|
(太郎)どうも、みなさん。今から漫才をさせていただく、御年54歳、中年を通り過ぎて初老にさしかかっているロボットの太郎です。
(花子)永遠の18歳、花子です。
(太郎)いやあ、歳はとりたくないもんやね。
(花子)誰かてそやけどね。
(太郎)うちの母親が、今年80歳になってね。
(花子)なんや、お母さんのことかいな。あんたのことかと思たわ。
(太郎)いや、もちろん僕もやねんけど、母親の老いがすごいねん。
(花子)そら、80歳やったらそうやろね。
(太郎)あるくのもヨタヨタやし、食事の用意はおろか、トイレにいくのも自分ひとりではままらなんねん。もの忘れもひどいし、ろくに片づけもできひんから家はごみ屋敷みたいになってんねん。
(花子)たいへんやねぇ。あんたが介護してあげてんの?老老介護っていうやつやね。
(太郎)せやねん。二人とも介護のことも分からんし、大変やねん。無知な二人でムチムチ介護って感じやねん。
(花子)ムチムチ介護って、なんか、イヤラシイ響きやなぁ。まぁ、認認介護っていうのもあるらしいから、まだマシなんかなぁ。
(太郎)ニンニン介護って?忍者が忍者を介護するんか?
(花子)認知症の人が認知症の人を介護することや。みんな大変なんやで。
(太郎)へ〜。うちはまだマシやねんなぁ。でも大変は大変やから、ヘルパーさんに来てもらって食事やら、掃除やらしてもらおうってことになってん。
(花子)そうやね。自分らだけでなんとかしようとせずに、プロの助けを借りるのはいいことやで。
(太郎)せやけど、介護保険を使ってヘルパーさんを頼むには、まず要介護認定いうのを受けなあかんねんて。
(花子)そうそう。市役所に申請して、どの程度の介護が必要か見に来てもらうんやね。
(太郎)そうなんよ。
(花子)たとえば、軽い認知症やけど自分で歩けて見守り程度で済む人は要介護1とか、寝たきりの人は要介護5とか、介護の必要性が高い人ほど介護度が高くなって、介護サービスをたくさん使えるシステムやで。
(太郎)でな、調査員の人が、その判定をするために家に様子を見にきはってん。
(花子)お母さんが、どのぐらい自分で自分のことをできるかとか、家族がお母さんのことでどれくらい困ってるかとか調べはんねんな。
これは大変やなぁってなったら、高い介護度がでるわけやね。逆になんでも自分で出来るてなったら、「自立」っていって、介護度がつかへん場合もあるらしいで。
(太郎)介護度がつかへんかったらどうなるん?
(花子)なんでも自分で出来るから、介護サービスは必要ないってことやね。で、あんたのお母さんは自分で歩けるんやったら、認知症があっても要介護1くらいかなぁ。
(太郎)それがな、調査員の人が来るゆうたら、急にハリキリだして、部屋掃除するっていうて。
(花子)昔の人はそうやね。よそさまに対する見栄があるからね。
(太郎)それだけやったらまだ良かってんけど、調査員が体の調子はどうですかっていったら、普段ヨタヨタしてるのに、ぴんしゃんぴんしゃん動いてな。
(花子)あ〜、それは介護認定のあるあるらしいで。普段はボケボケやのに、調査員の前では急にハキハキとして、体もシャキシャキと動かして私大丈夫ですアピールを始めるという。
(太郎)飛び跳ねたりクルクル回ったりして、まるでバレリーナのようやったで。
(花子)かなんなぁ。あんまり元気なとこをアピールすると、介護度が低くなって、使えるサービスが減るんよ。認知症はどうやった?調査員の人は、認知症のテストとかしはったやろ?
(太郎)そうそう、で、母親に年齢を尋ねはってんけどな。
(花子)認知症かどうかみるのに、今日の日付とか、その人の年齢とか、訪ねはんねんね。
(太郎)で、70歳ってこたえよってん。ほんまは80歳やのに、10歳もサバよみよってん。
(花子)サバよんでるっていうより、ほんまに分かってはれへんのかもしれんで。で、判定はどうやったん?
(太郎)母親の認定は、要介護1でした。ちなみに、そのあと僕も認定調査してもらったんやけど要介護2やってんで。
(花子)あんたのほうが、お母さんより介護度が高いわけないやろ。ていうか、介護保険を使えるんは、65歳以上やで。まだその年齢になってないし、介護サービスなんか必要ないやんか。
またずるしたんやな。
(太郎)いやいや、正直に「ときどき自分の名前も年齢も、何にもわからんようになる」ていうただけやで。まっすぐ歩くのもでけへんし。千鳥足ゆうんかな。昨日の夜もそうやったしな。
(花子)それは、酔っぱらってるときのことやろ。わけわからんことばっかりやらかして。あんたとはもうやっとれんわ。帰らしてもらうわ。 |
|