備校を経営しているとは、本当に片腹痛い。まさか、取材源秘匿の自由というわけではあるまいな。親に訊いたら、大阪のことについては訊かれても話してもいないと言っていたけど、まさか、修習生からなんてことはないだろうな・・。


5月29日(月)

 明日が期限の争点整理案が仕上がらないので、少々残業。あ、それに、PL訴訟(と原告が主張しているもの)の記録を検討していたのも原因。ちなみに修習生には残業手当は一切ありません。有給休暇もない。労働を提供して対価をもらう関係にないというのがその理由だそうだ。残業手当は別にいらないし、もらうのは却って変かなと思うけど、有給休暇がないというのは、何か納得いかない。まあ、実務修習はそこそこ楽しいし、前年度までに比べると、半年早く弁護士になれるというのは素敵なことなので、文句は控えとくけれど。

 今、司法制度改革で、ロースクールの導入が叫ばれているが、そんなものが導入されたら、大学を出ても、金を払ってロースクールなんてものにいかない限り法曹になれないってことになってしまう。金をもらっていても、1年半も法曹になるのが遅れるのはどうかなあと思うのに(実務修習はまあいいけど、前期と後期)、さらに、金を払って受講しなければならないなんて、馬鹿らしいったらありゃしない。しかも、所轄するのが大学とか文部省なんて・・。三流機関や三流官庁にでかい顔させてのさばらせる必要なんてないと思うし、有害無益だと思うんだけどなあ。

 夜は、心斎橋で鞄を購入した後、立ち飲みへ。顔馴染みの常連さんも何人かいらっしゃったし、アパレル販売関係の人の有益な話を聞くことができたしと、ラッキー。


5月25日(木)

 今日は倒産部での修習。大阪には全国唯一の倒産専門部がある(東京は2部に分かれている。)が、そこに配属されるのだ 。

 まずは同時破産廃止の記録の検討。同時破産廃止(「同時廃止」ともいい、「同廃」と略される。)とは、破産宣告がなされると同時に破産手続が終了するものである。破産者の財産が破産手続を行う費用を賄うほどもないときに行われるのだ。

 次に債権者集会を傍聴。弁護修習の時に弁護士についていって見た債権者集会は、債権者がだれも来ないものだった。大した額がもらえるわけでないのだから、手間をかけて出席する意義が少ないというのが大概の債権者の意識であるからだ。ところが、今回傍聴した債権者集会では大人数の債権者がいたのでびっくり。まあ、それなりの事情があったみたいだが・・。

 あと、破産者を30名ほど一室に入れて、免責のための審問をやっているのを見た。一斉にやるとは訊いていたが、こんな大人数を一度に捌くとはびっくり。一斉で行う審問に引き続き、個別の審問が。債権者が1名出席して意見を述べていたケースにがなかなか面白かった、って、不謹慎な言い方か・・。

 午前中の最後は書記官の人を交えた座談会。といっても、書記官の方からお話しを伺うだけだったが。事件数が増加して期日を入れるのがたいへんなので、資料は早めにきちんと用意して欲しいとのことだった。大阪での事件数は、昨年(年間8千件以上)に比べ、3割近く増加しているらしい。年間1万件は越えるだろうとのことだった。

 午後は同時廃止の債務者審問を傍聴する。資料が足りなくて、再度期日が入れられることになっていた債務者も何名かいた。1度で終わらないと、次の期日まで1か月近く伸びるから、債権者からの追及を(申立代理人が)自らかわさなければならない期間がのびるので、結構たいへんなことになる。事前準備の大事さを痛感した、って、いろんな事情があってできないこともあるんだろうけど。


5月22日(月)

 出勤すると、専門部修習の配属先が決まっていた。私は行政部。行政事件を扱う部署だ。配属先一覧を見ると、どうやら、みんな第1希望の部署に配属されたような感じだ。行政、労働、知的財産の3部のうちの1部に行くのだが、知的財産部に配属された者が断然多い。知的財産が最近のトレンドということなんだろうか。でも、行政事件や労働事件も今後増えていく分野だと思うけどなあ。


5月19日(金)

