平成10年度口述試験 民事訴訟法

●:試験委員、○:筆者


● 当事者の意思で訴訟が終了する場合を挙げてください。

○ 訴えの取下げ、請求の放棄・認諾及び訴訟上の和解があります。

● なぜ当事者の意思で訴訟を終了することが認められるの?

○ 民事訴訟においては訴訟の終了について処分権主義が妥当するからです。

● 処分権主義の意義は?

○ 訴訟の開始、訴訟物の画定及び訴訟の終了について当事者の自由な処分にゆだねられる建前をいいます。

● 処分権主義の根拠は?

○ 民事訴訟の対象たる私的権利について実体法上当事者の自由な意思による自由な処分が認められることを訴訟法上反映させたものです。

● 今日は訴訟上の和解について聞きます。

 訴訟上の和解って裁判上の和解の一種だけど、裁判上の和解については他に何がある?

○ 簡易裁判所における即決和解があります。

● 訴訟上の和解と即決和解はどこが違いますか?

○ 訴訟係属の有無が異なります。

● 訴訟上の和解の意義は。

○ 当事者が訴訟物たる権利関係についての主張を譲り合って訴訟を終わらせる旨の期日における合意をいいます。

● 和解はどんな期日に行われるの?

○ 口頭弁論期日です。

● 和解期日に行われるんだよ。証拠調べ期日にできる?

○ はい。限定が特にないのでできます。

● 訴訟物たる権利関係については何も決めずに、訴訟費用についての分担だけ決めて訴訟を終わらせるという合意をしました。訴訟上の和解は成立しますか。

○ 訴訟物たる権利関係についての互譲がないので、成立しません。

● そう、訴訟物たる権利関係についての互譲じゃないからねえ・・。

● 訴訟上の和解の要件は?

○ 訴訟物たる権利関係について当事者に互譲あることです。

● 訴訟要件は必要無いの?

○ 必要ありません。

● 全ての訴訟要件が不要なの?

○ 当事者能力や訴訟能力は必要です。

● 訴訟能力が必要ですか?行為能力ではなくて?

○ あ、訴訟上の和解は私法上の和解が訴訟で陳述されることによって特別の効力を与えられたものなので、行為能力が必要と考えます。

● 訴訟上の和解の性質論が関係するんだね。

○ そうです。

● 訴訟上の和解の性質論についてどんな説があるか知っていますか(確認する風に)。

○ はい。訴訟行為説、(結構です、と止められた。)

● 訴訟上の和解の手続について述べてください。

○ まず当事者が合意します。その後、合意した旨を期日において裁判官の面前で陳述します。その内容が調書に記載されます。

● 裁判官は何もしないの?

○ あ、裁判所は当事者に合意の内容を確認します。

● 和解はいつ成立するの?

○ 当事者が合意したときです。

● 合意したら裁判所が何もしなくても成立するの?

○ あ、合意の内容を裁判所が確認し終わったときです。効力が発生するのは調書に記載された時です。

● 調書は誰が作りますか。

○ 裁判所書記官です。

● 和解の効力について述べてください。

○ 確定判決と同一の効力ですから、執行力があります。

● まず訴訟終了効があるよね。他には?

○ あ、そうです。それと、「確定判決と同一の効力」ですから・・。

● 論点に行っていいよ。

○ はい、既判力があるか問題となりますが、否定すべきと考えます。

● なぜですか。

○ 既判力が認められるのは、口頭弁論を経て裁判官が判決を書くという手間をかけたことを無にしないという点に根拠がありますが、和解についてはそのような事情は当たらないからです。

● 判決を書く手間をかけたからねえ〜(主査、副査ともに笑う。)。初めて聞いたよ、そんなこと言うの。他にない?

○ はい。和解の場合内容が複雑で既判力がどの部分に生じるのか分からないということが多くあるので・・。

● そう。判決主文に当たる部分がどこか明確でないんだよね。判例はどういっているか知ってる?

○ はい。判例は既判力を認めていますが、実体法上の瑕疵がある場合には無効としています。

● そう。判例はそういう説を採っていると言われているんだね。変なことを言っているんだね〜。

● では、和解の瑕疵はどのように主張しますか。

○ 期日指定の申立ての方法によります。

● 期日指定の申立てだね(確認するように。)。

● それでは期日指定の申立てがなされ新期日が開かれたが、和解に瑕疵がないことが判明しました。裁判所はどうしますか。

○ 訴えを却下します。

● 訴えを却下?

○ え、ええと・・。和解の既判力は否定するから・・。

● 和解には訴訟終了効があるんだよね。

○ あっ、訴訟終了宣言判決をします。

● そう、訴訟終了宣言判決をするんだね。よく知ってるねぇ。

● それでは次に行ってみようか。

● 和解の内容を当事者の一方が履行しないので和解を解除した場合、どのようにして和解の解除を主張するの?

○ やはり期日指定の申立てによります。

● えっ!期日指定の申立て?

○ ・・・。あ、撤回します。新訴を提起してその中で和解の解除を主張します。

● 訴訟終了効はどうなるの?

○ 解除は和解後の新事由なので、訴訟終了効はくつがえりません。

● 判例はどういっているの?

○ 確か自説と同じだったかと・・(ボソボソ)。

● 訴訟終了効はくつがえらないとしているんだよ。勉強しておいてください。

(終わり)


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