出開帳

 普段は拝めない、寺社の秘仏や神体の扉=帳(とばり)を開いて、一般の庶民や信者に拝観の機会を提供して、結縁(けちえん)のチャンスとすること、とされます。

 自分の本拠で行う「居開帳」(いかいちょう)と、他の場所に出かけていって行う「出開帳」(でかいちょう)とがありました。江戸時代に流行し、日本中で行われたとされますが、何と云っても人口の多い江戸での開帳が多かったようです。

 江戸では、寺社奉行所の許可(「開帳差し許し」)を受けて行うように定められていて、この許可を得るのが大変だったことが伝えられます。

 本来は宗教行事であったはずですが、寺社経営の一環として、堂社の修復などの臨時出費を賄うために、一種の募金事業として意識的に行われることもあったようです。

 開帳はあくまで信仰の上に成り立つものですが、一般の庶民にとっては、信心とともに、行楽の対象でもあったらしく、開帳される寺社の境内や付近の盛場には、見世物小屋、飲食店などが設けられて、賑わいを見せました。

 それらの相乗効果を狙って、開帳の裏には商人が関与していたことがうかがえます。寺社は御朱印地か年貢除地を基盤として成立していましたが、それでは維持経営が難しくなってきた時、その経費を生み出す新たな手法として開帳が編み出されたようにも思えます。

 ここに紹介する出開帳には、1700年代の江戸と武蔵野に、それらの姿が投影されているようです。

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