 朝から執行官について、動産執行の現場を見て回る。

 最初に行ったのは企業のオフィス。債権者も一緒である。今回の執行は紛争解決に向けての一手段といった感じで、オフィス内のめぼしい財産をチェックした後、机の裏に札を貼っておしまいとなった。執行されたくなければ債権者と話し合ってください、ということだった。

 この民事執行に同行して感じたのは、執行もホント自己責任だな、ということである。まず、同行を予定している債権者が時刻通りに現場に来ていないとその日は執行中止になってしまう。また、大阪では鍵師(家の鍵を開ける人)は、債権者が自分でさがしてつれてこないといけないのだ。債権者が鍵師を連れてこないと、その日は執行できない。裁判所が鍵師を用意するのは、癒着しているとの批判を浴びるので大阪ではやっていないとのことだった。東京では、執行官室で、鍵師や運送屋も一式でそろえることができるという話も聞いたことがあるが、これも地域差なのだろうか。


5月18日(木)

 今日は修習が終わった後、配属されている部の歓迎会があった。部内の人の日程の調整から、ここまでずれ込んだのだ。今配属されている部は、皆和気藹々としてなかなかいい雰囲気のところだと思う。なかなか書記官の人びとと話す機会がないのは普段残念に思っていたので、これを機に今後いろいろお話しを聞ければと思う。


5月17日(水)

 今日は午後に調停部での修習があった。定時5分前に集合のところ、ぎりぎりの時間に行ってしまって裁判官に怒られた。

 調停は建築紛争についてのもの。調停委員は、弁護士と一級建築士が1名ずつである。設計の仕方が悪かったために、完成品を目的どおり使うのには支障があるので、どこを直せばいいのかが争点となっている事案だった。建築士の調停委員の方の事件の裁き振りが素晴らしい。専門的知識が背景にあるだけに本当に強いという感じだ。裁判官がこの種の事件を調停に付したがるのも納得がいく。でも、数百万の事件で何回も法廷に出廷して、これじゃ弁護士も大変である。

 夕方は、研修所の教官が大阪に来られていたので、修習生数名で教官を囲んで飲む。久しぶりに会う顔もたくさんいて、懐かしい。司法制度改革なんかについても議論してしまった。


5月16日(火)

 今日は午後の傍聴をパスさせていただいて、判決の起案をしていた。うー、起案を進めていくと新たな問題点が出てくる・・。でもなんとか夕方までには仕上げた。ふう。


5月15日(月)

 今日は執行官について民事執行の現場を回ることに。我々の期から、現況調査と動産執行に1回ずつ同行することになった。今日は不動産への強制執行のための現況調査(現場の様子を調べること)への随行だ。

 午前9時前に裁判所内の執行官室に集合。早速タクシーで最初の現場へと向かう。現況調査は執行官1人に対し修習生1人が就く形だ。

 第1の現場はガソリンスタンド。ガソリンスタンドでは、建物に加え、地下にある貯蔵タンクもかなりの価値のあるものとして調査の対象となるそうな。今回は所有者の人が多忙ということで、再度訪れることになった。

 第2、第3の現場は一般の住居。あらかじめ執行官の人が下見されていて、空き家であることが分かっていたので、鍵師の人も手配されていた。

 鍵は簡単なものだと5秒ほどで開くそうだ。今回は、鍵が古くなっていて形がゆがんでいたりしたためか、どちらの現場でも数分かかった。鍵を開けて中に入る。中が長いこと空き家になっていることから、土足で上がる。家によっては家財道具がすっかり持ち去られているところもあるとのことだが、今回調査に行ったところはどちらも、ところどころに物が散らばっていた。でも、大きな家財道具は持って行かれているので、床が見えている部分はかなり広い。私の家よりきれい、なんて一瞬思ってしまった(恥)。あらかじめ入手されていた図面と対照して家屋の作りをチェック。3件目の家は、かなり増築が行われていた。巻き尺を持って建物の大きさを測定するのを私も手伝った。公の仕事の一端を担うって緊張するなあ(←とても元公務員とは思えない(汗)。)。

 しかし、折角買った家を置いて逃げなければいけないとは、悲しいものだ。弁護士になってもきちっと衣食住に困らないような稼ぎはせねばいかんよな、また、下手に借金するものではないよな、と痛感した次第である。


