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なにわ修習記

2000年3月 刑事裁判修習編

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4月5日(水)

 刑事裁判修習は今日で最後だ。午前中は修習結果簿の記載と机の中の整理。書類がやたらと詰め込んであるので、必要なものと不要なものを分類し、不要な書類をシュレッダーに。

 午後には刑裁修習修了式。修習生が一人一人感想を述べる。結構みんな思ったことをずばずば言うものである。私は、書記官実務を実際に(公判調書の作成だけだが)経験できたことが良かったので、カリキュラムとして組み込んではどうかということ、社会修習では少年院も見てみたかったということを述べた。書記官実務については他の修習生からも希望が出ており、カリキュラムに取り込むことを考えたいと、修習指導担当の裁判官の方も述べておられた。社会修習については、受け入れ側の事情もあるので、なかなか難しいとのことだった。


4月4日(火)

 午前中は判決の起案。配属部で1日中修習できるのは今日が最後なので、なるべく早く済ませなければならない。なんとか午前中に仕上げた。

 昨晩はほとんど眠れなかった。睡眠時間は何と1時間半だ。睡眠時間が少ない時は食事をしっかりとることが大切と司法試験受験時代にお世話になった先生に言われていたので、朝食に弁当を食する。朝早く起きると洗濯もできる。早起きは三文の得って本当だなあ。

 午後は、最近改正された法令の動きの調査。そして、同じ部の他の修習生が担当する事件の合議だ。有罪か無罪か微妙な事案だった。有罪か無罪かで一人の人の人生が決まる。

 定時後、部内の裁判官、書記官、事務官の方々が我々の送別会を開いて下さった。我々のいる部の方々は皆さんよい方々で、部の雰囲気もよいので、この2か月あまりは本当にラッキーであった。同じ部に配属された修習生のメンバーにも恵まれていたし。

 送別会は1次会が飲み会で、2次会がカラオケだった。書記官の方々もはっきりものを言われるのでホントに面白い。カラオケもかなり盛り上がっていた。

 この部での修習も明日で終わり、明後日からは民事裁判修習となる。配属される部はどんな部なのだろうか。不安である。


4月3日(月)

 今日は東京から寝台列車で帰阪。いったん家に戻った後に裁判所へ。寝台車ではかなり寝たけど、ちょっと寝覚めが悪いのか、同じ部屋の修習生に顔色が悪いと言われた。うーん。

 刑事裁判修習もあと3日。気合いを入れなければ、と思うのだが、なかなか起案が進まない。証拠の標目(事実を認定するのに用いた証拠の一覧)を作るのに結構手間取る。あと、量刑も決めるのがなかなか大変だ。結局翌日のばしになってしまった。うーん。

 夜は飲み会があったのだが、自分自身は体調が悪いのとかなり突っ込みを入れられてぼけきれなかったので、かなりテンションが低くなってしまった。他の参加者は盛り上がっていたようだったのでよかったけど、ちと申し訳ない気だ(一応幹事だったのだ。)。


4月2日(日)

 昨晩は12時過ぎには寝てしまったので、朝は割と早く目が覚めた・・といいたいところだが、結構目覚めが悪い。朝食を申し込み忘れていたので、フロントの人にコンビニエンスストアの場所を聞き、朝食の買い出しに。府中は桜の花が見頃になっている。帰り道の途中にある公園のベンチで花見も兼ねてとばかりにおにぎりを食べていたら、上から何かが落ちてきた。見上げると鳥が木に止まっている。糞が落ちてきたのだ。身体と、おにぎりを入れた袋の間に落ちたのは幸いだった。

 午前中は、司法修習生に対してなされたアンケートの結果を基に、「司法修習を考える」という企画。木村晋介、田中両弁護士の司会進行によるものだ。私たちの代では、それまで続いていた寮祭が中止になったのが大きな出来事であり、議論の時間もその点に多くが割かれていた。

 午後は司法制度改革をめぐるシンポジウム。NHKの若林誠一解説委員、自民党の保岡興治代議士、中坊公平弁護士、園部逸夫元最高裁判事という豪華な顔ぶれだ。

 議論の中で特に疑問に思ったのは、中坊弁護士の言う「公益活動の義務化」と、保岡代議士の言う「法科大学院の司法試験受験における優先枠設定」である。全くふざけたことを言うとしか言いようがない。

 3時に全プログラムが終了。いったん親元に帰って着替え、荷物をとった後、東京で友人と食事。午後11時発の銀河号に滑り込んだ。


4月1日(土)

 今日は司法修習生の「春の集会」に出席した。「春の集会」とは、司法修習生の自主的な主催、企画による活動で、全国に散らばっている司法修習生が一同に会して(もちろん自由参加なので、今回集まったのは全修習生約800人中300人強だったが。)、旧交を温めあったり(といっても、9か月しか離れていないが・・)、議論しあったりする場である。今回は、実行委員会の人の中に顔の広い人がいたこともあって、著名人がずらりとそろった企画となった。

 初日であるこの日は、まず筑紫哲也氏の基調講演から。筑紫さんの話は今までも何回も聞いたことがあるが、いつ聞いてもウィットが聞いていて面白い。人柄の誠実さもうかがえる。

 基調講演の後は、3つのグループに分かれて分科会に。私は希望をあらかじめ出さなかったところ、福島瑞穂さんの講演を聞くことに。この人、昔に比べて舌鋒が大分丸くなったような気がする。

 これでこの日の講演は終わり。部屋に戻る。宿泊先は安田生命の研修施設なのだが、ムチャクチャ立派なところである。ホテルのシングルルームと遜色ない設備だ。

 夕方は参加者全員が集まっての立食パーティー。クラスが異なり、修習地も違う人たちとは本当に久しぶりにあうので懐かしい。その後、クラスごとの2次会に。私は不覚にも、2次会突入の時点でかなりできあがってしまっており、0時ごろに泥酔し、自室に戻ってすぐに寝た。


