EL34 シングル オーディオアンプの作製



<発端>

 EL34・・・中学生のとき、ラジオの製作だったか、初歩のラジオだったかに、EL34を使ったアンプの作成記事があった。「なんて、スマートできれいな真空管なんだ・・・」と感動して以来、いつか自分でも作ってみたいと思い20年近く経ってしまった。さらに、中学時代、放送委員なるものを仰せつかっていたのだが、放送室のラックの中に、古めかしいアンプが置いてあり、ケースの隙間からのぞくと、なんとそこには細身の真空管が肩をよせて4本入っているではないか! このアンプは通電したところを見たことないのだが、ここでもまたEL34への思いが・・・。
 ちょうど二十歳のころ、やや財力も付き始め、真空管を買えるようになっていた。そのころまでには、6BM8を使ったアンプを作ったりしていたので、まあ、真空管自体に触れることには抵抗はなかった。ついにジーメンス社のEL34を2本購入したのだった。真空管を購入してから、これまた、十年以上が経過してしまった。理由はいろいろだが、20歳〜28歳まで関東にいなかったので、秋葉原が遠くてなんとなく自作離れしていたからだと思う。さて、そんなこんなで球を買ってから13年目にして、ようやくアンプとして活躍することとなったのだ。1ペアいくらで購入したか覚えていないが、確か1本4000円くらいだったと思う。

<完成図>

 完成写真を示す。電圧増幅管6DL4が2本と、電力増幅管EL34が2本。トランスは春日無線変圧器のものを使った。出力トランスはタンゴのU608である。シャーシ上にもう一個トランスがのっているのだが、これはバイアス用&冷却ファン用の電源である。なお、平滑回路にチョークコイルは使っていない。大容量小型コンデンサーが安価に手に入るので、これにどっぷりと頼っている。シャーシ上に突き出した棒は、バイアス電圧調整用のボリュームだ。前面にある電流モニター用のラジケーターでプレート電流を調整する。なにもかも自動化されてしまった時代に、このような「手間」は、かえって楽しいものだ。


<仕様>

・卓上型、小型であること
・見た目にもアンプらしいこと
・初段にはフレームグリッド管であるEC88(6DL4)が使ってみたい
・固定バイアスでいく
・プレート電流値をモニターできるようにする
・出力は2W以上欲しい

入力
初段電圧増幅
6DL4
出力電力増幅
EL34
8Ωスピーカー
想定入力電圧
1V

電圧増幅率

電圧増幅率

出力
多分2W台


<設計>

 EL34は三極管接続として使う。でも、B電圧は300Vくらいに抑えておき、軽く使うこととする。固定バイアス方式として、電流値は千石通商で売っているラジケーターで読み取るようにした。このラジケーターは、リニアのメモリが振ってあるが、本当にリニアに使えるのは、0から6くらいまでであり注意が必要だ。今回はプレート電流値を50mAに設定した。これは、トランスの許容値からの制約である。初段の6DL4は初めて使った球なので、実はよくわからない。特性の情報もあまり見当たらない。文献1にある情報を元に、取りあえず決めてみた値である。後日、最適化が必要だろう。

 電源回路は下図のようである。今回も電解コンデンサーにモノを言わせてチョークコイルを省いてしまった。バイアス用のトランスは別途用意した。空冷用のファンの電源も、このトランスから得ている。ファンは若松で売っている40mm角の薄型のものだが、これを規格の12Vで使うと、とてもうるさい。ファン単体ではそうでもないけど、ケースに取り付けてまわしてみると、なかなか音が気になるのだ。そこで、抵抗を直列に入れてファンのかかる電圧を8V程度まで落としている。これで静かになる。しかし、ときどき回らないという現象にぶち当たった。はじめにちょこっと指で回してやれば回るのだが、自己起動できない場合があることがわかった。そこで、抵抗に並列にコンデンサーを入れてみた。これで、起動時は瞬間的に高い電圧がかかるので、間違いなく起動する。起動後は8V程度で静かに回ってくれるのだ。
 バイアス電圧は20V程度が必要なので、5kの可変抵抗で調節している。



<作製>


ケースの加工が一番時間がかかるかな。このケースは厚いのでとても加工が大変部品の配置はこんなもんだろうシャーシ内部。半分以上が電源回路。

プレート電流のモニター!!発熱が大きいEL34だし、ファンをつけた薄型40mm角のファンだ。6DL4はヒーターが反面丸見えだよ!



