”語学研修に出発する学生へ” 誰でも大歓迎 こちらの英語学校は、まったくの初心者からペラペラの人まで、あらゆるレベルの能力の学生を受け入れて、体系的に教育するシステムを誇りにしている。英語が出来ないから恥ずかしいといって、語学研修を避ける必要はまったくない。 グローバル時代に生きようとすれぱ、どっちみちいつかは通過しなけれぱいけない関所だ。耳の敏感な若い時代が、一番良いのではなかろうか。 特に、英語独特の難しい発音を聞き取るには、できるだけ若い内にシャワーのように生の英語を聞いて、慣れるしかないようだ。“50の手習”の男は、どんなに一生懸命に頑張っても、若者の鋭敏な耳には叶わないのを、実感として学んできた。 どんなに辛いことがあっても、ロンドンでの英語研修は、必ず学生の将来にプラスになるものがあります。しかし、2週聞ではいかにも短い。1カ月以上の滞在で、しかも、英語だけの授業に精神的に慣れてくれぱ、午後のクラスも履修して、できるだけ英語でけの中で生活したほうが、より急速に成果があがるようだ。 ホームステイも、できるだけ英語が話せるような家庭をお願いした方が良い。私が世話になったブライトンのホストファミリーは、夕食時など一生懸命にいろいろ話題を振ってくれる。日常的な話題(特に日本の習慣、日本人の考え方や食べ物など)でホストと受け答えしていると、イギリスの英語に慣れていくような気がする。 出発前の耳慣らし 日本を出発する前に、英語会話のレッスンを受けてくれぱ、それだけ上のレベルの英語を習得する機会が多くなります。 もっとも、日本でのアメリカンイングリッシュが染み付いている人(一般に年輩者)ほど、こちらの英語に入っていけないと言う説もある。カタカナで表記された発昔とは全く違うし、文法的なミスぱかり気になって、言いたいことも、次から次へと出てこないらしい。しかし、基本的な知識は、結構役にたっているようだ。 忙しい人は、”毎日少しでも、テープで本物の英語を聞くように”、というアドバイスを受けた。今考えると、これは、やはり無視できない重要なものだったと思う。“日本に帰った後でも、英語会話用のテープを使って、シャワーを浴びるように生きた英語を聞き続け、耳をセンシチブにしておきなさい”と。 学内にCNN二ュースがいつも流れていれば、敏感な耳をもつ若い学生の生きた英語力は、格段に進歩するに違いない。 自分の意見をまとめて発表する訓練 英語の学習は、基本的には外国の文化の学習です。 教室には、20代の若者から、実社会ですでに経験豊かな年配者(ドイツなどヨーロッパ各国から来た実際に仕事をしている社会人)まで、多様な背景を持つクラスメートが集まっている。 先生も、イギリスの出来事や文化習慣・風習などについて知識と経験が実に豊富、質問するとすぐに的確な返事が返ってくる。 教室の討論は、隣り合った二人でペアーを組んでやったり、全体で議論したり、いろいろな形式で進められる。一つの問題について、いろいろな国の学生(といっても残念ながらアメリカ人は一人もいないが)が、共通の話題で話しあうことによって、各国の考え方の違いや生活・風習の違いを学ぶ機会が生まれる。 なまはんかな知識で外国のことを非難めかしくいうと、即座に厳しい反論がくる。しかし、日本の事は、日本人が一番良く知っている。教室の議論がホットになって、なかなかその舌戦の中にはいれないと、すかさず、”We Japanese are ・・”、”In Japan,・・”。時には、先生に対しても、授業の進行に邪魔にならないように配慮しながらも、好奇心一杯に、”Why British people・・”と連発、イギリスの習慣などについて聞きながら、日本との違いを説明してあげる。 こうして、いろいろな議論に日本のことを持ち出して、相手を聞き役に回らせることに成功すると、クラスの中で自分の存在感を強く感じるようになる。 語学学校のディレクターも、“ 日本人学生は、もっと自分の意見を積極的に発言しなさい。失敗するかもしれない危険を、あえて犯しなさい”、と日本人学生に手厳しい。