6. ThinkPad535E に Linux をインストールする

 これまでThinkPad535Eに、TurboLinux2.0、TurboLinux3.0、Plamo Linux1.3、日本語RedHat5.2J、Vine Linux1.0βをインストールしてきました。ここでは、そのいくつかについてインストール方法、設定方法などについて紹介します。

ThinkPad535Eの詳しい仕様は、ここにあります。

目次

6.1 はじめに
6.2 インストール
6.3 Xの設定
6.4 カーネルのリコンパイル
6.5 Mwaveで音を鳴らすために
6.6 APMの設定
6.7 MOBILE DISK2を使う

6.1 はじめに

現在、日本でメジャーなLinuxのディストリビューションパッケージは、RedHat系では、TurboLinux3.0、Vine1.0β、RedHat5.2、Slackware系では、Plamo1.4があります。進化の早いLinuxの世界では後でリリースされるパッケージほど一般的に良くなっていると言えます。その意味で、現在はRedHat系では日本語RedHat5.2かSlackWare系ではPlamo1.4がお勧めです。
TurboLinux3.0はXFree86が3.3.2と古く、ThinkPad535Eのビデオチップでは16bpp(64K)色表示することができません。

これらのパッケージは商用パッケージ(TurboLinuxか日本語RedHat)であれば大手書店かパソコンショップで入手できます。最近のLinuxブームのせいかちょっとした本屋かパソコンソフトを売っているお店でもおいてあるようです。PlamoやVineであれば、UNIX関連の雑誌(UNIX USER、Linux JAPANなど)や書籍・・いわゆるインストール本に付録としてLinuxの各種ディストリビューションのCD-ROMがついてきます。

本の付録のCD-ROMを使う場合の注意ですが、一般に輸送中の事故(曲げなど)の関係かそれともCD-ROM Writerの不良かCD-ROMの一部が読めないという事故に良く遭いました。また、締め切りの関係でCD-ROMの収録が完全でないということも良くありました。月刊誌(隔月刊誌含む)の付録は、比較的、新しい情報(パッケージ)を安価に得やすいという利点がありますが上記のような点に注意してください。

また、TurboLinuxの場合、書籍の付録のパッケージには開発環境が付いていないので止めた方がいいです。自分の環境に合わせるにはカーネルの再構築が必要ですが、TurboLinuxのお試し版の場合にはこれができません。

今(1999年5月2日)のお勧めは、日本語RedHat5.2かVine1.0β、またはPlamo1.4あたりでしょうか。

ここでは、ノートPCのIBM ThinkPad535Eへのインストールを紹介します。ただし、ThinkPad535Eと日本語RedHat5.2に特化した説明になりますので一般的なインストールは適当なインストール本を読まれることをお勧めします。

6.2 インストール

 基本的なインストール方法を説明します。アクロバティックな方法もありますが、ここではごくごく一般的な方法を述べます。
CD-ROMを内蔵していないThinkPad535などのノートPCの場合はおもに次の3つの方法があります。

 私のとっている方法は、PCMCIA SCSIカード+外付けCD-ROM経由です。使ったCD-ROMドライブはパイオニア製の24倍速CD-ROM PIONEER PCP PR-24というものですが付属のSCSIカードはLinuxではサポートされていないのでAdaptec APA 1460AというSCSI2対応のカードを使いました。
最新のPCMCIAのドライバで使える、PCMCIAのカードは、ftp://hyper.stanford.edu/pub/pcmcia/SUPPORTED.CARDSのファイルを参照すればわかります。

 一般にノートPCにPCMCIAカードを使ってインストールをするにはブートディスクでブートしたあとに補助ディスクに交換してPCMCIAデバイスを認識させます。しかし、Plamoの場合は1枚のboot diskでPCMCIAの認識までおこなえます。しかも、DiskDock経由やMicroDock経由でIDEのCD-ROMを認識することができます。また、PCMCIAカードを使ったときのネットワークの設定もインストールの中でおこなうことができます。

 よってインストールに必要なものは、ネットワーク経由でインストールする場合は、LinuxがサポートするPCMCIAのEthernetカードとネットワークに接続されたUNIXサーバが必要になります。また、SCSIタイプのCD-ROMドライブ経由でインストールする場合は、LinuxがサポートするPCMCIAのSCSIカードとSCSI接続できるCD-RMドライブが必要になります。

 もうひとつは、DOSのFAT領域にあらかじめパッケージをコピーしておく方法ですが、余分に数百MBの空き容量が必要だと思います。現時点の新しいディストリビューションパッケージのカーネルはFAT32をサポートしていますので、FAT32領域にコピーするのも可です。ただし、この方法はDOS領域にかなりな空き領域が必要です。

 ほとんどのディストリビューションパッケージはインストール時にパッケージのセットメニューが表示されますので、自分の必要なパッケージの種類を選ぶのも良いですし、自分ですべてのパッケージを選ぶのも良いです。よくわからなければ、「開発用ワークステーション」みたいなメニューを選ぶのが良いと思います。「開発用」であることが良い理由はカーネルの再構築をおこなうためです。

