ヤシマ作戦−A


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作者注:この小説は、TV本編で登場するヤシマ作戦のパロディーです。ネルフの動向
        及びヤシマ作戦の作戦行動詳細は大幅に省略していますので、ご了承下さい。
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<リツコの家>

今は昼時、今日はリツコの家でミサトの手料理を食べることになっていた。リツコは、
ミサトの料理の腕前を甘く見ていた。レトルトパックなら大丈夫だろうと。

パクっ。

「★!」

リツコの顔が、あまりのまずさに引きつる。

よくもここまで・・!!!

舌に感じる感覚を、可能な限り意識しないように食べているシンジとリツコとは対照的
に、1.5倍のカップメンにかけたカレーを食べるミサトの顔は満足気だ。根本的に、
味覚が違うのか、カップメンにかければ美味しく食べることができるのか・・・。

「シンジ君。」

この悪寒を少しでも忘れたいリツコは、気を紛らす為に、ハンドバッグに入れて持って
きたIDカードを、シンジに差し出す。

「何ですか? これ。」

受け取ったカードの1枚に印刷されている、アスカの顔写真をまじまじと見つめる。

「新しいIDカード。アスカにも渡しておいてね。」

「はい。わかりました。」

ようやく恐怖の昼食会から開放されたシンジは、新しいIDカードを2枚持って、ミサ
トのマンションに戻った。

<ミサトのマンション>

「フンフンフン。」

アスカはご機嫌の様だ。長い髪につけたリンスを、シャワーで洗い流している。

さって、そろそろネルフに行かないといけないわねーー。

今日は、アスカにとって、命の次に大事なハーモニクステストがある。

ガチャ。

「ただいまーーーーーー。」

帰宅したシンジは部屋の中を見渡すが、いつも寝そべってスナック菓子を食べているア
スカの姿が見えない。

あれ? もう、ネルフに行っちゃたのかな?

教科書の詰まったカバンを部屋に置くと、うがいをしに洗面所に向う。

ガラガラガラ。

風邪をひかないように、帰宅したら手を洗い、うがいをしなければならない。

ガラガラガラ。

「フンフンフン。」

ガチャ。

そこへ、アスカが風呂から一糸纏わぬ姿で出てくる。

「!!!」
「!!!」

目と目が合う2人。

「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

アスカの悲鳴。

ぶーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。

シンジが口に含んでいた水を吐き出す音。

焦ったシンジは、横に掛けてあるバスタオルを、差しだそうと手を伸ばした・・・が。

ドッサーーー!!

バスタオルが、フックに引っ掛かりアスカの上に倒れ込んでしまった。
アスカを押し倒し、胸を掴む格好でシンジが覆い被さる。

「!!!」
「!!!」

再び、目と目が合う2人。

「あ・・・いや・・・あの・・・これは・・・。」

「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

再び、アスカの悲鳴。

パーーーーーーーーーーン!! パーーーーーーーーーーン!! ドカ!! ゲシ。

アスカは、往復ビンタの後、シンジを蹴り飛ばして浴室へ飛び込んだ。壁際で崩れ落ち
るシンジ。

何考えてるのよあの変態!! どーして、バカ!で、スケベ!なのかしら!!

かなりお冠の様である。

ガチャ。

バスタオルを体に巻き付け、浴室から出てきたアスカの前には、蹴り飛ばされた時のま
までシンジが座り込んでいた。

「あ、あの・・・アスカ・・・ごめん・・・。」

アスカの姿が目に入り、あわてて立ち上がる。

「何考えてるのよ!! 誤るくらいなら、覗きなんかするんじゃ無いわよ!」

「ち、違うんだ・・・あの・・・ID・・IDカードを渡そうと思って。」

狼狽して、何を言っているのか自分でもわからない。

「IDカードを渡しに、アンタは風呂場まで来るってーの!?」

「だ、だから・・・うがいを・・・しようと思って・・・。」

「いつまでそこにいるのよ! 服着るんだから、さっさと出て行きなさいよ!」

「ごっ、ごめん!!!!」

慌ててリビングに飛び出す。

「はぁはぁはぁ・・・。」

リビングに立っていると、呼吸が整ってきた。パニック状態だった思考回路が回復し始
める。

どうしよう、覗いていたと思ってるよ・・・。
なんだよ! だいたい、うがいしながら覗く奴なんか、いるわけ無いじゃないか!
ひどいよ!

