少し古い話題で恐縮です。
3月の終わりに、生徒たちと一緒に、「第1回科学の甲子園全国大会」へ行ってきました。
大会そのもののレポートはJSTのWebページ
http://rikai.jst.go.jp/koushien/tournament/report.html
にお任せするとして、
今回の話題は、高校生の食事事情についてです。
高校生というと育ち盛りのど真ん中ですから、男子も女子も、いちばんお腹のすく年頃です。
鶏のから揚げやハンバーグ、焼肉といった脂っこいものが大好き。
甘いスイーツ類も好物です。
パクパクいっぱい食べても、直ぐにお腹がすいてしまいます。
高校生を喜ばせるには、お肉をいっぱい用意して・・・・
これを読んでくださっている皆さんがどのような世代の人かわかりませんが、高校生の食の嗜好(しこう)を、こんなふうに考えてはいませんか??
これは一方では正解であるのと同時に、誤った考えでもあるのです。
上の写真を見てください。
「科学の甲子園」の競技終了後に催されたフェアウェルバーティで提供されたお料理です。
見事にお肉と脂ものが並んでいます。写真には写っていませんが、横のカウンターには何種類ものプチケーキがずらりと並んでいました。高校生に楽しんでもらおうと、高校生の喜びそうなメニューをとりそろえた大会関係者の苦心の跡がうかがえます。
私も一通りのものに箸を付けさせていただきました。
全体的に濃い味付けでしたが、おいしく調理されていました。
高校生にとってはごちそうです。
限られた予算の中で、400人近い高校生たちに、ごちそうを提供するのはなかなか大変な仕事です。
では、実際の生徒たちの反応はどうだったでしょう。
二日間の大会を終えた後ですから、頭も体も精一杯使ってくたくた、お腹もぺこぺこです。
セレモニーの後、ジュースで乾杯して、食事と交流タイムになりました。
立食形式ですから、めいめいで直径15cmほどの紙皿に料理を取って食べます。1皿に取ることのできる量はそれほど多くはありません。生徒たちはいっせいにパクパクと食べ始め、1皿目はすぐに完食、2皿目は・・・・・
他校の生徒たちとおしゃべりしたり、一緒に記念写真を撮ったりと、楽しく忙しい時間であったことは確かですが、2皿目からは食べるペースが急に遅くなります。一向に箸が進みません。
「せっかく用意してくれたんだから、もっと食べたら」
「いやあ、そんなに食べられないですよ」
実は大会期間中、朝食、夕食共に、食事は毎回バイキングでした(お昼はお弁当が支給されました)。そこでも高校生の好みを考えてか、鶏のから揚げやソーセージ、エビフライ、メンチカツ、肉団子といった脂っこいメニューが並んでいました。
生徒たちはどんなものを取ってくるかなと興味津々(きょうみしんしん)で観察していると(もちろん鶏のから揚げも食べるのですが)、出し巻き玉子とご飯と味噌汁にバナナとか、ハムとブロッコリーにトマト、サラダ、ゼリーなど、大したものは取ってきません。
別に、最近流行の草食系男子というわけではないのです。
でも、大したものは取ってこないし、食べません。
これは決して不思議なことではなくて、少し考えればわかることです。
毎日毎日、朝、昼、晩と、ソーセージや鶏のから揚げを食べている家なんて、そうそうないでしょう??
「科学の甲子園」で提供された食事は夕・朝・昼・夕・朝・昼・夕・朝の計8食です。
ごちそうは、たまに食べるから(たまにしか食べないから)ごちそうなのであって、毎回毎回食べるものではないんですね。
栄養のバランスから考えても、肉と脂モノばかり食べ続けるのは問題です。
彼らが普段と同じような食生活で体調を維持しようとするなら、前述したような「出し巻き玉子とご飯と味噌汁にバナナ」となるわけです。
バイキング形式ですから、好きなものを好きなだけ食べることができたわけですが、意外に(といっては彼らに失礼ですが)常識的かつ健全な選択をしていました。しっかりした食習慣が身についている証拠です。
グリム童話の中で、ヘンゼルとグレーテルは、森の中で道に迷い、子どもの究極の夢である「お菓子でできた家」を発見します。兄弟は大喜びをしてそれを食べてしまうわけですが、もし、悪い魔女が現れずに、そのまま兄弟だけで過ごすことになったら、毎日毎日、全カロリーをお菓子に依存した生活を送らなければなりません。いくらお菓子が好きだといっても、これでは悪夢です。
不幸なことに、フェアウェルパーティーは大会に来て7度目の食事でした。高校生が大好きなはずのパーティーの料理は、半分以上が残ってしまいました。
何とももったいない話です。
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