ポートランド日記                                     スズキメディア

8月15日(水)──15日目


 午前中は仕事。12時半に9階のカフェテリアで二人で食事。
 Cはパックに入った寿司を選んだが、これは、宇和島屋製のもの。「宇和島屋」はシアトルに本店があり、ポートランドに隣接するビーバートンにも店がある日本食料品店。スーパーのように大きな店舗で、前をクルマで通ったことはあるが、まだ行ったことはない。
 ポートランドにはもう一軒「安全」というもっと小さな日本食料品店があり、僕らはだいたいここへ行く。つまり、地元資本対大資本という構図があり、ぼくらとしては、面白い親父さんのいる「安全」を応援したいのだ(スターバックス対地元カフェも同じ。日本だと、スターバックスはカッコイイ! だけど、こちらでは、どこにでもあって、昔からあるカフェがいつの間にかスターバックスに変わっていたり、ちょっとダサイ印象)。

 小さな店といっても、ひと通り以上の食品がそろっているし、茶碗など和食器や、他では見かけない耳掻き(アメリカ人は綿棒を使うので耳掻きはない)もある。値段も安い。
 ひと通り以上の食品がそろうというのは、日本からいろいろ食品を持っていく必要はほとんどないということだ。値段も日本と比べて高いわけではない。
 今回僕らは、段ボール箱いっぱいの食品を持ってきたけれど、こちらで手に入らないのは、特別に好きなブランドのものだけ。安全の親父さんは、ほしい物はなんでも日本から取り寄せられると言っていた。

 食事のあと、バスでダウンタウンへ行き、エイビスでレンタカーを借りる。高い料金のおかげか、6700マイル程度しか走っていない新車のカローラだった。
 アメリカやヨーロッパなど、右側通行の国で運転したことは何回もあるが、今回はちょっと感じが違う。1か月か2か月後にはオレゴン州の運転免許を取ろうと思っているから、心構えが違うのだ。短い旅行で借りるときは、取りあえず支障なく運転できればいいやと、右ハンドルと左ハンドルの違いなどあまり考えないが、今回はいろいろと考えてしまう。

 単に右と左がひっくり返っただけだから、右左折のときレーンを間違えないようにするだけでいいようだが、細かく見ていくとけっこう違いがある。まず、日本では右ハンドルで左右のサイドミラーをみているから、右への首の動きは少なく、左への首の動きは大きくなる。アメリカでは、逆になるから、右への首の動きは大きく、左への首の動きは小さくしなければならない。でも、癖がついているので、右に大きく首を動かすのに違和感がある。慣れるまでは意識的にしないといけない。
 車幅感覚も狂ってくる。日本では、右ハンドルで、運転席が車線の右寄りにある状態で運転している。注意していないと、左ハンドルのアメリカでは右に寄りすぎてしまう。自分の身体が、車線の右寄りにあるほうが自然だからだ。これも注意しないといけない。

 車を運転して寮に一度戻り、I先生と買い物に。クルマを借りる話をしたら、I先生が買い物に付き合ってくれることになった。まだ道がよくわからないので、I先生が一緒なのは心強い。
 I先生は、今日運転免許の試験を受けに行って、無事合格した。オレゴン州の免許は8年間有効だそうだ。まず、I先生が運転免許試験を受けるために借りたクルマを返しにいくので、後ろからついていく。道順のことを考えなくていいので、運転に専念できる。
 クルマを返したあと、I先生も乗せて、日本食料品店の「安全」へ。納豆など切れていたので、その他の食品もたっぷり買い込む。日本でよく食べる冷凍のさぬきうどんもあったので、購入した。今日は前回よりじっくり棚を検討したが、「ない物はない」のがよくわかった。ここより数倍大きい宇和島屋はどんな品揃えなのだろう。肩を持つ気持ちはないけれど、一度行って確かめてみたい。

 次に、フレッドマイヤー(普通のスーパーマーケット)へ、ここでもいろいろと食品を買い込む。特に、野菜が豊富でひとつずつ量り売りで買えるのがうれしい。袋に適当に詰めて、他の食品とまとめてレジに持っていくと、全部はかって料金を入れていく。こっちのレジ係は日本よりもずっと熟練しているようだ。
 今は円安だが、それでも食品全般はかなり安い。魚は(こちらの人はあまり食べないからか)それほど安くないが(かといって、日本に比べて高いわけではない)、肉類はめちゃくちゃ安い。鶏丸ごと一匹700円くらいなのだ。それに、こちらの鶏肉はもも肉でも骨付きで売られていて、骨でだしを取りたいと思う僕にはうれしい。

 そのあと、一度寮に戻り、食品類を冷蔵庫に詰め込んでから、夕食へ。日本にいるときに、アメリカから取り寄せておいた「portland cheap eats」というガイドブックで、タイ料理店を探して、そこへ向かう。
 ダウンタウン周辺は、前にも書いたようにすべて一方通行だが、どの通りも二車線から三車線あるので、地理がわかっていないと運転が大変だ。走っていたレーンが右折や左折専用になってしまったり、急に対面通行になってとまどったりする。
 住宅街に入ると、けっこう広い通りなのに中央線が引かれていないので、またとまどってしまう。
 右側通行については、普通の通りでは他にもたくさんクルマが走っているので間違えることはあまりない。危ないのは、スーパーの駐車場など、道以外のところ。何もない広いところで前からクルマが来ると、つい左のほうへ行ってしまいそうになる。
 同乗しているI先生に、いろいろ指導してもらったので、街中での運転も少しずつわかってきた。

 店はすぐに見つかったが、駐車する場所を探すのに少し苦労した。ポートランドは急激に人口が増えているので、駐車場が足りない。今日行ったノースウェストのあたりは特にそうだ。駐車場と行ってもすべて路上駐車。ぎっしり駐まっているので、運よくく出るクルマがないとなかなか止められない。今回は、少し離れた三時間までOKのところに駐めた。

 タイ料理店は、外から見るとそれほどでもなかったが、中にはいると立派な作り。料理もおいしくて、残ったらドギーバックに入れてもらうと言っていたが、けっきょく三人で全部食べてしまった。ヤキソバ風の炒め物が一番おいしかった。こちらのもやしはこういう炒め物には、ナマで上に乗ってくるけれど、これがなかなかおいしい。日本のとは感じが違う。トムヤムクンも生春巻きもよかった。
 ポートランドのタイ料理は、値段も手頃だし、おいしいし、味付けもしっかりしているし、ライスもあるし、今のところ、一番のおすすめ料理だ。


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