そのために、日本にいる時から、いろいろな問題について自分の考えを手短に纏めるような、思考訓練を積み重ねるように、と忠告してくれる。 ”自分にとって大切なのは、自分個人、自分の考えであって、回りの異なった仕事、異なった国、異なった年齢の方に遠慮する必要はまったくない”という。まさに個人主義的な社会での価値観が、授業の中に色濃く反映されている。 ここまでくると、文化の違いが出てしまって、われわれ集団社会の中で育った日本人には、なかなかついていけない側面もある。 しかし、国際的な接触が増えて来るにしたがって、異文化に対する理解も重要になる。外国で学ぼうと思ったら、やはり自分の考えをまとめて積極的に発言するように、日頃の授業のなかで努カしていくのも、大切な準備の一つである。 世界の出来事に強い関心を持つ ロンドンでは、学校の外でも、いろいろなメディアを通じて、生きた英語を身につける機会に恵まれている。 毎日のBBCニュースや、“THE TIMES”、”Financial Times”など、格好の教材になる。しかし、英英辞書を片手に新聞を読むのも大変な苦労で、ついロンドンの朝日新聞を買いたくなる。 ディレクターは、高級紙のタイムズには、イギリス人も知らない単語があるという。もっと大意を取りながら、早く読み進む習慣をつけなさい、と言われて、毎日の英英辞書による丁寧な単語調ぺの意欲が、やや減退してしまったが、2カ月も続けると、初め調ぺた単語が何回も出てくるので、読むスピードが格段に早くなる。 新聞の記事の内容について知識が豊富になってくると、その後の経緯をもっと知りたくなる。知的好奇心が強くなって、読み進むのが非常におもしろくなる。分からない単語の意味調ぺは後回しにして、とにかく先に先に事件の推移を読み進みたくなる。 イギリス生活に慣れてくると、夜のBBC二ュースが楽しみになって、英語が分かるかどうかよりも、世界的な事件の推移のほうが、より大きな関心の的になってくる。画面で見ると、ニュースの大体の内容や筋が分かるので、出てくる単語がますます耳に入りやすくなる。もちろん細かな所になると、完全には分からない苛立ちは残る。 丁度、東ヨーロッパ諸国での騒乱に続き、ベルリンの壁の崩壊が、連日トップニュースとして報じられた時には、完全に地元の人と一体化してテレビにかじりついていた。 ロンドンで英語の勉強をしようとすれぱ、授業だけでなく、多くの機会を生かすような工夫をしたほうが良い。それだけ日常生活が実り多く、また楽しくなる。そのためには、日本にいる時から、いろいろな国際間題に関心を持って新聞を読むことだ。 すでに基礎的な知識や単語の内容がわかっているので、はやく溶け込めるようになる。外国の文化や国際的な間題に対する関心は、ある意味で、英語学習の第一歩かもしれない。 因みに私は、最近(1999年)大学の授業で、「Financial Times」の多様な国際経済記事を整理して、学生諸君生きた語学学習の機会を提供している。 やはり、欧州、アメリカ、アジア、ラテンアメリカ、それぞれの経済について、基礎的な経済知識がないと、すぐにはその内容の面白さを読みとることが難しいよう。 しかし、国際経済問題について、専門的な立場から最近の動きを解説していくと、半年も経過して、学生達は英字新聞の内容に徐々に慣れてきている。繰り返し重要な専門用語を説明していくと、学生の語彙も急速に増える。後は、こつこつ自分の努力で、この習慣を継続するのみ。 上達への強い意欲 たとえ、短い期間であっても、海外語学研修を実りあるものにするためには、“よし生きた英語にうまくなろう、頑張ろう”という強い向学心と、ネバーギブアップのチャレンジ精神しかなさそう。 出発前に、この気持ちを自分でしっかり確認して、”初心忘れるべからず”。やる者は酬われる、そう祈りたい。 “ところで、あなたは少しはうまく話せるようになりましか?”、そんなこと、この私に聞かれるのですが。残念ながら少しも上達したようにみえませんが、もう少し辛抱してみます。 |