思い出の美術館51 - 60

思い出の美術館51:砂川美術館(柏、千葉)

柏の駅を降りて、国道6号線に沿ってしばらく歩き、16号線との交差点を越えると、和風のお屋敷が見えて来ます。これが、柏市立砂川美術館です。ここには、砂川七郎氏によって徴集された芹沢けい介の染色作品が展示されています。

芹沢けい介は、柳宗悦の同人であり、民芸の型染の技術を発展させた染織家です。彼の作品の美術館としては、第29回に書いた、仙台の東北福祉大学芹沢けい介美術工芸館と、ここと、静岡の芹沢けい介美術館があります。静岡の美術館はまだ行っていません。

武家屋敷のような門から一歩入ると、トラックの走る国道のそばとは、思えないたたずまいです。ちょっとした日本庭園があります。館内には、有名な”風”の字ののれんや、”いろは”の屏風、雑誌”工芸”の装丁などがあります。ちょっと危なっかしい階段を上って2階に行くと、染めの着物が展示されていました。

ところが、ここは近年、残念ながら、閉館したそうです。収蔵品は、柏市の管理下に入り、札幌での芹沢けい介展にも、出品されました。
思い出の美術館52:ストラスブール現代美術館(ストラスブール、フランス)

パリ東駅から特急で4時間ほど行くと、アルザスの中心都市、ストラスブールに着きます。この街は、ばら色の石でできた大聖堂で有名です。美しい旧市街であるプチット・フランス地区の水門の外にあるガラス張りの建物が、ストラスブール現代美術館です。

この美術館は、20世紀の美術家のジャン・アープの遺族が提供した作品を、コレクションの中心としています。ジャン・アープはアルザス出身で、スイスのチューリッヒで詩人のトリスタン・ツァラらとダダイズムの運動に参加しました。

この他に、ここには印象派から現代美術までの作品があります。ドレ、モネ、ブラック、カンディンスキーなどの作品が代表的なものです。

私達がストラスブールを訪ねたのは、もうだいぶ前になりますが、このとき偶然にこの美術館のオープンの日と重なりました。新聞でオープンのことを知って、行ってみました。オープン記念として無料で解放していたので、とても混んでいましたので、最後まで見るのはあきらめてしまいました。
思い出の美術館53:鹿沼市立川上澄生美術館(鹿沼、栃木)

鹿沼は、宇都宮の西にある歴史ある街道の街です。この街の一角の、黒川のほとりに建っている明治風の建物が鹿沼市立川上澄生美術館です。ここは、宇都宮にゆかりのある版画家、川上澄生の作品をコレクションしています。

川上澄生といえば、昔のウイスキーのCMにあった”へっぽこ先生”を思い出します。あの丸いメガネの先生は、澄生自身を表したのでしょうか。彼は、独特の南蛮趣味の詩的な木版画で有名です。彼は、宇都宮で英語の教師をしながら版画製作に励みました。

美術館の1階には、彼がアメリカで見た風景を版画にしたものが、展示してありました。2階には、彼の代表的な版画の”初夏の風”や”えげれすいろは”がありました。

売店には、川上澄生のいろはかるたも売っていました。
思い出の美術館54:BUNKAMURA THE MUSEUM(渋谷)

渋谷の109のところから、文化村通りをすすんで行くと、東急デパートのむこうにBunkamuraのビルがあります。この中にはいって、エスカレーターを下っていくと、BUNKAMURA THE MUSEUMがあります。

この美術館は、コレクションを持たない、企画展だけの美術館ですので、ここでとりあげるのには、ふさわしくないかもしれませんが、思い出があるので書いておきます。

ここでは、主に近現代のヨーロッパ絵画を中心とした企画展を行っています。あまり日本で紹介されない作品を、展示して行く方針だそうです。私が見に行ったのは、ギュスターヴ・モロー展、デ・キリコ展、マグリット展などでした。特にモロー展は、なかなか日本では見られないので、印象に残りました。パリのモロー美術館(思い出の美術館6)からも、絵が来ていました。

この美術館は、私にとってはお正月の思い出と結びついています。正月の2日からやっている美術館はここしかないので、いつもこのころにここにやって来ます。私にとっては、この美術館は、門松のような正月風景の1つです。
思い出の美術館55:デ・ヤング美術館(サンフランシスコ、アメリカ)

サンフランシスコの中心部から西に行くと、ゴールデンゲート・パークという広大な公園があります。この公園の中にある、四角い塔を持つ建物が、歴史あるデ・ヤング美術館です。

この美術館は、サンフランシスコ・クロニクルの社主であったデ・ヤングによって、19世紀末に設立されました。ここは、アメリカ美術を収集することを目的としています。コレクションの中心は19から20世紀のアメリカ美術です。この他にメキシコや中南米の古代美術もあります。