3月31日(金)

 朝から記録の検討。昨日検討できなかったので、今日は精力的に検討しなければ。でも体調がかなり悪い。

 朝と夕方に、同じ部に配属されている修習生の担当する事件の合議があった。うーん、2人ともすごい事件を手がけているなあ。2人とも否認事件(被告人が起訴された事実を争っている事件)を割り当てられているのだ。私は合議事件(複数の裁判官で裁判体を構成し、審理・判決を行う事件。)の否認事件をしたことがないので、私に回ってこなくてよかったとホッとする反面、ちょっとうらやましい気もする。

 夜は、この4月で研修所を去られる教官の送別会に出席するため東京へ。本当にお世話になったが、自分がそれに応えてどれだけ進歩したかはかなり疑問の点もある。


3月28日(火)

 今日は模擬裁判があった。私は弁護人側だ。証人のうちの1人の尋問を担当したのだが、この尋問、実際にやってみると思ったほど上手く行かないものだ。

 訴訟の経過では、捜査段階で被告人が有罪であると供述していた証人が、公判(要するに法廷で、っていうこと。)で急に前言を撤回し、被告人が無罪であると主張しだすという予想していなかった展開に。(でも、模擬裁判の常としてこういうことはよくあるので、予想してなかったのがうかつだったという話もあるが。)。検察官は捜査段階の書面を2号書面として(刑事訴訟法311条1項2号によって、証拠とすることが認められる書面)証拠申請してきた。この申請が認められるかどうかが一つの山だったが、結局認められてしまう。弁護人側も必至に弁論を展開したが、結局敗訴。うーん。事前の検討会をさんざん開いたのは何だったんだ・・。苦労された主任弁護人の人は特にショックのようである。あまり助けられなかったのが悔やまれる。でも、自分が弁護した被告人が有罪判決を受けるって本当にやだね・・。


3月15日(水)

 今日も1日起案。以前調書を作った事件のものだ。単純な事件と言われていたが、記録の分量は結構ある。警察は本当に大変だなあと、こういう記録を見ると思う。でも不祥事が許されるわけではないが。相変わらず花粉症で頭がボーっとする。


3月14日(火)

 今日は花粉症が非常にひどく出て、朝から頭がムチャクチャボーっとした。

 昼からは問題研究。あらかじめ出された刑事訴訟上の問題について、当該問題を担当するグループ(あらかじめ決められている。)が検討結果を発表し、それを基に修習生間で議論しあうというものだ。今回で2回目である。頭は相変わらずボーっとして、集中力が続かない。うーん・・。


3月13日(月)

 今日は傍聴を休ませてもらって、担当の事件の判決の起案をしていた。訴訟記録が結構大部で、証拠の整理をするのが大変だ、って、合議メモを作る際にきちんと整理しておけばよかったのだが・・。夕方までかかってようやく書き上げる。それにしても頭が重たい・・。


3月7日(火)

 今日は担当の事件の合議があった。被告人が犯罪事実を認めている事件なので、事実認定は特に問題はなかったのだが、法令の適用がなかなかめんどうだ。没収や追徴の規定が特別法による必要的なものだったりするなど、気づかなかった点をいくつか指摘されギクッとする。 指摘された法律を見てみると、なんと法律が改正され、条文の条数が変わっている。経過措置として、改正前の行為については旧法が適用されることとなっているので、旧法を適用することになるのだが、書き方が難しくなってきた。


3月3日(金)

 午後から弁護士会で期間外修習。弁護士による講演3本である。

 一番最初はWTOについての講演。WTOではサービス貿易の自由化も議題とされるので、法律事務をめぐる規制についても国際的な自由化をすべきということが対象とされ、それに対しては日本政府や日弁連として受け身ではなく積極的に提言をして行くべき(中身は手放しの自由化推進というのではない。)という内容であった。

 次はいわゆるメルボルン事件。日本人観光客が旅行先のオーストラリアで薬物輸入の罪に問われ長期の懲役に服しているが、本人達はえん罪を主張しているという事件だ。いくつもの「不幸」や「無知」、「判断ミス」が重なって、無実(というか故意がないこと)をうまくアピールできず有罪になってしまった事件とのことだった。在豪の神父さんからの手紙がもとで大阪の弁護士が救援活動に乗り出したということである。しかし、薬物輸入で懲役15年とは、日本に比べて薬物輸入について何と厳しいことよ!話を聞くと、弁護士の方々の活動には本当に頭が下がるとしか言いようがない。

 最後は、信販会社と消費者問題について。消費者問題はそれを扱う部署にいたことがあるので、興味深かった。信販会社の存在がなければ詐欺的商法もそんな多額なものにはならないというのは、正にその通りであると感じた。いやー、借金はおいそれとするもんじゃないですよ。特に最近危ないと思うのがクレジットカードのリボ払い。借金が長期にわたって残るし、利息も今の時代では馬鹿にならないと思う。


3月2日(木)

 今日は書記官の仕事の一部を体験。といっても、公判調書と証人尋問調書の起案をしただけだが。

 公判調書は、実際に行われた手続の流れをきちんと押さえていないとつくれないので、傍聴の時とても緊張した。また、証人尋問調書は、どんな質疑応答が行われたか逐一押さえておく必要があるので、更に緊張した。

 この機会に公判調書をいろいろ見てみると、最終弁論のなどは「別紙弁論要旨記載のとおり」で済まされてしまっている。言いたいことはきちんと弁論要旨の書面で書いておかないと裁判に影響を及ぼすことは難しいって前期修習の講義で聴いたが、ホントその通りであると実感した。書面の威力は絶大である。


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