思い出の美術館81 - 90

思い出の美術館81:中尊寺讃衡蔵(平泉、岩手)

仙台から東北新幹線で北上して、一関で降り、バスに乗ってしばらく行くと、平泉に着きます。国道4号線に沿ってしばらく歩き、左におれると、中尊寺に続く長い坂、月見坂に入ります。中尊寺本堂や不動堂などを見ながら月見坂を登って行くと、金色堂の手前にコンクリート造りのお堂があります。これが讃衡蔵です。

ここには、中尊寺に伝わる宝物や、平泉周辺で発掘された遺物が、収蔵されています。代表的なものは、”本坊阿弥陀如来座像”、”願成就院薬師如来座像”、”中尊寺経(紺紙金字一切経)”、”金光明最勝王経法塔曼陀羅”などです。中尊寺経には、金泥で美しい仏画が描いてあります。東北地方の仏教美術が、意外に充実していることがわかります。

この時は、ちょうど、テレビで源義経をやっていたころなので、義経に関する展示もやっていました。このあとには、もちろん、金色堂を拝観しました。
思い出の美術館82:クイーンズランド美術館(ブリスベン、オーストラリア)

ブリスベンはオーストラリアの東海岸の都市で、リゾートで有名なゴールド・コーストの近くです。高層ビルの並び立つ都市ですが、公園にも恵まれています。ブリスベン川に沿う公園、サウスバンクの一角にあるのが、クイーンズランド美術館です。

ここのコレクションは、オーストラリアの作家の作品を中心としていて、その他に、ヨーロッパの古代〜近代の作品や東洋美術も含まれています。印象に残ったのは、ラファエル前派のバーン=ジョーンズの”オーロラ”です。ドガ、ピサロ、スーチンなどの作品もありました。

オーストラリアの作家としては、マーガレット・プレストンという20世紀初頭の作家の企画展が行われていました。美術館の一角には、日本家屋の一室が再現されていました。また、アボリジニ・アートの展示もありました。

美術館のカフェで、ブリスベン川を見ながらアイス・コーヒーをいただきました。
思い出の美術館83:サントリー美術館(六本木、東京)

赤坂にあるときによく行ったサントリー美術館(思い出の美術館8)が、六本木に移転して再開したので、行ってみました。旧防衛庁跡地にできた東京ミッドタウンの中にあります。大江戸線の六本木駅で降りて、東京ミッドタウンに入ると、ガレリアと呼ばれる部分の3、4階にサントリー美術館があります。

この時は、再開を記念して、”日本を祝う”というテーマで、館蔵の優品の展示をしていました。3階で受け付けをすると、すぐにエレベーターで4階に上がります。”浄瑠璃絵巻”、有名な”南蛮屏風”、陶器類、衣装類が展示されています。階段を降りて、3階に移ります。3階には、”阿国歌舞伎図屏風”や”遊楽図屏風”がありました。桃山時代のおおらかな感じが”祝う”というテーマにふさわしいのでしょうか。

展示場の面積は、赤坂時代より増えた感じです。しかし、赤坂時代より全体として暗くて、開放感がありません。ちょっと残念です。ここのカフェは、金沢の老舗”不室屋”が運営しているそうですが、混んでいたので、入っていません。
思い出の美術館84:鎌倉大谷美術館(鎌倉)

鎌倉駅の西口を出て、御成小学校前の道を南下して、細い道へ西に折れ、しばらく行くと、花の咲く入り口が見えてきます。そこを入って、少し上ると、りっぱな住宅があります。美術館というよりは、個人の住宅に見えますが、これが、鎌倉大谷美術館です。

ここは、もとは、ホテル・ニューオータニ会長の大谷米一氏の邸宅でした。氏の絵画コレクションをここに収蔵・展示しています。デュフィ、ブラマンクを中心として、日本画もコレクションされています。

私が行ったときには、ブラマンクの展覧会をしていました。ブラマンクの”赤い屋根のある風景”、”雪景色”などが展示されていました。独特のはげしいタッチの絵です。

1階には、ちょっとしたサンルームがあって、庭園を眺めることができます。2階に上がると、平山郁夫や速水御舟の絵もありました。この時には、デュフィの絵は出ていませんでした。

ところが、残念なことに、現在は休館中とのことです。
思い出の美術館85:ウイーン美術史美術館(ウイーン、オーストリア)

ウイーン旧市街の南西部、リング通りに面して、2つの大博物館、自然史博物館と美術史美術館が向かいあって建っています。石造りの重厚な建物の、大規模な美術館です。美術史美術館には、ヨーロッパを支配したハプスブルグ家の厖大なコレクションが収蔵されています。特に、イタリア絵画、フランドル絵画が充実しています。

建物の中央にある入り口から入り、階段を上って2階に行きます。途中で上を見上げると、クリムトが若いころに描いた壁画があります。初めに、イタリア絵画の部屋に入ります。ティツィアーノ、マンテーニャなどの絵があります。ラファエロの”草原の聖母子”が有名です。

スペイン絵画の部屋では、ベラスケスの”王女マルガリータの肖像”のシリーズが注目されます。さらに行くと、最大の目玉である、ブリューゲルの部屋があります。”バベルの塔”や”農民の結婚”が必見です。ドイツ絵画の部屋では、デューラーの”若いヴェネチアの娘”を見ます。

