デジタルで行こう!

サンケイリビング新聞社発行「シティリビング」連載

デジタルで行こう! 第47回 2000.10

ネットなら安くなる


 インターネットショッピングが盛り上がっている。商品の種類が限られていた昔に比べて、スーパーの食品から、自動車、家まで、ほとんど何でも手にはいるようになったし、一番いいのは、普通に買うより“安い”ことだ。
 特に、ホテルの予約や航空券など、商品のやりとりをしなくていいものは安い(航空券は、乗るときに空港で受け取ればいい)。「旅の窓口」という全国4500のホテルが登録するホームページだと、七割のホテルが、通常の予約よりも割引している。
 特に混んでいる時期など何度もホテルに電話をしなければならないし、旅行会社に行っても手続きに時間がかかるけど、インターネットなら、希望のホテルを検索すれば空室状況がひと目でわかるし、素早く予約できる。ホテル側でも、ホームページに登録すれば空室が少なくなるから、大幅割引してもメリットはあるのだそうだ。
 本や雑誌が購入できるホームページサイトなら、日本だと本の値段は下げられないけど、どこも配送料無料とか、いろいろサービスを考えている。外国の書店なら、3割引、5割引、抽選でプレゼントと、各ショップが競争している。
 他にも、バラの花百本がびっくりするくらい安い値段で変えたり、秋植えの球根がまとめて安く手に入ったり、探していくと、お得ホームページはいくらでもある。実際に見なくても写真で十分な商品、持って帰るのが重い商品、このへんが、インターネットショッピングのおすすめだ。
 住所や名前のスタンプも、専用のソフトで自分でデザインしたのが、市価の半額以下で配達されてくるし、転居の挨拶状や暑中見舞い、年賀状も、レイアウトを選んで、文面を送れば、すぐに印刷して配達される。
 デカプリオのCMじゃないけど、インターネットがあれば、部屋から一歩も出なくても何でもできちゃう時代。「インターネットが普及すると、デジタルデバイド(情報格差)が生じて、貧富の差がますます広がる」と目をつり上げる評論家もいるけど、インターネットは、パソコンと電話線さえあれば誰でもできるもの。今は、ケータイ1台でも大丈夫だ。
 IT(情報技術)の普及で、今まで金持ちが独占していた情報や便利な仕組みが、パソコンやケータイ1台で誰でも使えるようになる。必要なのは、好奇心と人よりちょっと得したいという気持ち。それなら、みんなジューブン持っているよね!


デジタルで行こう! 第48回 2000.11

ネットオークション


 イーベイ、ヤフーオークションなど、インターネットのオークションが大人気だ。オークションというと、高額でレアな美術品や骨董品、切手、古書、……などなど、コレクターやお金持ちのものというイメージだけど、インターネットのホームページを使うようになって、誰でもできる身近なものになってきた。
 レアものだけでなく、AV機器、パソコン、家具、スポーツ用品、アウトドア用品、おもちゃ、ベビー用品、アクセサリー、洋服など、ほとんど何でもそろっている。自分がずっと探していた本や雑誌やレコードなどレアものを探すだけでなく、ガレージセール感覚で、ほしい物を安く手に入れられるという便利な面もある。
 自分で値段を付けてセリ上げ、〆切の数分前には手に入れられるかどうか、ドキドキしながら待つというゲーム感覚も楽しめる。時間がなくて暇がない人には、自分の出せる最高額を入れておけば、そこに到達するまでコンピュータが自動的に少しずつセリ上げてくれる「自動代理入札」という仕組みもある。
 オークションだから、もちろん購入するだけでなく自分で出品もできる。もう使わないんだけど捨てるのはもったいないというようなもの、古着や古本なら買ってくれるところがショップがあるけれど、他のものはなかなか難しい。そんなふうにフリーマーケットに店を出すみたいに利用するのもいい。
 でも実は、いまネット関係の詐欺で増えているのが、オークションを使ったもの。お店じゃなくて普通の人から買うのだから、ちょっと心配なところもある。しかし、ネックオークションでは、出品者のこれまでの実績や(今までに買った人の)評価も見ることができる。品物によっては保険もかかっているから、注意してさえいれば、詐欺にひっかかることはほとんどないはずだ。
 インターネットでの通販やオークションは恐いという印象もあるけれど、インターネットが特別に危険なわけではない。だまされる危険はネット以外、どこにでも待ちかまえている。要は、自分でよく調べてよく考えて、おかしいと思ったら手を出さないことだ。
 見知らぬ個人と個人が商品を売ったり買ったりできるオークションで、何でも気軽にやりとりできるようになったのも、デジタルのインターネットのおかげ。自分のほしい物が安くて手にはいって、不要品が簡単に処分できる。インターネットでほしい物を探すなら、オンラインショッピングだけでなく、ネットオークションも活用して、楽しんでみよう。