はぁ・・・顔を合わせるの嫌だなぁ。アスカ恐いからなぁ。

ガタン。

洗面所から洋服を纏ったアスカが姿を現す。
覗きのレッテルが貼られたままではたまらない。誤解を解きたくて、話し掛けるシンジ。

「あ、あのさ・・・アスカ・・・。」

「フン!」

聞く耳持たずという感じで、アスカはシンジの横を通り過ぎると、家を出て行ってしま
った。

はぁ・・・。

うかない顔をしながら、アスカを追ってネルフへ向うシンジ。

<ネルフ本部>

シンジとアスカは、ネルフ本部へ向う途中も距離をおいて歩き、一言も口を聞いていな
い。

ピッ!

「ん?」

ピッ!

アスカが、ゲートでIDカードを通すが、エラー表示が出てゲートが開かない。

ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!

「なによこれぇー! 壊れてんじゃないの!」

ピッ!

シンジが、横からアスカのIDカードを通すと、ゲートが開いた。

「これ、新しいカード。」

「持ってんなら,さっさと渡しなさいよ!! フン!!」

アスカは、シンジからIDカードを引ったくると、ゲートの中へ入って行った。

                        :
                        :
                        :

「あのさ、アスカ・・・。さっきの・・・覗いてたんじゃ無くって、その・・・うがい
  を・・・・・・・・・ひっ!。」

2つほど前のエスカレータに乗っているアスカが振り返り、ギロっと睨み付ける。

「うがいがどーしたってーーー?」

こわいよぉ・・・・。

このまま、遠くへ逃げ出したい気分である。

「だから・・・うがいしてたんだ・・・洗面所で・・・。別にアスカの裸なんか見たい
  わけじゃないし・・・。」

ムッッッッッッッッッッッッッカーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!

アスカの髪の毛が逆立つ。

「ひっ!」

何かの失敗をしたのだと、シンジが気付いた時には、アスカの平手が目の前に見えた。

パーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンっっっっっっ。

エスカレータを転げ上がるシンジ。

「覗いておいて、それが言い訳のつもり!!!!? バッカじゃないの!!!!」

エスカレータに目を回して寝そべるシンジを残し、カンカンに怒ったアスカは駆け下り
て行った。

                        :
                        :
                        :

ハーモニクステストが開始しされる。集中する3人のチルドレン。

「シンジくん、集中してる?」

あまり数値の良くないシンジに、ミサトがはっぱをかける。

「すみません。」

覗きに間違えられた上、何発も叩かれてシンジのコンディションは最悪だった。

ビーーーーーーーービーーーーーーーー。

その時、突然、警報が鳴り響く。

「何!?」

「使徒です!!」

「実験中断! 戦闘態勢に入って!!」

ラミエル来襲に、騒然とするネルフ本部。3人のチルドレンは、ケージに駆け上がりエ
ヴァに乗り込んだ。

「まずは、レイが出て相手の出方を見るわ。」

エントリープラグで待機する3人に、ミサトからの通信が入る。

「はい。」

「なーんで、ファーストなのよ! アタシが出るわ!」

「アスカ、これは偵察よ。あなたは、偵察じゃ無くって、ちゃーーーんと決戦の時に出
  てもらうから、真打はもうちょっと待っててね。」

「っそ。そういうことね。わかったわ。」

ミサトのあしらいに、得意げになるアスカ。エントリープラグのシートにふんぞり返っ
ている。

「エヴァ零号機発進!」

打ち上げられるレイ。その時、同じタイミングでラミエルに高エネルギー反応が発生し
た。

「まずい!!! レイよけて!!!」

ズバーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン。

しかし、指示が間に合わなかった。ラミエルから射出されたエネルギーが、打ち出され
た零号機を襲う。

「キャーーーーーーーーーー!!!!」

「レイっっ!!!!!!!!!」

胸に直撃を食らう零号機。胸を貫くような痛みが神経を駆け抜け、レイはエントリープ
ラグの中で意識を失った。

「戻して!!」

即、引き戻される零号機。レイは、エントリープラグから引き出されICUに運ばれた。

                        :
                        :
                        :

