思い出の美術館31 - 40

思い出の美術館31:ウンターリンデン美術館(コルマール、フランス)

パリ東駅から、特急に乗ってフランス東部の都市、ストラスブールに行き、ここで電車を乗り換えて、南に向かうと、アルザスの古都、コルマールに着きます。ここは、アルザス特有の木骨組みの家が立ち並ぶ、おとぎ話の世界のような町です。観光の中心は、プチット・ヴニーズすなわち小ベニスと呼ばれる、川辺の家並みです。

コルマール市庁舎からちょっと行ったところにあるのが、中世美術の宝庫、ウンターリンデン美術館です。この建物は、中世の修道院を転用したものです。修道院建築の特徴は、正方形の庭と、それを取り囲む回廊です。修道士は、この回廊を巡りながら瞑想しました。美術館に入ると、私達も修道士のように、回廊にそって各展示室を見て行くことになります。

中世の生活用具や宗教用具を見て回った後、修道院付属の礼拝堂に入ります。ここにあるのが、この美術館を世界的に有名にしている大作です。グリューネヴァルトのイッセンハイム祭壇画です。まず圧倒されるのは、その大きさです。キリストの磔刑像が視界いっぱいに広がります。このキリスト像はなまなましい傷跡に覆われています。中世初期のキリスト像は王者のようでしたが、ここに始めて苦悩するキリスト像が生まれました。
思い出の美術館32:旭川市彫刻美術館(旭川)

旭川駅からバスに乗って、旭川市郊外を自衛隊駐屯地を越えて北に行くと、旭川市彫刻美術館があります。この白亜の洋館は、明治35年に建てられた旧旭川皆行社(陸軍の親睦団体)を利用したものです。入り口部分の丸いテラスが特徴的です。

ここには、旭川にゆかりのある彫刻家、中原悌二郎の作品が収蔵されています。中原は始め画家をめざしていましたが、荻原守衛の影響を受けて彫刻に転じました。彼の作品としては、”若きカフカス人”、”老人”などが展示されています。ロダンの影響が感じられるように思いました。この他に、荻原守衛の作品”坑夫”もありました。

ここには、ちょっとした喫茶コーナーもあります。さらに、旭川市内のあちこちにある野外彫刻の案内図も置いてありました。ところで、美術館のとなりにある不思議な小さな塔は何なんでしょうか。
思い出の美術館33:サントリーミュージアム天保山(大阪)

大阪の新交通、ニュートラムに乗って、大坂港駅で降りると、大坂のウォーターフロントの天保山です。少し歩くと、海沿いにすりばち状のガラス張りの建物が見えてきます。これが、サントリーミュージアム天保山です。

ここには、ロートレックやミュシャなどのポスターのコレクションがあるそうですが、常設展はありません。企画展中心の展示になります。以前に行ったときには、イギリス、スコットランドのデザイナー、マッキントッシュの展覧会をやっていました。有名なハイバック・チェアや建築デザインが展示されていました。特に印象に残ったのは、マッキントッシュの水彩風景画です。彼は晩年に南フランスに住んで、風景画を描きました。

ここでは、やはり、アール・ヌーボーからアール・デコ期のデザイン関係の企画展が多いような気がします。

残念ながら、ここは数年前に閉館してしまいました。
思い出の美術館34:クリュニー美術館(カルチェ・ラタン、パリ)

シテ島からサン・ミッシェル橋を渡って、サン・ミッシェル通りを下って行くと、古代の遺跡のようなものが見えてきます。ここは、ローマ時代の共同浴場跡だそうです。この隣にあるのがクリュニー美術館、すなわち中世美術館です。この建物は、15世紀の貴族の邸宅を利用したものです。

ここには、中世の絵画、彫刻、家具、ステンドグラス、工芸品などが展示されています。2階の円くて暗い部屋に展示されているのが、この美術館を代表する作品である、”一角獣と貴婦人”のタペストリーです。これは、6枚1組みの連作で、一角獣が貴婦人になついてる場面が描かれています。その意味については、いろいろな解釈がありますが、5枚の絵はそれぞれ五感を表し、残りの1枚は五感を超越した信仰を表すようです。これは、結婚式のお祝として作られたと考えられています。

このカルチェ・ラタンのあたりは、本屋が多いので、散歩しながらのぞいてみました。
思い出の美術館35:北の大地美術館(坂本直行記念館)(十勝、北海道)

帯広の南に広がる十勝平野の中央、田中義剛の花畑牧場の近くに中札内美術村があります。ここには、複数の美術館と、レストラン、ギフトショップなどがあります。ここの美術館の一つが、北の大地美術館です。