デジタルで行こう! 第49回 2000.12

ADSL


 インターネット通販なんかをパソコンで始めると、どうしても画像が速く見たくて、早い電話線がほしくなる。普通の電話回線の次は、中居君のコマーシャルのISDNで、これは64キロbpsといって、普通の線の2倍くらい速い。
 その次で、ようやく日本でもサービスが本気で始まったのがADSL。速さはいろいろがあるけれど、最速だとIDSNの20倍以上。以上3つの方式、どれも今家庭まで引かれている電話線をそのまま使う。なんで速さに差が出るかというと、ADSLは、データの上りと下りに差を付ける。つまり、自分のパソコンからプロバイダーにデータを送る(上り)のは普通の速さで、プロバイダーからパソコンへ(下り)だけ、高周波を使って超高速で送るのだ。
 インターネットでホームページを見るのは圧倒的に下りのデータが多い(ホームページのデータはプロバイダーからパソコンにどんどん送られてくる。パソコンから送るのは、クリックしたりするデータくらい)。だったら、上り下りに差を付けたら簡単に高速になると考えて、ADSLが生まれた。
 このADSL、お隣の韓国ではすでに全世帯の約8分の1にあたる約150万世帯に普及している。アメリカでも、年内には二百万世帯を超えると言われている。それに比べて、日本ではまだ二千回線を超えたところ。日本テレコムは4年後には80万世帯を目指すと言っているし、NTTもKDDIも始めるけど、日本は高速回線の導入で決定的な遅れをとってしまった。
 日本では全家庭にまで光ファイバーを引いて、テレビも見られるような高速インターネットを実現するつもりだったけど、景気も低迷して光ファイバーの敷設はなかなか進んでいない。そこで、遅ればせながらADSLで取りあえず高速化ということになったけど、ADSLを引くには各電話局で工事が必要。国内ではまだ大都市の一部でしか使えず、県庁所在地にまでに広がるのは再来年になる。
 IT革命の時代、世界の動きに遅れないためには、高速回線が重要なポイント。高速インターネットが誰でも安く使えるようになれば、ネット通販とかインターネットTV放送とかどんどん広まって、世界の先を行くことができる。
iモードのおかげで、携帯電話インターネットでは世界のトップをとったけど、家庭のパソコンで使うインターネットでは、かなり遅れをとっている。IT予算をつけるなら、パソコン講習の補助なんかじゃなくて、今すぐ全国どこでも早くADSLが使えるようにしてほしい。


デジタルで行こう! 第50回 2001.1

IT革命、大丈夫?


 IT革命とかいって、2001年度の予算では、IT関連の予算要求があふれている。ITというのは、インフォメーション・テクノロジー、訳せば情報技術。たとえば、パソコンのできない人700万人を対象に、インターネットの使い方を教えるIT講習会を学校や公民館で開くというけど、これがちょっと心配だ。
 今は小中学校でも専用教室に30台くらいのパソコンがそろっているところは多いけど、パソコンがあるからインターネットが教えられるわけではない。30台のパソコンでそろってインターネットにつなぐには、家庭と違って相当高速の太い回線が必要だ。でも、家庭と同じISDN1本なんてところが多いようで、講習会をやって30人がいっせいにインターネットにつないだら、回線はパンクしてホームページの表示なんてできるわけがない。こうした事情がわからずにとりあえず予算をつけるというだけで、本当に役に立つ講習会ができるのか心配だ。インストラクターも今はすごく不足している。多いのは、ワードとかエクセルとかビジネス向けにソフトの使い方を教える人で、インターネットを教えられる人はまだ少ない。それでも需要は多いので、なかには、インターネットはやったことがない人、パソコンにさわれる程度の人が講師として採用・派遣されることもあるらしい。
 他のIT予算も、全国の自治体の公共施設へ光ファイバーを引くとかあるらしいけど、それでポンプ室とか空調とか、施設の管理をしたりという、今までの土木工事なんかと発想が変わらないものも多いようだ。IT革命の意味がわかっているのだろうか。
 IT革命の本当の目的は、インターネットを使いたくても、パソコンや通信料金が高くて、使えない人たちが、パソコンを使えるようにして、インターネットの便利さの恩恵を国民に広めることだと思う。今のままだと、「公民館まで光ファイバーを引いたけど、料金も高いので、今は使っていません」なんて、あまり使われない地方の文化センターみたいなことになりかねない。本当に必要なのは、収入の低い層や高齢者がパソコンを購入するのを補助したり、インターネットの通信料を無料にしたりすることだろう。こうした「ばらまき」行政なら歓迎だ。
 アピールするところの少ない森首相は、「IT革命」を連発して去年の流行語対象にも選ばれた。就任早々は、「私も週1回、パソコンを習っています」とテレビカメラの前で自慢げだったけど、実はいまだに一人ではパソコンを起動することもできないという話だ。
 そんな方が先頭に立って進めているIT革命だから、足取りがおぼつかないのも当然の話。政府なんかにたよっていないで、21世紀は自分なりのIT革命を進めなくては。インターネットを手にすれば、便利で得になることは山ほどあるのだから。


