破産法 平成8年度第1問

問  題


 主たる債務者(法人を含む。)に対する破産手続が解止した場合、その保証債務はどうなるか。

答  案
(本試験再現、評価A)


一1 破産手続の解止とは、破産手続が終了して破産者が財産の管理処分権を回復する全ての場合をいう。

2 破産手続が解止する場合には、(1)破産取消し、(2)最後の配当による破産終結決定、(3)破産廃止及び(4)強制和議認可決定の確定が挙げられる。以下、これら各場合ごとに保証債務に与える影響を分けて論じる。

二 破産取消しの場合
1 破産取消しとは、破産宣告に対する不服申立てにより破産宣告が遡及的に無効となることをいう(一五六条)。

2 破産宣告が遡及的に無効となる結果、破産宣告が保証債務に与えた影響も遡及的に無効となる。
  すなわち、破産宣告により保証人は催告・検索の抗弁権を主張できなくなるが(民法四五二条但書、四五三条)、破産取消しによって破産宣告が遡及的に無効となることにより、保証人は再び催告・検索の抗弁権を主張できるようになる。

三 最後の配当による破産終結の場合
1 最後の配当とは、破産財団全部の換価が終了した後になされる配当をいう。
  破産手続は破産者の財産を債権者間で公平・平等に分配することを目的とする手続であるから、最後の配当によって破産手続はその目的を達成し終了する(二八二条)。

2 この場合、破産宣告の効果を遡及的に無効とするわけではないので、保証人の催告・検索の抗弁権(民法四五二条但書、四五三条)は回復しない。

3 ところで、最後の配当による破産終結に際して破産者が免責を許可されると、破産者は、配当を除いて、破産債権者に対する債務の全部につき責任を免れる(三六六条の一二)。
  しかし、免責によっても保証債務には影響がない(三六六条の一三)。保証債務の担保的機能が実効を有するように、保証債務の附従性の例外が定められたのである。

四 破産廃止について
1 破産廃止とは、配当にも強制和議にもよらずに、破産手続を将来に向けて終了させることをいう。総債権者の同意による廃止(三四七条)と財団不足による廃止(一四五条、三五三条)がある。

2 財団不足による廃止の場合には破産者が免責を受けることがあるが、免責許可決定が保証債務に影響を及ぼさないこと、前述のとおりである。

五 強制和議認可決定の確定
1 強制和議とは、破産者の提出した弁済計画を債権者が昇任することにより、破産的清算によらずに破産手続を終了することをいう。

2 強制和議の内容として、破産者に対する債務の免除がなされることがあるが、これによって保証債務が減縮することはない(三二六条二項)。保証債務の担保機能に鑑みたものである。

以 上


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