思い出の美術館41 - 50

思い出の美術館41:信濃デッサン館(上田、長野)

長野県の松本市の北東にある上田市塩田平の細い道をたどって行くと、三重の塔で有名な古刹、前山寺があります。この前山寺の門前にある、小さな美術館が信濃デッサン館です。

この美術館は、夭折の画家達の作品を収集した、窪島誠一郎氏の個人美術館です。村山槐多、関根正二、松本竣介など、20-30代で没した画家の作品、主としてデッサンが展示されています。代表的な作品は、村山槐多の”尿する裸僧”、関根正二の”自画像”などです。

槐多の作品は、近くに建てられた”槐多館”にも展示されています。ここも小さな美術館で、中空に浮かぶ階段など、建築としてもおもしろい建物です。残念ながら、信濃デッサン館は、窪島氏が次回に述べる無言館に力を集中するために閉館されることになりました。

前山寺では、名物の「くるみおはぎ」を食べました。
思い出の美術館42:無言館(上田、長野)

信濃デッサン館から十数分のところにあるのが、窪島誠一郎氏が建てたもう1つの美術館、無言館です。コンクリート打放しの小さな建物で、上から見ると十字の形をしています。

ここには、戦争で若くして没した画学生の絵が展示されています。これは、窪島氏が画家の野見山暁治氏といっしょに全国の戦没画学生の遺族をまわって、苦労して集めて来た作品です。作品の中には、洋画と日本画がともにあります。いずれも、才能を感じさせる作品ですが、画家は才能を開花させることなく生を奪われました。

彼等の中には、戦場に小さなノートを持っていって絵を描き続けた人もいます。残された、持ち主のいない絵の具箱も、涙をさそいます。

この美術館は、その性格からして、あまり訪れる人はいないのではないかと、心配していましたが、観光バスがやって来て、けっこう混んでいたので、ほっとしました。
思い出の美術館43:ダリ美術館(モンマルトル、パリ)

モンマルトルのテルトル広場へ向かう階段を上って行くと、上りきったところのすぐ左に古い建物があります。この小さな建物が、ダリ美術館です。

せまい入り口から地下の展示室に入って行くと、不思議な世界が展開されます。小さい美術館ですが、300点近いダリの作品が展示されています。ただし、大作の油絵はなく、多くはデッサンやリトグラフです。なかでも、不思議の国のアリスを描いたシリーズが印象に残りました。

このほかに、彫刻やオブジェも展示されています。”宇宙の象”やおなじみの柔らかい時計のオブジェや、赤い唇のソファーがありました。

美術館の後には、道の反対側にあるカフェで、パリ市街を眼下に見ながら、お茶をしました。
思い出の美術館44:松本市美術館(松本、長野)

松本市は、古い町並みの残った感じのよい町です。市内にはかわいらしいバスが回っていて、気軽に町巡りが楽しめます。松本駅から、駅前大通りをまっすぐ東に行くと、松本市美術館があります。草間弥生の巨大な花のオブジェが目印です。

ここには、おもに現代美術を中心とするコレクションがあります。特に、松本出身の美術家、草間弥生のコレクションが充実しています。私達が行った時は、ちょうど草間弥生の特別展をやっていました。

この美術館には、子供時代を含めた彼女の初期の作品があります。子供のころ描いた絵にも、まぎれもない彼女の特徴が出ていました。その他に、おなじみの水玉の作品や立体オブジェがあり、また、60年代のニューヨーク時代の記録映画も上映していました。札幌の芸術の森で見た草間展より充実していました。

帰りには、ギフトショップで、草間弥生のパンプキン・クッキーを買って来ました。
思い出の美術館45:横浜美術館(横浜)

横浜の桜木町の駅から行くと、そびえたつランドマーク・タワーの向こう側に横浜美術館があります。最近、みなとみらい駅ができたので、だいぶ交通の便がよくなりました。高層ビルとは対照的な、横に長い建物です。中に入ると、美術館の中心に段々があり、これを見るとオルセー美術館を思い出しました。

ここは、現代美術を中心とした、話題の企画展で高い評価を得ています。横浜トリエンナーレでも有名です。収蔵するコレクションには、モローの”岩の上の女神”やセザンヌの”縞模様の服を着たセザンヌ夫人”があるそうですが、私はまだ見ていません。写真のコレクションも充実しています。

ここには、おしゃれなフレンチのレストランもあります。
思い出の美術館46:オーストリア工芸美術館MAK(ウィーン、オーストリア)

ウィーンの旧市街の東に、リング通りに沿って市立公園があります。市立公園の北の端の道路を渡ったところに、オーストリア工芸美術館があります。れんが色の重厚な建物です。