「ここは・・・?」

カタカタカタ。

無機質な白い壁の病室で、レイの意識が回復する。ちょうどそこへ、シンジが食事をト
レイに乗せて運んできた。

「これ食事だから、できるだけ食べた方がいいよ。」

「・・・使徒は?」

「零号機は大破したから、もう出れないさ。ゆっくり寝ていたらいいよ。後は僕達がな
  んとかするから。」

「・・・・・・・。」

『出撃しなくてもよい』生まれて初めて聞く、自分への気遣いの言葉。シンジのレイを
思いやる優しい言葉に、どう対応してよいのかわからない。

「どうしたの?」

「ごめんなさい。こんな時、どんな顔をしたらいいのかわからないの。」

「笑えばいいと思うよ。」

レイは、これから戦場に向うシンジを笑顔で送り出した。

<二子山>

ヤシマ作戦発動。
ミサトが、シンジとアスカに作戦内容を説明する。

「砲手はアスカが担当。防御はシンジくんね。これは、アスカの方がシンクロ率が高い
  からよ。」

「当然よ!」

腰に手を当て、得意気なアスカ。

「ぼくは、アスカを守ればいいんですね。」

「そうね。」

「わかりました。」

「アンタなんかに守られなくても、アタシ1人で充分よ! まっ、アタシの華麗な戦い
  振りを見てなさい!」

                        :
                        :
                        :

作戦開始までの間、アスカとシンジはエントリープラグの横で腰を降ろしていた。

「ねぇ、昼間のことまだ怒ってる?」

「やめましょ、死ぬかもしれない時に・・・。」

「アスカはさ、なんでエヴァに乗るの?」

「世の中に自分の実力を示す為よ!」

「自分の存在を?」

「ま、似たようなものね。アンタは、なんで乗ってんのよ!」

「え・・・わからない・・・。」

「わからないって・・・アンタ・・・。」

「そろそろ、時間だね。」

シンジは立ち上がり、エントリープラグのハッチに手をかける。

「アスカは死なないよ。ぼくが守から。」

「え!?」

弐号機のエントリープラグに手を掛けていたアスカが振り返った時には、素手にシンジ
は初号機のエントリープラグの中に消えていた。

作戦開始。

「アスカ! 日本中のエネルギーあなたに預けるわ!」

「まっかせといてぇー!」

エネルギーが充填されていく。アスカの狙いは、ラミエルのコア一点。

「いける。」

ズガーーーーーーーーーーーーーーン。
ズガーーーーーーーーーーーーーーン。

しかし、アスカが撃つ瞬間、ラミエルからも高エネルギー反応が発生した。スナイパー
ポジトロンライフルのエネルギーとラミエルのエネルギーが互いに作用し、狙いがはず
れる。

「くっ! 外れた!!」

二子山に火が上がる。アスカは、ヒューズの交換をし、第2射のエネルギーを充填する
が、ラミエルに、再び高エネルギー反応。

「まずい!!!!!!」

ズババーーーーーーーーーーーーーーーーーン。

ラミエルが、アスカを狙って第2射を発射。

「うっ!」

アスカは、思わず顔を背けたが、予想していた衝撃が来ない。目を開けると、光の中に
アスカを守るシンジの姿が見えた。

「シンジ!!!」

シンジが持つ盾が、耐え切れず溶けていく。

「まだなの!!!」

数秒で、溶け落ちる盾。

「盾がもたない・・・シンジ!!!!」

溶けきった盾を捨てると、シンジは、初号機の体全体でラミエルのエネルギーを食い止
める。その時、スナイパーライフルのエネルギー充填完了。照準がラミエルに合う。

「こんちくしょーーーーーーーーーーーー!!」

ズバーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン。

コアを貫く閃光。火を吹き上げ、ラミエルが落下して行く。同時に、目の前で初号機が
倒れた。

「シンジ!!!」

エントリープラグから抜け出し、排出された初号機のエントリープラグに駆け寄るアスカ。
シンジが入っているエントリープラグのハッチに手をかける。

ジュッ。

エントリープラグが加熱しており、焼けるような痛みがアスカの両手を襲う。

「くぅぅぅぅぅ・・・・。」

それでも、両手に懇親の力を込めて無理矢理ハッチをこじ開けると、ぐったりとシート
にもたれ掛かっているシンジが見えた。

「シンジ!!!!!!!」

「ア・・・アスカ・・・・。」

シンジの無事を確認したアスカは、泣きながらシンジに飛びつく。

「シンジぃ・・・・・。」

「無事でよかったね、アスカ。」

「アンタバカぁ!? 自分の体の心配しなさいよ!!!」

泣きながら、シンジの胸を何度も叩くアスカ。シンジは、アスカの背中に優しく手を回
し抱きしめる。

「アスカ・・・・ぼくが、どうしてエヴァに乗っているかわかった気がするよ。」

「え?」

「アスカを守りたくて、エヴァに乗ってたのかもしれない。」

アスカは、シンジの胸に埋めていた顔を上げると、笑顔でシンジのを見つめた。

「アンタ・・・・・・ほんとにバカね。」

fin.



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