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冗談を説明する女

 その子は驚いた僕を見ると、目を細めてくすくすと
笑った。
「いけない、いけない、踊る茶菓子だったよ」
 その子はそう言いながらもくすくす笑いを続けた。

 …なんだ、踊る茶菓子って!?

「『驚かせちゃったよ』と掛けてみたんだよ、長瀬ちゃん」
「…」
 意外だった。月島さんがこんな冗談を言うなんて。


マナーを守りましょう

 去年、僕と同じクラスだった子だ。
 同じクラスだったけど、僕はただの一度も月島さん
と会話したことがなかった。
「…月島さん、いつからそこに居たの?」
「始発」
「え?」
 僕はおもわず眉をひそめた。
「始発から…だよ、長瀬祐介くん。イベントのマナー
だね」
 そんな彼女のわけのわからない返答に言葉を詰まら
せつつも、意識は僕の名前を覚えていてくれたという
一点に集中していた。


コンピュータ・ハック

 近づき難いほどの美少女で、そのうえ、いつも本を
読んでいる、とても大人しい女の子だった。
 古い文学小説風に言うならば、深窓のお嬢様といっ
たところだろうか。
 だから僕は話をしたことがなかった。
 僕だけじゃなく、クラス中の男子生徒が、月島さん
には声を掛け辛そうだった。
 その月島さんが僕の名前を知っていた。
 ハンドルネームで。
 設定で本名は非公開にあるのに…。

 僕は少しだけ恐かった。


これがいわゆる
瑠璃子ちゃんギャグなんだね

「電波?」
「うん。私、ここで毎日、電波を集めているの。普通
の電波を集めるときは金属のアンテナを使うけど…」
 何を言っているのかさっぱりわからない。
 ラジオ? 電波? アンテナ?
「でも、私の電波は金属のアンテナじゃ集められない
から、身体を使うの。私がアンテナになるの」

「え?」
 俺は聞き返した。
 月島さんは、ゆっくりとこちらを向き、
「アンテナ(何てな!)」
と言った。
「…」


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