デジタルで行こう! 第51回 2001.2

ウィルスこわい


 インフルエンザウィルスがまん延しているようだけど、もうひとつのコンピューターウィルスもこわい。僕自身ちょっとした不注意からウィルスの被害にあってしまった。
 仕事がら、ウィルスのことはよくわかっているつもりだった。もともとウィルスはプログラムの形をしている。ウィンドウズだと、exe(エクゼ)ファイルだ。そういうファイルで得体がしれないのは開かないようにすれば、大丈夫。もしメールに添付されて送られてきても、すぐ削除すれば安全。「グリーティング」とか「ハッピーバースディ」なんて名前が付いていると、つい開いてしまったりするけど、exeファイルはウィルスチェックをしたあとでなければ、絶対に開いてはいけない。知り合いからのメールでも、その人が知らずに送っちゃってる場合もあるから、気をつけよう。
 最近はexeファイル以外にも、ワープロや表計算(ワードとかエクセルとか一太郎)ファイルにもウィルスが隠れているものが出てきた。これは、マクロという付属する部分にウィルスが隠されている。マクロというのは、ワープロや表計算の上でプログラムのようなものを動かす仕組みだから、ウィルスを隠すこともできる。
 これも、文書を開くときマクロを一緒に開かないようにすれば大丈夫(今のワードやエクセルにはマクロを開くとき警告がでるようになっている)なはずだった。ぼくも、マクロは開かないように気をつけていたのだけれど、その上を行く「マクロに警告を出す機能を働かないようにする新種のウィルス」に感染してしまった。幸いなことに、感染を広げていくだけで、ハードディスクを破壊したりとか、害を与えるウィルスではなかっけど、全部のファイルをチェックするのにだいぶ時間をとられてしまった。
 ウィルスチェックソフトのバージョンアップをさぼっていたのが原因だから、実はプロとしては恥ずかしい話。今までは、危ないファイルやマクロは開かないようにすれば大丈夫とたかをくくっていたんだけど、ウィルスはどんどん進化していくから、どんな強力なヤツが出現するかわからない。やっぱり、しっかりウィルスチェックソフトを買って、こまめに更新しないといけない。これからは気をつけよう。
 今は、変なホームページに行くと、知らないうちにインターネットの接続先がダイヤルQ2に切り替えられて、目の玉が飛び出るくらい電話代の請求が来たりとか、いろんな落とし穴がある(これにも接続先のチェックソフトがある)。情報を集めて、落とし穴にはまらないようにするのと同時に、そういうセキュリティー用のソフトも必要なものはせっせと使うようにしよう。インターネットは、海外旅行と同じ。くやしい被害にあわないように、情報を集め、準備して、つねに注意を忘れずに!


デジタルで行こう! 第52回 2000.3

最新の映画・音楽が無料?