ここには、開拓時代のアメリカの雄大な風景を描いた風景画があります。また、アメリカ近代絵画を代表するサージェントの”夜のディナー・テーブル”も有名です。サージェントは、印象

派の影響を受けた都会的な優雅な肖像画で知られています。 私達がここに行ったのはもう十数年前になりますが、この美術館は近年大きく改築されたそうです。
思い出の美術館56:相原求一朗美術館(十勝、北海道)

広大な十勝平野のほぼ中央に、中札内美術村(思い出の美術館35参照)があります。ここにある美術館群の1つが相原求一朗美術館です。ここには、北海道の山を描いた画家、相原求一朗の作品が展示されています。

美術館の石造りの建物は、帯広の銭湯、”帯広湯”の建物を移築したものだそうです。玄関のアーチが特徴的です。

相原求一朗は埼玉の生まれですが、北海道の風景に感銘を受けて、北海道の山々を描き続けました。十勝岳、羊蹄山、利尻岳などの名山を、大画面にいっぱいに描いています。細部にまで手を抜かない画法には迫力があります。彼のヨーロッパ滞在時の小品も展示されていました。
思い出の美術館57:世田谷美術館(用賀、東京)

新玉川線の用賀駅で降りて、バスに乗って砧公園の前で降りると、すぐ前の公園の一角に世田谷美術館があります。この美術館は、日本の近代美術をコレクションしています。

特に有名なのが、北大路魯山人の陶芸作品のコレクションです。また、ここの海外作品としては、アンリ・ルソーの”フリュマンス・ビッシュの肖像”が有名です。

世田谷にゆかりのある彫刻家の佐藤忠良、舟越保武、本郷新、画家の牛島憲之、難波田龍起らの作品もあります。

世田谷にアトリエを持っていた向井潤吉の記念館もあります。向井潤吉は、郷愁をさそう藁葺き屋根の農家の絵で知られています。
思い出の美術館58:バンクーバー美術館(バンクーバー、カナダ)

バンクーバーは、カナダ西海岸の中心都市です。美しい港湾都市です。バンクーバーのダウンタウンの中心部、ホーンビー通りとジョージア通りの角にあるのが、バンクーバー美術館です。入り口に列柱のある、古典様式の建物です。

ここには、カナダ出身の画家を中心とした近現代美術のコレクションがあります。特に、20世紀のカナダの女性画家、エミリー・カーのコレクションが充実しています。彼女は、トーテム・ポールなどのネイティブ・アメリカンの美術に影響を受けた作品を描いています。

数年前に、私達が行った時には、エコロジーをテーマとした、現代美術の企画展をやっていました。

ダウンタウンの西のはずれには、バンクーバー市民のいこいの場所であるスタンレー・パークがあります。ここから眺めるバンクーバーの風景は、印象的です。
思い出の美術館59:広島県立美術館(広島)

広島の路面電車の縮景園の駅を降りると、正面に広島県立美術館があります。ここは、有名な庭園である縮景園のそばになります。

ここには、広島ゆかりの作家を中心とする、20世紀の美術のコレクションがあります。絵画、彫刻だけでなく、工芸やデザインの作品も収蔵しています。

コレクションの中には、ルオー、エルンスト、グロッスなどの小品もあります。広島ゆかりの作家としては、平山郁夫、児玉希望、丸木位里・スマなどの作品が収蔵されています。

私達が数年前に行った時には、企画展として、有名作家の着物の新作が展示されていました。たしか、志村ふくみの作品もあったと思いました。

美術館から道路の向かい側には、ちょっとおしゃれなカフェがあって、帰りにそこでお茶をしました。
思い出の美術館60:松下電工汐留ミュージアム(汐留、東京)

地下鉄大江戸線の汐留駅で降りて、すぐのところにある松下電工ビルに入って、エスカレーターを上って行くと、4階に松下電工汐留ミュージアムがあります。最近できた新しい美術館です。

ここは、ルオーのコレクションで知られています。”女曲芸師”、”道化師”などの作品が所蔵されています。企画展のときでも、1つの部屋ではルオーの展示をやっています。

2、3年前に私達が行ったときには、ウイリアム・モリスの企画展をやっていました。モリスの壁紙、テキスタイル、家具、ステンドグラスなどが展示されていました。ヴィクトリア&アルバート美術館(思い出の美術館16)で見た作品も来ていました。バーンジョーンズ下絵のステンドグラスのレプリカもありました。

ここでは、デザイン関係や、アール・ヌーボーの企画展が比較的多いような気がします。

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