ポートランド日記                                     スズキメディア

11月23日(金)──115日目


 8時38分のバスで、ダウンタウンへ。今日は、メイーヤ&フランクというデパートが主催するサンクスギビング(感謝祭)のパレードがある。昨日、テレビでニューヨークのパレードを見ていて(三時間近くかかる長いものので、大規模で豪華だった)、ポートランドでもそういうのがあるなら、見てみたいと思って行ってみた。
 バスがダウンタウンへ近づくと、子ども連れがたくさんパーレドのある方へと歩いて行く。かなり人も集まるようだ。パレードのコースに着くと、ぎっしりというわけではないが、通りは、両側一列、人の列が出来ている。折り畳みの椅子や毛布を持ってきている人も多い。見物客は、ほとんど子ども連れだ。
 ブロードウェイとワシントン通りの角のコーヒーショップで、コーヒーを買っていると、パレードの先頭が近づいてきた。コーヒーを持って、通りに出て見物する。ポートランドやオレゴン州のあちこちの、劇場や催し物をやっているところから、宣伝も兼ねて来ている人たち(クラウン=道化師=とか、ラマ、ロデオなどいろいろ)と、ハイスクール(高校)やミドルスクール(小学校高学年と中学を合わせたもの)のマーチングバンドが交互にやってくる。ミドルスクールは、色をそろえた私服や、体操着だったりするが、ハイスクールは、肩章のついているような格好いいユニフォームだ。
 天気がいいので暖かくなるかと思って、セーターも着ないで、薄いウィンドブレーカーだけで来たが、ビルの間で陰になっているので、かなり寒い。パレードしている人たちも、寒そうだ。寒いせいか、熱狂的というわけではなく、地味な感じでパレードは進んでいく。でも、手を振るほうも、拍手を送る子どもたちも、何だか楽しそうだ。
 時々、ラマや馬のパレードが来るが、そのあとには、必ず小型のトラクターが続いている。糞を始末するためだ。ちょと僕たちの前で馬が糞をして、トラクターから女の子が降りてシャベルで始末をしたら、観客から拍手がわき起こった。
 最後に、サンタとたくさんの子どもたちが乗った山車が来て、五〇分ほどで終わりになった。それほど規模の大きいパレードではなかったが、生で見られて面白かった。日本でも、お祭りの行列とか、鼓笛隊のパレードというのがあるけれど、アメリカのは格好いいと思うのはどうしてだろう。
 あとで、聞いたら、六月のロースパレードはもっと規模が多くて人気もあって、全国へテレビ中継もされて、歩道に場所を取って見るのはけっこう大変だそうだ。機会があれば、見てみたい。

 パレードのあと、エンタープライズでレンタカーを借りて、ショッピングモールのロイドセンターへ行った。十二月四日のドライブテストのために、少し運転の練習をしておかないといけない。
 試験官の人に注意されたこと、バックミラーを見ること、二車線道路への右左折の際の車線の選択などを、考えながら、運転してみると、やはりずいぶんいい加減に運転していることがわかる。やはり、二十五年もたって運転に慣れすぎているのかもしれない。
 ロイドセンターは、驚くほどではないが、サンクスギビングデー後のセールでにぎわっていた。一階から三階までひと通り回る。Cは日本へのお土産はほぼ買い終えているが、どの店も安くなっていて、いい小物もいろいろあったので、「最初の頃に買ったのは、あまりよくなかった。もう少し待てば良かった」と残念がっていた。
 ビーバトンまで車を走らせて、ターゲット(衣料品、電気製品などもある大型スーパー)と宇和島屋(日本食品店)へ。
 ビージーズの新しい二枚組ベストCDがアメリカでは二十日に発売されたが、、ターゲットだけ特別に一枚おまけのライブCDが付いているというのを、メーリングリストで聞いて、行ってみた。CDコーナーで探したが、ビージーズの棚のところには見つからない。珍しい盤だから、り切れてしまったかと思ったが、店じゅう回って探してみたら今月の注目盤のところに、一枚だけ残っていた。二枚+おまけ一枚のCDで、15ドルと安い。
 宇和島屋では、Cがこちらで世話になった人に贈る和風の茶碗と皿を買った。ここには、急須、花瓶、こたつなど、日本のものが何でもそろう。でも、ときどきおかしなものもある。今日見つけた不思議な物は、グリーティングカード、“Greeting”と小さく書いてある上に、漢字で「挨拶」と大書してあるのは、わかるが、“I share your sorrow”に、「同情」と大書してあるのは笑ってしまった。“I share your sorrow”を直訳すれば「同情」だが、「同情」と書かれたカードをもらったらずいぶん複雑な気持ちがするだろう。

 そのあと、また車を走らせ、橋を渡って、サウスイーストに行き、ベトナム料理店「Pho Hung(フォーフン)」へ。ここは、二十日のドライブテストのときにも昼食を食べたところ。
 Cは、そのときの僕と同じ、鶏肉入りのビーフンスープ、僕は、牛肉団子入りにしたが、肉団子というより、もっと固くて中身の詰まったソーセージのような感じだった。
 Cは、最初にベトナム料理店に行ったときには、どうして、生のもやしやバジルを入れて食べるんだと憤慨していたが、二回目に食べてみるとそれなりにおいしいのがわかってきたそうだ。前回僕は香辛料は何も入れなかったが、Cにならって辛そうな味噌を入れてみたら、塩と出汁だけの味が引き締まってもっとおいしくなった。
 ポートランドでも、日本にいたときのように、おいしい麺がたべたくなるが、それは、日本料理店のうどんやラーメンではかなえられない。自分で作るほうがいいが、それも大変だし、日本のラーメンやうどんにはかなわない。そんなとき、ベトナム料理店の麺(ヌードルスープ)はうれしい。

 三時頃部屋に帰った。夜は、パイオニアコートハウス・スクエアの巨大ツリーの点火式を生中継していた。昼間見たときはれほどでもなかったが、電球が灯されると、ツリー全体が光り輝いてきれいだ。そのうち見に行かないと。


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