 インターネットを使って無料で市販の音楽や映画などのソフトを手に入れることのできるサイトが、いまアメリカで大流行だ。これは、ナップスターに代表される「ファイル交換サイト」と呼ばれるページ。見たい音楽や映画のソフトを提供してくれる人を見つけ、自分のソフトと交換で手に入れる。これ、「ねえねえわたしの持っているCDコピーするから、あなたのそのCDコピーして」と言うのと同じようなものだけど、厳密にいうと個人的な利用を超えているから違法。
 アメリカでこの方式の「ファイル交換サイト」を提供して急成長したナップスターという会社は、権利を侵害されたと訴えたレコード会社に裁判で負けて、有料に方針を転換するようだ。しかし、ナップスターが方針を転換しても、次々と後追いの無料ファイル交換サイトが出てくる。完全な取り締まりは難しい。
 「ファイル交換サイト」が注目を集めたのは、音楽をCD並の音質のまま圧縮する「MP3」という技術で、音楽データのやりとりがあっという間に簡単にできるようになったから。今は、「ブロードバンド」といって、インターネットはADSL、光ファイバーとどんどん高速になっている。そのため、「ファイル交換サイト」では、音楽だけでなく、映画の交換も可能になった。高速回線なら家庭でも2時間の映画1本だって、数分でダウンロードできる。ビデオやDVDでレンタルしてくるような映画が、家庭にいながらにパソコンで見られるのだ。モノによっては、ロードショーしているような最新の映画も見られるらしい。もちろんこれは違法。でも、インターネットの高速配信そのものが悪いわけではない。きちんとお金を徴収するシステムができて、インターネットで映画が見られればこんなにいいことはない。最新の映画や音楽が自宅で手軽に手に入るだけじゃなくて、廃盤になった映画ビデオや音楽CDが、いつでも手に入るということになるのだ。
 これまで廃盤になったソフトが再発売の確率はほとんどなかった。でも、インターネットなら、一度発売されたソフトはいつまでもダウンロードできる。アーティスト側としては、これは売れるとか売れないという販売側の意見に惑わされず、自分の信じるものを発表できる。中間の販売店のマージンとか配送料とか関係なくなるから、ソフトの価格もうんと安くできるはずだ。
 インターネット配信というと、すぐに違法コピーが問題にされるけど、コピーガードでも何でもいっぱいつけて、どんどん何でも聴いたり見たりできるようにしてほしい。日本の場合は、ブロードバンド化(インターネットの高速化)がまず必要だけど、それもようやく何とかなりそうな気配。音楽・映画の世界はインターネットで大きく変わり始めている。


デジタルで行こう! 第53回 2000.4

マイラインは……?


 「マイライン」が過熱している。各社が競ってテレビCMを流しているし、勧誘の電話もかかってくる。でも「マイライン」って何なのかわかっている人は少ないはず。NTT以外の、KDDI、日本テレコムなんかを使うときは、通常の電話番号の前に番号を追加したり、電話線に機器をつなぐ必要があったけど、マイラインで登録すれば、普通にかけるだけで、自動的に自分の選んだ電話会社を使って電話をかけることができるようになる。
 マイラインのスタートは5月1日、10月末までは無料だが、それ以降の登録は有料になる。つまり、一度無料で登録したらわざわざ有料で他の会社に登録し直す人はまずいないから、今回利用者に自分のところに登録してもらうかどうかは、電話会社にとって死活問題なのだ。
 ここまでは、新聞記事や各電話会社のマイラインの説明書を読むとだいたいわかる。でも、どの電話会社を選ぶか決めるときに考えたほうがいいのは、何でマイラインなんて面倒なことをするかという元々の理由だ。
 国内の電話会社は昔NTTだけだった。それでは競争が起きず料金も安くならないし、サービスも改善されないので、他の会社でも電話サービスができるようになった。それで現在のKDDIとか日本テレコムができたわけだけど、後発の会社は、電話をかけるのにNTT以上に手間がかかるなど、どうしても不利になる。それを解消しようというのが、マイラインの一番の目的。
 デジタルなど新しい技術の発展には、複数の会社による競争が大切だ。パソコンも、たくさんのメーカーが同じウインドウズのパソコンを競争して作って、安くていいものになって、どんどん普及した。

 NTTドコモの大ヒット、iモードだって、分割民営化されて危機意識を持って何とかしようとガンバったから生まれてきたものとも言える。

 日本のインターネットの普及がアメリカや韓国に比べて遅れたのは、電話回線の高速化が進まなかったため。NTTや政府の見通しが甘くて、こんなに早く高速な回線が必要になるとは考えていなかった。韓国は、現在の回線をそのまま使ってADSLという技術で高速化を進めた。日本では、光ファイバーを使った超高速化を少し先にやればいいと考えて、ADSLには真剣に取り組んでいなかった。
 それで大失敗。世界のインターネットの高速化に遅れをとってしまった。電話のような全国をひとつに結ぶ事業の場合は、1社が大きな力を持つのは仕方がないところもある。でも、それなら、政府がちゃんとした見通しを持って指導して、利用者のためになるようにしないといけない。日本はそれも失敗してしまった。
 「デジタルには競争が大切」。これからも、マイラインのような利用者に選択を迫られる場面が出てくるけれど、そのときは心に留めておこう。


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