<測定>

 ちゃんとした測定機器はないので、秋月の「精密波形発生キット」を用いて、オシロスコープで波形を観察した。入力は正弦波1Vpp固定、負荷抵抗はセメント8.2Ωの抵抗器である。
100Hz
1kHz
10kHz
20kHz
40kHz
100kHz


次に矩形波で試した。低音が弱いことがハッキリわかりますねぇ。
100Hz
これは、ちょっとひどいですな
1kHz
うーん・・・
10kHz
40kHz

次に、どのくらいの出力で波形が歪むか試してみた。ここでは、オシロのCH1(入力信号)とCH2(出力信号)の波形をダブらせて表示し、その差を観察した。入力が1Vppでは、2つの波形はしっかり重なっている。1.33V付近で波形のトップにややズレが生じ始めた。2Vppでは出力波形はトップ部がクリップしてしまっている。測定中にわかったのだが、実は出力管より先に、初段の出力波形が歪んでしまうのである。設計のところでも説明したように、今回使った6DL4という球は初めての経験だ。後日、この辺は、もう少し最適化することとしよう。
Input:1Vpp
Output:10Vpp(1.6W)
Input:1.33Vpp
Output:13.3Vpp(2.7W)
Input:2Vpp
Output:xxx


 正弦波の信号でそれぞれの周波数信号を入れたときの出力電圧(Vpp)を測定してみた。結果はしたのグラフである。80Hzくらいから40kHzくらいまでは、まあまあフラットな特性であるものの、低音になにやらクセがあることがわかった。80Hzを割ったあたりから、急に出力波形が乱れることがわかった。原因はおいおい究明していく。


 測定中、面白いものを観察した。EL34のプレートの穴から、プレートの内面が覗けるのだが、部屋を真っ暗にして覗くと、ヒーターのオレンジとは別に、青い綺麗な光が見える。デジカメでその様子を写真にとってみた。さて、これは正常なのだろうか??ちなみに、球をかえても同じように観察される。6DL4の方もプレートが丸見えである。真っ暗の中、注意してみてみると、やはりプレート表面が青く光っている。ふぅ〜ん・・・。なんで光るんだか、誰か教えて。



<感想>

 今回のアンプは初めて音楽を再生したとき、「げっ、失敗作か・・・・」と思ったのだった。理由は音が非常に小さく、且つ、ガサガサした音になっていたのだった。しかし、電流も電圧も設計どおりだし、特に部品から煙が出てしまうようなこともないし・・・。仕方ないので、EC88を取り替えてみたりしても、特に変わらず。真空管アンプは始めはエージングが必要である・・・といった記事をよく見かけるので、そのまま、電源を入れっぱなしでほっといたのだ。3日も経つとちゃんと音が出るようになった!すばらしい。エージングが必要って、本当だったのねぇ〜。
 このアンプは単純に計算しても、常時60W近い熱を発している。規模の割に大ぐらい。ファンが回っているのもかかわらず、ケースも人肌くらいに温まる。
 出力トランスにタンゴのU608という超チープなものを使っているが、狭い僕の部屋で聞く分には充分かも知れない。作成後、だいたい1週間がたったが、ようやく調子が出てきた感じだ。中島みゆきのCD「短編集」を聞いているところだが、飾りっけのない素直な音だなー。


<今後のお楽しみ予定>

1.NFBをかけてみる。実はいままでNFBという技術を使ったことがない。
2.出力トランスの2.5kのタップが余っているので、これを利用してUL接続にしてみる。
3.EL34をいろいろなメーカーのものと取り替えて遊ぶ(今は、全ての真空管がSIEMENS社製なのだ)

<参考文献>

1.黒川達夫、「はじめての真空管アンプ」、誠文堂新光社


2001/08/26
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