 インスト−ル中にネットワークの設定をきかれますがPlamoの場合は、そのつど入力していきます。RedHat系はskipしてください。あとで設定します。

 後半にLILOをインストールするかどうかときかれますが、ThinkPad535Eのサウンド機能を使いたい場合はスキップして下さい。ThinkPad535(無印)と535EはサウンドカードがMwaveなためLinuxでは使えません。そこで、DOSでMwaveのサウンドの機能を設定した状態でloadlinを使用してLinuxを立ち上げます。もちろん、サウンドを使えなくても構わない人はliloをインストールしても構いません。

6.3 Xの設定

(1)TurboLinux3.0標準のXFree86 3.3.2を使う場合
 インストールの後半で自動でハードウェアを認識し設定までやってくれます。このときは256色(8bpp)で設定して下さい。
 これでfvwmなどであれば問題なく使えます。

 XFree86で16bppまで表示したい場合には、Pacific HiTech社のサイトからXFree86 3.3.3.1のSVGAサーバを取得しインストールします。ただし、ThinkPad535Eの場合はアクセレレータが効かないので表示はかなり遅いです。xengineで概して660rpm程度です。XF86Configはこれです。/etc/X11の下にXF86Configという名前でおいてください。

ちなみに、ThinkPad535(無印)、535Eに使用されているグラフィックチップはTrident Cyber 9320でグラフィックメモリは1MBです。

(2)Accelerated-Xを使う場合
 Accerated-XはXi Graphics社がリリースしている商用Xサーバです。デスクトップ版とラップトップ版がありラップトップ版は日本では2万7千円ぐらいです。秋葉原のぷらっとふぉーむにあります。4.1.1より古いバージョンを買った方はXi Graphics社よりバージョンアップのためのパッチをFTPでとってきて下さい。
 マニュアルに従ってAccelerated-Xをインストールしたあと、設定せずにいったん抜けてパッチをあてます。次にXsetupで設定しますが、グラフィックチップをTrident Cyber 9382にしVideo RAMは1MB、色は64Kにするのがミソです。

 実は、Accelerated-Xを使った場合でもグラフィックアクセレレーションが働かないらしく800x600で16bppの解像度でxengineの値は630rpm前後にしかなりません。これは、全然早くないので高価なAcceerated-Xを購入する必要はありません。
 あと、Accelerated-Xをインストールすると一部のXを使うソフトが起動できなくなります。これは、Acceerated-Xがlibc5に対応していないからだと思います。

6.4 カーネルのリコンパイル

 ディストリビューションパッケージから初期導入されるカーネルは古かったり余計な機能が取り込まれていたり必要な機能が無かったりしています。例えば、たいていのディストリビューションパッケージのデフォルトのカーネルはCPUの設定が386ですしMATH EmulationがYになってたりしています。そこで、カーネルやモジュールの再作成が必要になります。
私のconfigファイルはこれです。

6.5 Mwaveで音を鳴らすために

 ThinkPad535(無印)と535EではサウンドカードがなくMwaveでサウンド機能とモデム機能を実現しています。Windows95環境では、それなりに重宝するMwaveですがLinuxではそのまま使うことができません。ただしLinux環境下ではサウンド機能のみでモデム機能は使えません。
 そこで、ThinkPad535(無印とE)でLinux環境下で音が出したい場合には、カーネルを作り直しDOS環境下からloadlinで起動しなければりません。詳しい設定例はここのSoundの項を参考にして下さい。

loadlinからの起動例はこのようになります。私の例では、Cドライブにlinuxというディレクトリを作成し、その下にautobootというディレクトリを作成しています。linuxというディレクトリの下にこのファイル(autoboot.batというバッチファイル)とautobootというディレクトリの中にzimageというカーネルが入っています。真ん中辺の3という数字はブートのモードが3(ネットワークモード)であるということを明示しています。何も指定しなければ、/etc/inittabの中のdefaultで示されているモードで立ち上がります。/dev/hda3というのはルートのファイルシステムがあるデバイス名です。mem=72Mというのは、実メモリが72MBあります、とカーネルに明示的に教えるためのオプションです。

autoboot.batの例
loadlin autoboot\zimage linux 3 root=/dev/hda3 ro mem=72M

うまくいけば、起動中に次のようなメッセージが見えるはずです。

Sound initialization started
<Sound Blaster (2.0)> at 0x220 irq 5 dma 1,5
<Yamaha OPL2 FM> at 0x388
Sound initialization complete

また、
# cat /dev/sndstat の出力を確認します。
出力例
Sound Driver:3.5.4-960630 (Tue Nov 17 15:53:03 JST 1998 root,
Linux jupiter.xx.xxxxxx.xxxx 2.0.35 #2 Tue Nov 3 22:27:48 JST 1998 i586 unknown)
Kernel: Linux jupiter.xx.xxxxxx.xxx 2.0.36 #1 Tue Nov 17 15:54:37 JST 1998 i586
Config options: 0

Installed drivers:
Type 1: OPL-2/OPL-3 FM
Type 2: Sound Blaster
Type 7: SB MPU-401

