ポートランド日記                                     スズキメディア

11月14日(水)──106日目


 昨日の夜は、強風がずっと吹いていた。テレビで見たが、海岸のティラモックでは、高潮で、道路や住宅が冠水したようだ。朝から曇って寒そうなので、冬のコートを着て大学に出かけたが、途中から太陽が顔を出して、汗が出るくらいになった。こっちの天気はよくわからない。

 大学のロビーで、カンバーセーションパートナーのアンディさんと、9時から11時前まで話す。アンディさんの日本語の宿題を手伝って、僕が、昨晩書いた説得のスピーチのアウトラインに追加したふたつの提言を見てもらった。追加の提言は、そのあと、英語の授業で先生に見てもらい、「相撲を例に出すなら、日本人以外の人にもわかるように説明する」という条件でOKをもらった。

 アンディさんは、宇和島屋で買った日本のアニメ雑誌を持ってきていて、それを見ながら話をした。もちろん全部日本語の雑誌だが、アンディさんは興味があるので、わかるカタカナやひらがなだけでも読んでいるようだ。
 アンディさんの好きな『カウボーイ・ビーバップ』というのアニメ映画が今日本で公開されていて、今月にはアメリカでもDVDが出るという話だった。最近はアニメはほとんど見ていないので、アンディさんの話にはついていけないが、最近(日本で)人気があるというので二、三度見た『ワンピース』というアニメの話をしたら、興味深そうだった。

 そのあと、昨日の夜のマイケル・ジャクソンのライブのテレビ放映の話になった。アンディさんは、日本の歌手では浜崎あゆみが好きだが、「日本なら、毎日のように浜崎あゆみはテレビで見られる」と話したら、驚いていた。
 アメリカには、日本の歌番組のようなものはない。ミュージックビデオはいつも流れているが、ほかは、たまにトーク番組に登場するか、昨日のマイケル・ジャクソンのように、コンサートの映像が放映されるだけだから、日本の歌手の露出の仕方は想像がつかないようだ。
 アンディさんは、来年、JETプログラムで、小中高の英語の先生として日本に来ようと考えている。応募して審査に通らないとだめだが、うまくいって日本で再会できれば面白い。
 日本に関心があるアンディさんとだからかもしれないが、二時間近く英語で話していてもあまり苦痛ではない。朝七時起きでバスに乗って来るから眠いのだけけど、それも気にならない。以前は、疲れていたり長時間だったすると、英語を話すのが苦痛でたまらなくなったことがあったが、最近はそうでもなくなってきたみたいだ。少し進歩したのかもしれない。

 英語の授業はリスニングの練習。レクチャー4のインディラ・ガンジーの話のテープを聞いてノートを取り、正誤のテスト(20問)に答えた。18問正解。今朝、大学に来るバスのなかでテープを聞いていたので、いい点が取れた。
 金曜日からは、いよいよ、三回目のスピーチ「説得のスピーチ」のスタートだ。金曜日は、先生がボランティアで先にやる人と言って手を挙げさせて五人をすでに決めているので、僕は月曜日か水曜日ということになる。今週末には十分間のスピーチ原稿をまとめないといけない。

 授業は終わったが、今日はもうひとつ大仕事が残っている。DMV(Driver & Motor Vehicle Service)に行って、オレゴン州の運転免許証を取る手続きをするのだ。
 今回は五か月近くアメリカにいるので、こっちの免許証を取ろうと思っていた。日本で取ってきた国際運転免許証でもいいのだが、三か月以上滞在するときには、アメリカの免許を取るようにすすめている。オレゴン州の免許を取れば全米どこでも運転できるし、有効期間も八年間だ。アメリカにくるたびに日本で国際免許を取得する手間がなくなる。
 しかも、知識テスト(knowledge test)と運転テスト(drive test)に合格すれば、数千円で免許が取得できる。日本なら三〇万円くらいかかるのが、信じられない。アメリカの人にその話をすると、みんなびっくりした顔をする。
 もっと早く取りに行けばよかったのだが、英文の「Driver Manual(ドライバーマニュアル)」をなかなか勉強する気になれなくて、今日まで延ばしてしまった。

