研究テーマ->生物音楽->アルゴリズムを巡って〜DNAの仕組みで作曲してみよう
生物音楽に関する情報を提供します。(この研究テーマのページは、大嶋和人さんが制作しています。)  
第3回 アルゴリズムを巡って〜DNAの仕組みで作曲してみよう
「かく、きよ、ほる、めま、すきよっきゃ出た出た」

これは、祖母から聞いた言葉で、戦前、小学校のグランドで映画会とかやっていた時に、祖母の知り合いのおばさんが、子供達に投げかけた言葉でした。

「かく」「きよ」「ほる(?)」というのが子供達の名前で、「めま」というのは、「見ろ」という方言だそうで、「すきよっきゃ」というのは「飛行機」の事だそうです。戦時中だから戦闘機のシーンがあるニュース映画だったようです。つまり、「かく、きよ、ほる、見なさい、飛行機が出たよ」という意味。

でも、妙にこの言葉、韻律があって、音楽的です。「あーいや」とか間の手入れたらラップに出来そうなフレーズで気に入ってるんですけどね。

生物というのもDNAという言葉で作り上げられています。DNAというのは、宇宙の中でもそうめずらしいものでもないそうですし、原始の海でDNAができる時に力を貸したのは火山の噴火だったという研究もあります。

で、ここからが、本題ですが、DNAそのものというのは、たった4組の結合しか種類がありません。アデニンにはチミンしか結合しなくて、グアニンにはシトシンしか結合しません。(相補結合といいます)

アデニン-チミン
チミン-アデニン
グアニン-シトシン
シトシン-グアニン

これが無数に鎖状につながってDNAは膨大な情報を記録・再生することができます。

この4種類の結合さえあれば、無数のパターンを作れますが、これは言葉の性質と全く同じです。人間の方が後なので、人間の言葉の奥深い起源にはこの仕組みがあるのだと思います。DNAがこのような性質を持っているので、それを音楽にするという研究があります。音楽にすることによって遺伝子のパターンを見る時に、同じところやその特徴を見つけやすいそうです。

では、このような仕組みを音楽に使えないだろうか?という点から考えると、色々なアイデアが出てきそうです。

例えば、ドレミファソラシをそれぞれ、数字に置き換えます。1234567という風に。

そして、最初に任意の音程を2個選びます。例えば、ソとシ ソ=5 ファ=4。

ここで、ふたつの数字を足して、7で割った余りを求めます。5+4=9ですから、余り2です。

542と並べます。さらに、最後の方から2個とって4+2=6、7で割ると余りは6

5426さらに繰り返して行きます。

5426103362134044156430・・・・・・・

ここで0を7に置き換えます。

5426173362134744156437・・・・・・・

ドレミファソラシに戻します。

ソファレラドシミミラレドミファシファファドソラファミシ

実際に聞いてみるとという感じになります。

これは非常に簡単な方法ですが、音符を操作するアルゴリズムは他にも色々考えられます。また、16進数だと、一桁の数字は15個ですから(123456789ABCDEF)2オクターブを処理できます。もっと起伏に富んだメロディラインを作ることができるでしょう。ただ、上のアルゴリズムは7個の中から2個重複を許して取り出すので、7*7=49通りという限定されたものになりますが、三つだと7*7*7=343とどんどん増やすことは出来ます。

さらにパターン同士の組み合わせで、さらに複雑なパターンを作って行く事ができます。例えば下のグラフィックは1の画像を90度、180度、270度、右回転させ、フォトショップで透明度を上げて重ねた場合のパターンです。
360度回転させると、同じなので除外すれば、1の画像を元に4種類の異なったパターンが出来たことになります。同じパターン同士という条件をはずし、異なったパターンを複数個用意して、組み合わせれば、もっと複雑なパターンを作ることは可能です。

このようなやり方で、同じフレーズを変型させて行って、別なフレーズを自動的に生成するアルゴリズムによって作曲することが可能です。

例えば、この曲は、フレーズを数値を元に変型させて行った例です。1小節のフレーズを順繰りに音程を入れ替えています。1234567を2345671というようにしています。つまり、ドレミをミドレという風にです。

聴いてみる

このような処理は、数学的ですから、ソフトとして作るのはそう難しくないかもしれません。実際に自動作曲のようなソフトを作るとすれば、何らかのパターンを作る必要があって、そのパターンを楽曲として聞こえるように操作するアルゴリズムが必要になってきます。

生物をヒントに音楽を作ることは、他にも色々ありそうです。アルゴリズムを考えるのも、音楽のアイデアを生み出すきっかけになると思います。


レポート作成 音楽研究所・札幌分室 主任研究員 大嶋和人 2002.6.20