あまりにも多くの絵がありますので、たくさんあるバロック絵画ほ流して見ざるをえませんでした。それでも時間がなくなってしまい、1階にある工芸部門はパスしてしまいました。
思い出の美術館86:太田記念美術館(原宿、東京)

原宿駅で降りて、若い人で混み合う表参道を進み、ラフォーレの手前の細い道を左に折れると、小さな美術館があります。これが、浮世絵のコレクションで知られる、太田記念美術館です。表参道の喧噪とは、うって変わった落ち着いたたたずまいです。

ここは、東邦生命の元会長、太田清蔵氏の浮世絵コレクションを収蔵しています。北斎の”雨中の虎図”、広重の”名所江戸百景”などが有名です。

私達が以前に行ったときには、パリのギメ美術館収蔵の浮世絵の特別展をやっていました。ちょうど、ギメ美術館の北斎の龍図が、日本にある北斎の虎図と対であることが発見されたばかりで、両者がならべて展示してありました。その他に、歌磨、写楽の美人図、役者絵もありました。

小さな美術館は、人でいっぱいで、2階の展示室に行くのに、階段の途中でだいぶ待たされました。
思い出の美術館87:興福寺国宝館(奈良)

近鉄奈良駅で降りて、東にまっすぐ進むと、右に広大な興福寺が見えてきます。高くそびえる五重塔の北にあるのが、興福寺国宝館です。ここには、興福寺に伝わる仏像、仏具の優品が展示収蔵されています。名前の通り、国宝も多数あります。

展示の目玉になるのは、なんと言っても、阿修羅像でしょう。これは、天平期乾漆彫刻の傑作ですが、思っていたより小さいのでちょっとびっくりしました。3面6臂という異様な形ですが、グロテスクな感じがしません。山田寺仏頭は、おおらかな白鳳時代の作品です。

興福寺彫刻のもう1つの黄金時代は、鎌倉時代です。慶派の無着・世親像は、日本の写実彫刻の1つの頂点といえるでしょう。金剛力士像、天灯鬼・龍灯鬼像も鎌倉時代の優品です。

国宝館を見たあと、南円堂を見て、南にぬけると、猿沢の池に出ます。さらに南下すると、奈良町に入り、面白いお店がたくさんあります。
思い出の美術館88:コスチューム博物館(ファッション博物館)(バース、イギリス)

ロンドンのパディントン駅から、特急に乗って西に行くと、約1時間半で古都バースに着きます。駅を降りて、北に行くと、バースの原点であるローマ浴場跡があります。さらにゆるやかな坂を上って北に行くと、コスチューム博物館があります。最近、その名前が、”ファッション博物館”に変わったようです。

ここには、17世紀から現代までの衣装が展示・収蔵されています。ここのコレクションは、デザイナーのドリス・ラングレー・ムーアの収集を中心としたもので、30000点以上の収蔵品よりなります。

古いものとしては、17世紀の騎士の衣装があります。19世紀には、大きくふくらんだクリノリンのドレスが特徴的です。20世紀のファッションとしては、マリー・クワント、ジーン・ムイアー、ケンゾー、カール・ラガーフェルド、ジャンポール・ゴルチエなどの作品があります。また、靴や帽子、その他のアクセサリーもあります。ファッションの歴史に興味のある人には必見ですね。

このあと、バースの中心地に戻って、サリー・ランのお店で、有名なお菓子、サリー・ランズ・バーンをいただきました。
思い出の美術館89:国立新美術館(六本木、東京)

大江戸線の六本木駅を降りて、外苑東通を北上して、左に入ってしばらく行くと、国立新美術館の飛行船のような建物が見えてきます。ここは、かつて東大生産技術研究所があったところです。なお、ここに行くのには、千代田線の乃木坂駅で降りたほうが近いようです。

ここは、収蔵品を持たない、企画展だけの美術館です。展示室も多くて、展示面積もかなり広いようです。私が行ったとき(2007年5月)には、”モネ-大回顧展”をやっていました。オルセー美術館を含む世界中の美術館から、モネの全生涯にわたる作品が来ています。

オルセーからは”日傘の女性”、”サン・ラザール駅”、大原美術館からは”積みわら”、ボストン美術館から”睡蓮の池”が来ていました。総数100点近くの絵が展示されています。これだけの作品が一堂に会する機会は、あまりないでしょう。大変混んでいましたので、興行的にも成功でしょう。

ただ、美術館の予算をどんどんけずっていて、日本中の美術館が困っているのに、こういう箱モノばかり建てるというのは、ちょっと納得できない感じがします。
思い出の美術館90:ワタリウム美術館(神宮前、東京)

銀座線の外苑前駅で降りて、青山通りをちょっと西に進んで、右にまがって外苑西通りに入り、しばらく歩くと、三角形の敷地に建つコンクリート造りの建物が見えてきます。これが、現代美術や建築関係の展示をよくするワタリウム美術館です。

アンディ・ウォーホールやニキ・ド・サンファル、ヨーゼフ・ボイスなどのコレクションもあるようです。

私が見に行ったとき(2007年5月)には、ドイツの建築家、ブルーノ・タウトの特別展をやっていました。入り口を入って、すぐのエレベーターで上った2、3階が展示室になります。狭いスペースいっぱいに展示されています。2階には、タウト設計の建築や奇想天外な”アルプス建築”に関する展示がありました。有名な、桂離宮についてのノートもあります。

3階には、タウトと日本人芸術家との交流についての展示がありました。なかでも、柳宗悦への手紙が印象に残りました。

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