「マシンカットログ」と「ハンドカットログ」の違い
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一般に「ログハウス」と呼ばれる丸太組構法には、主に工場で整型した角材、あるいは丸材を積み上げる「マシンカットログハウス」と、人間の手で原木の皮剥きから加工をして、一本一本積み上げる「ハンドカットログハウス」の二種類があります。 この他に「ポスト・ビーム」と呼ばれるログハウスもありますが、ポストは柱、ビームは梁のことですので、構造的には在来軸組構法に分類されます。 ここでは、「マシンカット」と「ハンドカット」のそれぞれの性格について考えてみます。どちらのログにも有利な点と弱点があります。また、それぞれの特徴を長所と捉えるか短所とみなすかなど、人それぞれの好みによる個人差というものがありますが、どちらを選ぶにしても、その特徴を良く知ることが、より自分にあったログハウス作りにとっては必要なことでしょう。 |
「マシンカットログ」
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長所 |
・大手メーカーの取り扱いが多く、信用という面では安心しやすいこと ・工場生産によって、乾燥を含めた品質の管理、加工の精度を上げやすいこと ・施工マニュアルがあり、職人の技術の差による影響が少なく、一定の完成度を確保しやすいこと ・ログ材の乾燥がしっかりしており、またグルーブの割れもおこりにくいので、セトリングが少ないこと ・ログ材の規格が決まっているために、室内の設計寸法が最初に決めることができること ・工場生産のため、ログシェル加工に必要な工期が短いこと ・ログシェルの壁厚が一定のため、家具や設備機器を壁にぴったり納めやすいこと ・国交省大臣の防火認定を取得しているものもあり、準防火地域でも建築できるものがあること。 ・比較的おとなしい外観になるので、住宅地の風景にも馴染みやすいこと |
短所 |
・ログ材の長さが短く、ノッチの内部や棟木、母屋などの小屋組では継ぐことが多くなりやすいこと(小屋組では集成材の使用が多い) ・外国からの輸入に長期間かかる場合、輸送時にログに狂いが出やすいこと ・ログ材を傷つけた場合、補修がしにくく、目立ちやすいこと ・二階床根太などは金物で受ける場合が多く、ノッチ内部の継ぎ手なども含め全般に金物に頼る割合が高いこと ・木材のねじれは一定方向(杉はZ旋回)のためにねじれが重なりやすく、ログ壁が曲がった場合は目立ちやすいこと。(ハンドカットの場合は壁が曲がっても誰にもわからない!)ただし、マシンカットでもラミネートログの場合は狂いはでにくい。 ・大手メーカーの取り扱いが多く、営業、打ち合わせ、設計、ログの加工(工場)や現場での仕事が分業化されているため、施主様の希望を検討しながら最終的に家づくりに反映させることが難しいこと。特に実際に手を動かし現場で仕事をする人間の経験や考えを施主様にフィードバックする余地がないこと(現場に入っている職人は下請けの下請けの下請けなどという場合もあるのですから) ・大手メーカーは、大量供給というものを基盤に経営が成り立っているために宣伝広告費の比率が大きく、また、できるだけ設計、部材、仕様の統一化が必要になるために、それぞれの立地条件、気候風土にたいする細かい対応をとりにくいこと(もっとも、これは沖縄から北海道という大きく気候風土の違う地域を「建築基準法」という法律で全国一律に規制していることも理由の一つであると思っています) |
「ハンドカットログ」
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長所 |
・12メートル程度までの長さのものならば、継がずに一本の丸太で組むことができること ・ログエンド、アーチカットの形状をかなり自由にデザインできること ・丸太の表面に傷がついてしまった場合でも、削りなおすことによって補修ができること ・一本一本を人間が選んで積むために、その丸太の性質(曲がり、太さ、テーパーなど)に合った使い方ができること ・もともと、ハンドカットログは一点ものであるため、現場の気候風土に適した設計、材料、仕様にしやすいこと ・打ち合わせ、設計、原木の皮剥きから加工、建て方、造作までを同じ人間が行なうために(丸太屋の場合)ログサイトでログシェルの加工が終わった段階で、完成までの工程がすべて理解されていること、また全工程を同じ人間が行なうために、現場での変更に対応しやすいこと ・外観が自然に近いので、山間地などのロケーションに馴染みやすいこと |
短所 |
・ハンドカットは手間と工期のかかるログであり、大量供給を経営基盤とする大手メーカーには扱いにくいために、価格が高価に設定されやすいこと ・ハンドカットログは、言わば隙間産業なので小さなログメーカーが多く、信用という面では問題があること ・原木をそのまま使うため、ログ材の乾燥があまく、ひび割れ、カビの発生などがおきやすいこと ・丸太のダメージなどを避けきれない場合があること ・手作業が基本なので、技術の差により製品にムラが出やすいこと(ミスは少なくすることは可能ですが、完全に無くすことは難しいですね) ・準防火地域での建築などが困難なこと ・セトリングが大きく、完成後のメンテナンスが必要になること ・ハンドカットログの設計になれた人間が少ないために、ハンドカットログに適した設計を得にくいこと ・太さや曲がりの違う丸太を積んでいくために、設計段階では内部寸法を正確に出すことがむずかしいこと ・ログサイト(と言っても、ただの空き地?)での加工のため、工期や丸太の状態が天候の影響をうけやすいこと |
「マシンカット」「ハンドカット」共通の短所
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・木造であるために、湿気に弱いこと。ほとんど唯一の解決策は基礎を高くとり、屋根を大きくし、軒を深くすること。 法隆寺宮大工 西岡常一氏にこんな言葉があります。 「軒の出が少ないのは住宅の弱点である」 |
やはり、それぞれ多くの「短所」、「長所」があると思います。どちらを選ぶにしても、これらの短所をできるだけ少なくし、長所を生かした家作りをするのは、結局、そこに住む施主様の努力が必要になります。 ログハウスについてどれだけ知っているか?どれだけ多くのログハウスを見て、そこに住む人の話をきいたか?どれだけ多くのログメーカーを調べたか?どれだけ多くの設計図(プランニング、エスキス)を書いてみたか?先の見えにくい大変な作業ですが、これが家作りのほとんど全てなのかもしれません。 |