 DMVに行く前に昼食を食べなる。DMVのあるダウンタンの南のほうでまだ行っていない店を「チープイート」で探して、「The Western Culinary Institute」に行ってみた。Institue(専門学校とか協会、研究所の意味)というのは、不思議な名前だなと思っていたが、近くに行くと、昼休みらしきシェフがたくさん歩いている。レストランの前まで行ってみたが、扉は閉じられていて中はまったく見えず、「OPEN」の表示もない。
 前を行きつ戻りつしたあと、おそるおそるドアを押してみたら、立派なレストランで、たくさんの人が食事をしていた。満席のようだし、ひとりで入るのはためらわれるような雰囲気だったので、取りあえず今日は止めにすることにした。
 「Culinary」を辞書で引いてみたら、「調理」の意味、つまり、料理学校付属のレストランで、おそらく生徒たちが作った料理を出しているのだろう。だから、ランチは三品で5.95ドル、七品で7.95ドルと安い。にぎわっているのだから、生徒が作っているといっても味はいいのだろう。次はぜひ食べてみよう。
 もうひとつの、「1201 Cafe and Lounge」は、名前が「1201 Bar」となって、カフェからバーに変わっていた。当然昼間なのでやっていない。

 どこにしようか迷ったが、近いところで行ったことのないところを考えて、ブロードウェイをもう少し北に行った、インドネシア・マレーシア料理の店に行った。「チープイート」には載っていないが、何度も前を通って、インドネシア・マレーシア料理はここしかないので、一度試してみたいと思っていた。
 カウンターで注文してお金を払い、テーブルに持ってきてもらう形式だが、ナシゴレンなど、知っているメニューも多い。チキンカレーのヌードルのラージ(大)を頼んだが(7.95ドル)、大きめのラーメン用のような器に、っぷり盛られていて、ヌードルはビーフン。チキンカレーはタイ風。生のもやしやきゅうりも入っている。汁の入った麺類を外で食べるのは久しぶりだ。辛からず甘からず、おいしかった。

 お腹いっぱいになって動くのが面倒になったが、心を決めてDMVへ。銀行のように順番カードを取って、待っている間に用紙に書き込む。呼ばれてIDを出した。写真のあるIDがふたつ必要だが、パスポートとビザでOKだった。J-2ビザは写真が入っている。
 住所確認するもの(郵便局の消印のある、自分宛の郵便物)を持ってきていなかったので、「次回に持ってきてください」と言われる。日本なら、「出直してください」と言われそうだが、こちらは利用者の都合を考えてくれる。
 そのあと、三番のコンピューターのところに行くように言われて、テストが始まる。その前に、「日本語か英語か」と聞かれた。もちろん日本語を選択する。最近日本語でもテストが受けられるようになったという話を聞いていたが、これでだいぶ楽になった。
 問題はすべて四択で、画面で正しいと思う解答にタッチし、「OK」ボタンにタッチすると、「正解/不正解」がすぐに表示される。

 しかし、「そんなにひねった問題はないよ」「常識でだいたい答えられるよ」と言われていたが、「チャイルドシート義務づけられるのは何歳以下体重何ポンド以下の幼児か?」「Cライセンス(僕が取る普通自動車の運転免許)で運転できるのはどの種類の車か?」など、勉強していないとわからない問題も多い。
 答えがわからないときは、「スキップ」をクリックして、飛ばして後から答えることもできるが、最初はそれを活用しなかった。睡眠不足で疲れていることもあって、何となく答えていたら、最初のほうでけっこう間違いが多くなった。

 76%正解なら合格だったとおもったけど、どうだろう。何問出るのかなどと、あせりだすと、四択でヤマをかけて選んだのが、ことごとく間違えてしまう。
 結局、出題は35問。27問正解すれば合格だが、25問しか正解できなくて、惜しくも(?)不合格、明日また受けることになった。
 結局、勉強したのは、お昼を食べながらの30分くらいで、標識は頭に入れたが、法規のほうはほとんど読まなかった。なめていたのがいけなかったかもしれない。しっかり勉強しなかったのが悔やまれるが、まあ仕方ない。明日は合格するように、少しは勉強してこよう。


次を読む前に戻る目次表紙