ポートランド日記                                     スズキメディア

9月23日(日)──54日目


ポートランド美術館 10時過ぎに、二人でダウンタウンへ出かける。今日は、丘の上からダウンタウンまで歩いてみることにした。テルウィリガー(Terwilliger)通りは、広い歩道が整備されていて、ところどころにベンチもある。坂道だが、ジョギングやウォーキングをしている人が多い。
 寮からダウンタウンまではずっと下りだから、歩くのは気持ちがいい。もう木々の葉がずいぶん黄色くなった。PSCのあたりまで、バスなら10分くらいだが、歩いても25分ほどだった。これから時々歩くことにしよう。
 今日は、PSUの近くにある美術館と歴史博物館に行ってみるつもりだったが、美術館の前に行ってみると日曜日の開館は12時。30分ほど時間があるので、近くのスターバックスでコーヒーを飲んだ。

 スターバックスは今、日本ではどんどん増えてきて、今までと違う味と店の雰囲気で人気を集めているけれど、こちらでは、どこにでもあるコーヒーチェーンだ。シアトルで30年前にスタートしたチェーンだが、元々シアトルや、ポートランドには、あのエスプレッソバー・タイプのコーヒー店は多い。その中で、戦略のうまかったスターバックスが世界的に伸びていったということだろう。
 ポートランドでも、古くからあるコーヒー店やチェーンがどんどんスターバックスに買収されているそうだ。わざわざ隣に出店して、昔からある店をつぶすようなこともけっこうやるらしい。だから、ポートランドには、スターバックスのことはあまりよく思っていない人もいる。大手資本が古くからある小さな店をつぶしていくという構図だ。
 日本でも、早晩そういうことになるかもしれない。

 美術館は、大人一人7.50ドル。バックパックを預けて入る。
 それほど大きな美術館ではないが、人も少ないし、ゆっくり見て回るにはいい。
 1階には、アジア美術のスペースがあって、半分以上が日本だ。鈴木春信、葛飾北斎、安藤広重などの浮世絵がある。日本の浮世絵美術館なら、標準以下の作品だろうが、日本から離れて見るのは、また違っていて面白い。なぜか美術作品と一緒に、明治時代の野良着や「木枯し紋次郎」が着るような、旅合羽が飾られていた。

 2階は、ヨーロッパとアメリカの美術。ヨーロッパのものは、少しずつだが、印象派、ルネッサンス、中世の宗教画など。別に有名なものがあるわけではないが、ヨーロッパのものは見ていて飽きることがない。アメリカのものも、傾向としてはヨーロッパと同じだが、亜流という感じは否めない。でも、風景画に、フッド山など、この近くの絵があって、親しみを感じる。
 2階の残りは、ネイティブアメリカンの美術。以前、カナダのバンクーバーに行ったときにも、見たが、精巧さと素朴さと迫力に圧倒される。

 1階に戻って、ミュージアムショップに行く途中は、現代美術で、リキテンシュタインなどのほか、誰かはわからないが、スーパーリアリズムの男性の裸像があった。横になってくつろいでいる姿だが、全身くまなく本物そっくりだ。さすがに皮膚感覚は違うが、昨日のサタデーマーケットのパフォーマンスの人のように、誰かが全身にドーランを塗って横になっているのではという気がしてくる。
 ミュージアムショップを見て、美術館を出たら2時少し前だった。2時間近くいたことになるが、そんなに長い感じがしなかった。時間があったら、また来ることにしよう。
 たっぷり見て今日は疲れたので、歴史博物館はこの次にして、セーフウェイで買い物をしてバスで帰った。Cも今日は美術館でゆっくりと楽しんだようだ。


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