カントウタンポポの群落 2008/04/14 |
タンポポの季節です。 タンポポと一口に言っても、実際にはいくつかの種類があります。 私たちが最も多く目にするのは、外国からの移入種であるセイヨウタンポポです。 千葉県の都市部で見られるタンポポのほとんどはセイヨウタンポポですし、農村部でも、新しく造成された土地や幹線道路沿いに生えているタンポポは大部分がセイヨウタンポポです。 では、カントウタンポポはどのようなところに残っているのでしょうか。 その答えは、「良く手入れのされた農道や田畑のあぜ道」です。 農家の人が、季節季節にていねいに草刈りをして維持・管理している農道やあぜには、必要以上に他の植物の移入がなく、カントウタンポポにとって安定した生育環境が維持されているようです。 一方、大量の除草剤を散布したところや、反対に放置されて草ぼうぼうになったところからはカントウタンポポは姿を消しています。 カントウタンポポは農村の原風景の指標と言えるのかも知れません。 写真は、市原市のある地域に見られるカントウタンポポの群落です。 良く整備された水田と、あぜのようすがわかります。 こうしたカントウタンポポの群落は、農家の人たちの手によって間接的に守られているのです。 一方、何かと悪者扱いされるセイヨウタンポポですが、ではセイヨウタンポポがカントウタンポポを駆逐して分布を広げているかというと、必ずしもそうとは言い切れません。確かに、セイヨウタンポポはカントウタンポポより花をつける期間が長く、分布を広げるのに有利な特徴を持っています。新しい造成地などには真っ先に進出します。しかし、在来種がしっかり根付いているところでは、仲良く共存しているように見えます。 移入種の中には、ブラックバスのように、生態系のバランスを崩し、在来種を駆逐して生息数を増やしている生物がいる一方、ダンゴムシやオオイヌノフグリのように、いつの間にか日本の環境にとけ込み、生態系のなかで重要な役割を担っている生物もいます。 私たちの日常のレベルでは、自然は本来変化しないもの、そおっとしておけば、いつまでもその状態が続くものだという感覚があります。しかし、タイムスケールを10年、100年、1000年、1万年と広げていくと、自然はめまぐるしい変化の連続であることがわかります。 変化するのは生態系だけではありません。地形も、気候も、めまぐるしく変化しています。「動かざること大地の如し」は武田信玄の名言ですが、これは人の寿命が長くてもせいぜい100年程度ですから変化に気づかなかっただけで、彼がもっと長生き(100万年くらい)していたら、動き回る大陸を目の当たりにしてさぞ驚いたことでしょう。 仮に移入種が入らなくても、乱獲や乱伐を一切止めたとしても、人為的原因の地球温暖化がなくなったとしても、私たちの子孫が見る自然は、今とは全く違ったものになるはずです。私たちの目の前にある自然は、変化していく過程の一断片に過ぎないのです。 自然は、かけがえのないものです。 しかし、それはめまぐるしく変化するものなのです。 もちろん、それを理由にブラックバスの拡大を支持するするつもりはありませんので念のため。 (2008.04.14取材) |