研究テーマ->楽器->三味線の楽譜
色々な楽器の楽譜の記譜法を紹介します。  
楽譜の種類
三味線の楽譜にはいろいろな種類のものがあります。
普及しているものの1つに文化譜というものがあります。(童謡、唱歌、クラシックなどの文化譜を約1900曲分用意しています。)
ちなみに、沖縄の三線の楽譜には工工四というものが使用されます。
文化譜
文化譜は、ギターのタブ譜のように、どの弦のどの位置を押さえるかということで音を示します。ギターのようなフレットはありませんが、抑える位置はだいたい決まっていますので、勘所(感所、坪)ということで示しています。
三味線では、どの弦をどの音高にするかは、「調子」によって決まります。調子には、本調子、二上り、三下りなどがあります。
楽器に対面したとき、左側から一の糸、ニの糸、三の糸と呼びます。右側の糸にいくほど、解放弦の音が高くなります。
調子
 
本調子 0 5 12
二上り 0 7 12
三下り 0 5 10
各調子と弦の調律の関係を半音単位で示すと上の表のようになります。
たとえば、一の解放弦をAの音にした場合、ニの解放弦はDの音、三の解放弦はオクターブ上のAの音になります。 太棹では、一の糸をCかC#に調弦することが多いそうです。それより上げることはあまりなく、下は、Aぐらいまで下げることがあるそうです。
どの調子を選ぶかは、運指の都合により決まります。エレキギターのように、(少し大げさな言い方かもしれませんが)解放弦を避ける楽器と異なり、三味線では、できるだけ解放弦の音を増やすように調や調子を選びます。
調弦について
合奏する場合など、曲のキーが決まっている場合に、どのように調弦するかは幾つかの選択肢があると思います。
曲のキーに対して、二の糸が主音、5度の音などになるようにします。
たとえば、Fのキーであれば、ニの糸をFに、CのキーであればGの音にする、などということを行います。

本調子で一の糸をCにした場合
 
  0 1 2 3 # 4 5 6 7 8 9 b 10 11 12 13 1# 14 15
三の糸 C C# D D# E F F# G G# A Bb B C C# D D# E F F#
ニの糸 F F# G G# A Bb B C C# D D# E F F# G G# A A# B
一の糸 C C# D D# E F F# G G# A Bb B C C# D D# E F F#


上の表より、ハ長調(CのKey)の曲を演奏する場合、0、2、#、6、8、bの勘所と、4、5の勘所の一部を使用することが分かる。
ト長調(GのKey)の曲を演奏する場合、2、#、5、6、8、bの勘所と0、1の勘所の一部をを使用することが分かる。
ヘ長調(FのKey)の曲を演奏する場合、0、2、#、4、6、8、の勘所と9、Fの勘所の一部を使用することが分かる。


ニ上がりで一の糸をCにした場合
 
  0 1 2 3 # 4 5 6 7 8 9 b 10 11 12 13 1# 14 15
三の糸 C C# D D# E F F# G G# A A# B C C# D D# E F F#
ニの糸 G G# A A# B C C# D D# E F F# G G# A A# B C C#
一の糸 C C# D D# E F F# G G# A A# B C C# D D# E F F#


上の表より、ハ長調(CのKey)の曲を演奏する場合、0、2、#、4、6、8の勘所と、9、bの勘所の一部を使用することが分かる。
ト長調(GのKey)の曲を演奏する場合、0、2、#、6、8、bの勘所と、4、5の勘所の一部を使用することが分かる。
ヘ長調(FのKey)の曲を演奏する場合、0、2、4、6、8、9の勘所と、3、#の勘所の一部を使用することが分かる。

 
文化譜の記譜方法
小節ごとに垂直線で区切られています。3つの水平線は、3本の弦を示しています。上から三の糸、ニの糸、一の糸です。
数字は、抑える位置を示していますが、数字が単に順に並んでいるわけではなく、「0,1,2,3,#,4,5,6,7,8,9,b」の12種類となっています。(大正琴などの楽譜は数字が順にならんでいるだけなので、それに慣れているとややこしいです。)10以降の数字はオクターブ上ということになります。#のオクターブ上は1#、bのオクターブ上は1bと表記します。○は解放弦を示していて、0と同じです。●は休符で、ニの糸の上に書きます。
音の長さは下線で示します。下に線がないのは4分音符です。下線が1つあるのは8分音符です。下線が2つあるのは16分音符です。下線が3つあるのは32分音符です。
数字の横に―がついている場合は、2拍の長さになります。 ただし、三味線の場合は、バチで弦を弾いたあと、あまり音が伸びないので、「●」も「ー」も、ほぼ同じ意味になります。
カタカナなど、数字以外の記号が書かれている場合があります。
「ス」はスクイと言って、撥で糸をすくいあげるようにして弾く奏法です。
「ハ」はハジキと言って、左手の指で糸をはじくようにして弾く奏法です。
「ウ」は打ち指と言って、左手の指先で糸を打つようにして弾く奏法です。
「スリ」はスリと言って、糸を押さえた指を糸の上をスライドさせ音程を変化させる奏法です。
「打」は3本の弦を同時に打つ奏法です。
T、U、Vの記号は糸を押さえる指を示しています。Tは人差し指、Uは中指、Vは薬指です。