5月13日(土)

 午後、前の勤め先のボスの立ち会い演説会を聞きに行き、終了後事務所に遊びに寄った。選挙も近いということで、これまでの事務所に加えて、応援団の事務所(後援会事務所みたいなものか?)ができていた。なかなかユニークな形の建物だ。選挙情勢は厳しいが、混戦状態に何とか持ち込みつつあるようだ。彼女にはこれまでにない新しいタイプの議員だし、しっかりした考え方と行動力を持った人なので、何とか当選してほしいものである。彼女の名は辻元清美。選挙区は大阪10区(高槻市、三島郡)です。


5月12日(金)

 午後傍聴した証拠調べがすごかった。原告、被告とも本人訴訟で、本人尋問が行われたのだ。原告はかなりの歳の人。都合の悪いことは記憶にないって言うし、聞かれていないことを喋るし・・。でも、それにもましてひどかったのが被告、本人訴訟だから、尋問も当事者本人が相手方当事者に対して行うのだが、質問ではなくて、意見を一方的に言って、相手と言い争っている。まあ、この点だけなら弁護士の代理人でもたまにいるけど、裁判長の注意もなかなか聞かないし、やれやれ、っていう感じだ。やはり民事訴訟でも弁護士強制主義を取った方がいいんじゃないかといたく感じた日であった。


5月11日(木)

 今日は保全部で修習。大阪には民事保全を専門に扱う部があり、その部に1日だけ配属されて、記録の検討や、債権者からの事情聴取を傍聴するのだ。

 先日行われた民事保全の講義でも講師の裁判官が強調されていた点だが、保全命令を出す要件のうち、「被保全権利」については疎明のための資料をそろえてくるのだが、「保全の必要性」については資料を出してこない代理人が多い。まあ、保全の必要性って抽象的だし、債務者に他に財産がないことや、占有を他に移転する可能性が大きいことって証明が難しいけれど。

 今日は午前中1件、午後3件の事情聴取を傍聴したのだが、午後の3件はいずれも不動産仮差押の事案で、事件のバラエティに欠けたのがちと残念だった。まあ、弁護士になってもバラエティにとんだ事件はできないんだろうから、文句を言ってはいかんのだろうが。


5月9日(火)

 今日は1日中法廷で傍聴。証人尋問、眠いよ〜。銀行員が顧客の預金を流用したとして損害賠償を請求されている(銀行も使用者責任を問われている。)事件なのだが、銀行員の受け答えは実になめらか。流用していないのか、それとも、いいわけも前もってよく考えてあったのか・・。民事訴訟の本人尋問はうそばっかりだという話もあるからなあ・・。

 夕方は立ち飲み屋「カナマターク」に。常連さんがケーキを持ってきており、私もお裾分けに預かった。これがクリーム・ブリュレっていうやつか。初めて食べたが、大変美味でした。


5月6日(土)

 東京で妹の結婚式に列席。ちなみに私は独身。そう、先を越されたのだ。

 妹の連れ合いになってくれる人はとてもええヤツなので、彼女も幸せもんだと思う。


5月4日(木)

 今日は東京から知人が来阪したので、ミナミで一緒に食事をする。1989年にピースボートに一緒に乗って以来の友人である。大阪にいるピースボート仲間も一緒だ。心斎橋の洋食屋(「KAKINOKI」)でランチを食べた後、ミナミをブラブラし、難波近くの珈琲店(アラビアコーヒー)、最後にミスド、と梯子した。久しぶりに会えて話しもはずんだし、ランチや珈琲は美味しかったし、ミスドではちょうどオール100円セールをやっていたしで、ラッキーだった。


5月1日(月)

 午前中は即日起案の講評があった。起案というのは、与えられた事案を基に当事者の主張を整理したり、判決を書いたりするというもので、民事裁判の場合は当事者の主張を整理することが主になる。

 起案をしているときは、割と簡単じゃんとか思ったのだが、全く甘かったことが判明。間違いしまくっていた。要件事実論も奥が深いな。民事裁判修習も残り2か月。力入れて勉強せんとな・・。


2000年4月民事裁判修習+花見編へ

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