Card config:
Sound Blaster at 0x220 irq 5 drq 1,5
(SB MPU-401 irq 1 drq 0)
OPL-2/OPL-3 FM at 0x388 drq 0

Audio devices:
0: Sound Blaster (2.0)

Synth devices:
0: OPL2

Midi devices:
0: Sound Blaster

Timers:
0: System clock

Mixers:

うまく機能しているかどうかは、次のようにして確認します。

# cat english.au > /dev/audio

6.6 APMの設定


 ThinkPad535Eの場合は、APM(Advanced Power Management)が特殊なようで、APMをONにしたカーネルを作ってloadlinからブートすると必ずパニックします。DOS/Windows95のThinkPadの機能設定でAPMのモードを1.0互換モードにしても駄目でした。 liloでブートすると問題なく起動できます。ただし、liloの場合はサウンドの設定が有効になりません。APMとサウンドはThinkPad535Eの場合は排他利用ということになります。
 APMがOFFの場合は、xbattstatなどのバッテリユーティリティプログラムが動きません。

6.7 MOBILE DISK2を使う


 大容量のハードディスクに換装した際などに余ったハードディスクを使うためのデバイスのひとつにMOBILE DISK2というのがあります。2.5inchで12.5mm厚程度のベアドライブを入れたものをパソコンのパラレルポートに繋いで使うものです。電源はマウスポートか専用電池ボックスかACアダプタから採取します。右の写真の真ん中へんにあるのが、タバコの箱なので大きさを想像してください。
 カーネル2.0.35からExperimentalオプションをONにした状態で、2.0.36からは正式にMOBILE DISK2のようなパラレルポートに繋ぐIDE機器が使えるようになりました。そこでMOBILE DISK2を使うための設定方法について説明します。(/usr/src/linux/Documentation/paride.txtに詳しい説明があります。)

(1)カーネルの構築とモジュールの作成
CONFIG_PARIDE=m
high-level driversの設定 
 
CONFIG_PARIDE_PD=m
low-level protocol driversの設定
 
CONFIG_PARIDE_EPAT=m

注:上記3項目をm(モジュール)にしていますが、TurboLinux3.0 を 2.0.36 のもとではmではMD2は認識できませんでした。y にしてカーネルに組み込んで下さい。 Plamo Linux1.3 on 2.0.36のもとでは認識したのですが。

# make dep; make clean; make zlilo; make modules, make modules_install
# depmod -a(必要ないかも)

(2)デバイスノードの作成
#!/bin/bash
#
# mkd -- a script to create the device special files for the PARIDE subsystem
# function mkdev {
mknod $1 $2 $3 $4 ; chmod 0660 $1 ; chown root:disk $1
}
#
function pd {
D=$( printf \\$( printf "x%03x" $[ $1 + 97 ] ) )
mkdev pd$D b 45 $[ $1 * 16 ]
for P in 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
do mkdev pd$D$P b 45 $[ $1 * 16 + $P ]
done
}
#
cd /dev
#
for u in 0 1 2 3 ; do pd $u ; done
for u in 0 1 2 3 ; do mkdev pcd$u b 46 $u ; done
for u in 0 1 2 3 ; do mkdev pf$u b 47 $u ; done
for u in 0 1 2 3 ; do mkdev pt$u c 96 $u ; done
for u in 0 1 2 3 ; do mkdev npt$u c 96 $[ $u + 128 ] ; done
for u in 0 1 2 3 ; do mkdev pg$u c 97 $u ; done

(3)fstabの設定
MD2というマウントポイント(ディレクトリ)を作り、/etc/fstabの設定をする。
# mkdir /MD2

/etc/fstabに次のようなエントリを作成する。
/dev/pda1 /MD2 vfat defaults,noauto,user 1 1
(私はWindows環境でも、このMOBILE DISK2のディスクを使うのでファイルタイプをvfatにしていますが、Linuxでしか使わないのならばext2でもいいです。)

(4)insmodの設定
Slackware系の場合、モジュールの設定を生かすために、/etc/rc.d/rc.localに次のような記述を追加します。
# For MOBILE DISK2
insmod paride
insmod epat
insmod pd

RedHat系の場合、/etc/rc.d/rc.sysinitに同様に追加すればいいと思います。(たぶん)

(4)うまくいった場合のブート時のメッセージ
paride: version 1.02 installed
paride: epat registered as protocol 0
pd: pd version 1.04s, major 45, cluster 64, nice 0
pda: epat 1.01, Shuttle EPAT chip c5 at 0x3bc, mode 2 (8-bit), delay 1
pda: TOSHIBA MK1422, master, 167960 blocks [82M], (988/10/17), fixed media
pda: pda1

うまく認識されれば上のようなメッセージをブート時に見ることができます。 上の例では、MD2の中にThinkPad220から抜いた80MBのディスクを入れていますので、TOSHIBA MK1422・・というようなメッセージが見えます。
MD2はDOS/Windowsの世界でも中に入れるディスクとノートPCの相性があるみたいなので注意が必要です。

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