研究テーマ->音楽の雑学->補聴器の選び方
補聴器の選び方についての情報を提供します。
 
 

 
事の発端
ある日、父親が慌てふためいて私のところにやってきました。どうやら補聴器をつけずに放置しておくと、そのうち耳が聞こえなくなってしまうと、補聴器体験をしたメガネ店で言われたようなのです。その後、すぐに聞こえなくなるということではなく、聴力が弱ったまま放置しておくと、長い間には、音を感じる細胞がよわり、回復不可能になるというような意味のことだったようです。見方を変えれば、補聴器買って欲しさに、販売店が脅かすようなことを言ったとも取れます。事実、後日、補聴器専門の販売店に行ったら、補聴器が必要かどうか微妙なレベルだと言われました。
ただ、まったく「でたらめ」というわけではなく、蝸牛の音を感じる部分は、長期間刺激がない状態だと、だんだん機能が低下し、一旦低下した機能は回復不能のようです。はやくから補聴器をつけていると、機能の低下を抑止できるというのは本当のようです。
 
 
補聴器の機能
色々とみてまわったのですが、補聴器は8000Hzまでの音を増幅する機能があります。人間の耳は一般的に、2万ヘルツぐらいまで聞こえると言われていて、実際、CDのサンプリングレートも44100で22050Hzまで出せるようになっています。人間の声はもっと低く300〜700Hzぐらいのようですから、8000Hzだと十分なのですが、音楽などを聞く場合は不都合があります。8000Hzまでしか出せない補聴器を使用していると、それより高い音は耳に入ってきませんから、補聴器をつけていることによって、高い音を聞く能力が低下していくだろうということが予想されます。このようなことを考慮してか、補聴器には、完全に耳をふさいでしまうのではなく、外部の音も取り入れられるようにしたイアフォン部分に穴をあけたような製品もあります。
歳をとると、全体的に音が聞こえなくなりますが、特に高い音が聞こえにくくなります。また、どのように音が聞こえにくくなるかは人によってバラつきがあります。補聴器を買いにいくと、周波数帯ごとに、どういう感じで聴力が弱っているかを測定してくれます。

上図のように、左右よって聴力が異なりますし、高い音になれば、直線的に聴力が弱っているわけでもありません。補聴器を買うと、測定した結果に基づいて、どの周波数帯の音をどのくらい持ち上げるかという調整を行ってくれます。個人個人にあわせて設定しますから、他人の補聴器を貸し借りしてもあまり意味がないということが分かります。周波数帯をどのくらい分割するか、何段階で調整を行えるかは製品によって異なります。高額な補聴器ほど、周波数帯の分割数が多い傾向にあります。ただし分割数が多いほど良い補聴器かというとそうでもなく、特に、メーカーがちがえば、周波数帯ごとの補正の方法が変わりますので、同一メーカーであれば、分割数の多いほうが性能が良い程度に考えると良いと思います。
 
 
補聴器の選び方
下記のようなポイントがあります。
(1)人の声にフォーカスしたり、雑音をカットしたりする機能
(2)調整のサービス
(3)水ぬれした場合やなくした時の対応
(1)は、プログラムによって、人の声を強調したり、騒音をカットしたり、突然の雑音をカットしたりする機能です。高いものほど高機能です。
販売店は(1)だけ強調して売ってくる場合がありますが、補聴器では(2)のほうが重要です。個人的には(2)を強調してくる販売店のほうが信頼がおける感じがします。
補聴器をつけると、突然、音が良く聞こえるようになります。このため、それまでは聴こえなかった雑音までよく聞こえるようになり、それが煩わしくて、せっかく買った補聴器をあまり使わないということが発生します。もちろん若い時分にはそれらの雑音も聞こえていたわけで、補聴器を長くつけていれば、そのうち、若い時分のように気にならなくなります。なので、突然、音がよく聞こえるようになって補聴器が煩わしいということにならないように、1か月くらいかけて、補聴器を調節することが必要です。 販売店がそこまで手間をかけてくれるかどうかは分かりm船が、理想を言えば、最初は、あまり補聴器の機能をフルに使わず、すこしずつ聞こえるように1か月間かけてだんだん、よく聞こえるように調整していくのが良いわけです。メガネ店など、ついでに補聴器も販売している的な店では、そこまで細かな調整を行ってくれるか疑問です。月に1回くらい、メーカーの人が来店するので、その日に調整しますみたいな感じの店も多いようです。専門店だと、常時、調整を行ってくれるのですが、近くに店がなければ、これまた気楽に調整に行くということが難しくなります。
調べたかぎり、(3)をあまり、重要と考えている人はいないようですが、実際は、これも大事です。
高齢者がはじめて補聴器をつけると、何がおこるかということを想像してみてください。私が心配したのは下記のことです。
(A)補聴器をつけたまま、シャワーをあびたり、風呂に入ったりしてしまう
(B)外出先で補聴器を紛失する(たとえば銭湯に入るとか、大きな音で音楽を聞くような場面で補聴器をはずしてしまうとか)
補聴器には、簡単な防水の機能がついているものが多いです。
紛失に関して保障対象にしているメーカーは極めてすくないですが、bernafonというスイスのメーカーが比較的安いモデルでも紛失保障をつけているようです。保障がない場合は、目立つ紐をつけて名前と住所を書いておくなどの対策が必要です。なんせ、20万以上するのですから。補聴器を家の外で失くした場合、戻ってくる可能性は限りなくゼロに近いそうです。