商法 平成8年度第1問

問  題

株式の併合又は分割と資本との関係について論ぜよ。

答  案
(本試験再現、評価A)


一1 株式の併合とは、二株を一株、三株を
二株というように、既存の株式をそれよりも
少ない数の株式にまとめることをいう。
 株式の分割とは、一株を十株に、又は十株
を十一株にといったように、既存の株式をそ
れよりも数の多い株式とすることをいう(二
一八条)。

2 これに対し資本とは、会社財産を確保す
るための基準となる一定の数額をいう。

二 株式会社において資本の制度が定められ
ているのは、株式会社における社員たる株主
が出資額を限度とする間接有限責任しか負わ
ない(二〇〇条一項)結果、会社債権者にと
って唯一の引当財産である会社財産を確保す
るという点にある。

 このように資本制度の目的が会社財産の確
保にある一方、株式の併合や分割は会社財産
の増減をもたらすものではないので、資本と
の間に必然的な結び付きはない。

三 しかし資本については、その額が低く定
められると会社財産がみだりに流出するのを
防げなくなることから、額面株式の株金総額
を下回ることはできないとされている(二八
四条ノ二第二項但書)。
 したがって、株式分割による株金総額の増
加の結果資本額が株金総額を下回ることとな
る場合には、資本を増加するか、定款を変更
して株金額を引き下げる(一六六条二項)こ
とが必要となる。

四 また、資本を減少させた結果、資本額が
株金総額を下回ることとなる場合には、株式
の消却(二一二条)、定款変更による株金額
の引き下げ(三四三条、一六六条二項)又は
株式の併合(三七七条)が必要となる。

五 このように、株式の併合、分割と資本の
間には必然的結び付きはないが、額面株式の
株金総額が資本の最低限を画す機能を有して
いることにより、相互に影響しあっているの
である。

                以  上


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