ここには、アール・デコの先駆となったデザイン集団、ウィーン工房の作品が展示されています。ウィーン工房は、ヨーゼフ・ホフマンとコロマン・モーザーによって、1903年に設立されたデザイン工房です。家具、陶器、金属器、テキスタイルなど、多くの分野で優れたデザインを提供してきました。イギリスのマッキントッシュを評価したことでも知られています。

この美術館の主なコレクションは、ホフマンの椅子、茶器、モーザーの象牙細工の箪笥などです。ココシュカの絵葉書もあります。また、クリムトの、ストックレー邸壁画の原図”生命の木”や、マッキントッシュの夫人であるマーガレット・マグドナルドのレリーフもありました。

この他には、ビーダーマイヤー時代のウィーンのデザインや、東洋美術の展示もありました。

ここの隣には、工芸美術大学があります。また、ここから少し歩くと、アール・ヌーボーからアール・デコへの移行期の建築であるオットー・ワーグナーの郵便貯金局があります。
思い出の美術館47:北海道立旭川美術館(旭川)

旭川駅前から買い物公園をまっすぐ進んで、七条通りで左折すると、常磐公園に出ます。公園の芝生を歩いて行くと、北海道立旭川美術館が見えて来ます。

ここには、旭川出身、または、旭川にゆかりのある作家の作品が収蔵されています。難波田龍起、砂沢ビッキ(彫刻)、阿部貞夫(油絵)などの作品があります。

ここは、どちらかと言うと、企画展中心の美術館です。私達が以前に行ったときは、明治初期の洋画の展覧会をやっていました。高橋由一の”鮭図”を始めとして、五姓田義松、山下りんなどの作品がありました。高橋由一の猫の絵が、小品ながら印象に残りました。

帰りには、買い物公園の西山軒で旭川ラーメンを食べました。
思い出の美術館48:安曇野ちひろ美術館(安曇野、長野)

碌山美術館のある穂高町の北にある松川村に、安曇野ちひろ美術館があります。公園のような広大な敷地の中に立っています。まわりには、池と芝生があり、数字の描いてある不思議なオブジェが置いてあります。

ここには、絵本作家のいわさきちひろの若いころからの作品が展示してあります。”ことりのくるひ”などの多くの絵本で知られるちひろは、一目で彼女の絵とわかる、独特の子供たちを描きました。ここで、これらの絵本の原画を見ることができます。また、彼女のなにげない鉛筆風景スケッチも展示してあり、その達者なのには脱帽します。彼女のアトリエも館内に再現されています。

彼女はまた、ベトナム戦争を題材とした絵本”戦火の中のこどもたち”に見られるように、反戦の意志を貫きました。

それにしても、たくさんのバスが来ていて、子供連れで混んでいたのにはおどろきました。鑑賞のあとに、カフェテリアで北アルプスの山を眺めながら、お茶をしました。
思い出の美術館49:シャガール美術館(ニース、フランス)

ニース駅から東に進んで、シミエ通りを上って行くと、鉄道のトンネルの上を越えて行きます。坂を上り切ったところに、シャガール美術館があります。ラベンダーのある庭の向こうに白いモダニズム建築が見えます。この美術館は、アンドレ・マルローの尽力により、シャガールのために建てられたものです。

ここでは、”愛の画家”シャガールとは違った、宗教画家としてのシャガールを見ることができます。”聖書のメッセージ”という一連の絵があります。ユダヤ人である彼が、旧約聖書の、アダムとイブの物語、ノアの物語やモーゼの物語などを絵にしました。

美術館の奥のホールには、美しい青いステンドグラスがあります。ここで、コンサートをやったりするのでしょうか。

シミエ通りを下ってさらにずっと南に行くと、ニースの旧市街に出ます。まがりくねった細い道を歩きながらいろいろな店を見て回るのも楽しみです。
思い出の美術館50:ブリジストン美術館(京橋、東京)

東京駅の八重洲口を出て、八重洲通りをまっすぐ行くと、ブリジストンのビルがあります。あるいは、銀座から中央通りを北に向かって歩いて行くと、八重洲通りにぶつかったところにこのビルがあります。ここの二階にブリジストン美術館があります。

ここは、ブリジストンの石橋正二郎氏のコレクションを中心としたすぐれたコレクションを持っており、常設展だけでも十分楽しめます。その中心となるのは、印象派以降のヨーロッパ近代絵画です。

モネの”睡蓮”、ルノアールの”すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢”、ピカソの”腕を組んですわるサルタンバンク”、セザンヌの”サント・ヴィクトワール山とシャトー・ノワール”、ルオーの”郊外のキリスト”などが有名です。

ちなみに、この前テレビで、ピカソのサルタンバンクの隣には、かつて女性が描かれていたことが発見されたというのをやっていました。

エジプトやギリシャ美術の部屋もあります。西の大原美術館とならぶ、コレクションの質の高さです。

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