かしわの林の中を、枯れ葉を踏みながら歩いて行くと、牛舎をモデルにしたという大きな木造建築があります。これが北の大地美術館です。ここには、北海道出身の画家の坂本直行の作品が展示されています。

坂本直行と言えば、北海道で有名なお菓子メーカーの六花亭の包装紙の絵で知られています。彼は北大農学部を卒業した後、十勝で農業をしながら絵を描きました。北海道の植物や風景を好んで描きました。素朴な花の絵が印象に残ります。

帰りには、レストランで十勝の野菜のカレーを食べました。
思い出の美術館36:府中市美術館(府中、東京)

京王線の府中駅を降りて、十数分歩いて行くと府中の森公園があります。この公園の中をつっきって行くと府中市美術館があります。東京の美術館の中では、交通の便が悪いほうですが、面白い企画展をやっていたので、出かけてみました。

この美術館は、明治の洋画を中心としたコレクションを持っています。代表的な作品としては、司馬江漢の”相州江之島児淵図”、五姓田義松の”パリの風景”などがあります。この他に、青木繁、松本竣介、村山槐多などの作品もあるそうです。これらの作品の一部は常設展に展示されています。

だいぶ前に行ったときには、企画展として、ウイーン分離派展をやっていました。クリムトやシーレのちょっと珍しい風景画や花の絵を見ました。その後、行けなかったのですが、ウイーン工房の企画展もやっていました。どうも、ここは、世紀末美術関係に強いような気がしますので、私も注目しています。
思い出の美術館37:リョスカ工芸美術館(ヨーテボリ、スウェーデン)

北欧といえば、すぐれたデザインが有名です。北欧デザインの歴史を見せてくれる面白い美術館があります。スウェーデン南部のボルボで有名な都市、ヨーテボリにある、リョスカ工芸美術館です。

ヨーテボリ中央駅から少し西に歩くと、グスタフ・アドルフ広場に出ます。そこから、ヨーテボリの中心であるクングス・ポーツ通りを南東に下って行くと、リョスカ工芸美術館があります。19世紀風の重厚な建築です。

ここには、バロック時代からのスウェーデンやヨーロッパ各地の工芸作品が展示されています。家具、銀器、陶器、ガラス器、織物などの各種の工芸品があります。上のほうの階には、日本や中国の仏像や工芸品もありました。1階には、現代の北欧のデザインが展示されています。

ここのギフトショップは充実しています。現代の北欧デザインの製品をいろいろと売っています。ギフトショップの隣には、レストランがあります。雑穀系のヘルシー・メニューのそろった、ちょっと変わったレストランでした。
思い出の美術館38:宮城県美術館(仙台)

仙台市の中心を通る広瀬通を西に行くと、仲の瀬橋で広瀬川を越えます。通りをさらに進んで行くと、高校の隣に、宮城県美術館が見えて来ます。美術館の前庭には、ヘンリー・ムーアの彫刻があります。

この美術館の目玉は、カンディンスキーとクレーです。カンディンスキーは”商人たちの到着”、クレーは”アフロディテの解剖学”や”パレッシオ・ヌア”が有名です。このほかにシーレの作品もあります。なかなか充実していますね。”商人たちの到着”は、カンディンスキーが抽象に至る前の具象作品で、ちょっと彼の作品としては意外なものです。

日本人画家としては、高橋由一、松本竣介、速水御舟、萬鉄五郎の作品があります。松本竣介の”画家の像”が有名です。

本館の隣には、佐藤忠良記念館があって、彼の彫刻作品を展示しています。
思い出の美術館39:徳川美術館(名古屋)

思い出の美術館5の五島美術館で述べましたように、源氏物語絵巻の一部は五島美術館にあります。そして、この絵巻の残りの大半の巻があるのが、名古屋の徳川美術館です。名古屋駅前からバスに乗って、徳川園で降りてちょっと歩くと、この美術館があります。

この美術館は、尾張徳川家の財宝を所蔵しています。大大名の生活に触れることができます。主な展示は、甲冑、刀剣などの武具、豪華な家具、生活用具などです。茶道具にも優品があります。この他に能面、能装束も展示しています。美術館内には茶室もあります。

ところで、お目当ての源氏物語絵巻ですが、これは残念ながらレプリカしか置いてありませんでした。五島美術館でも、いつも展示してあるわけではないですから、これは当然といえば当然です。
思い出の美術館40:オーストリア・ギャラリー(ウィーン、オーストリア)

ウィーンの旧市街、リングの南に、広大なヴェルヴェデーレ宮殿があります。これは、かつて貴族のプリンツ・オイゲン公の夏の離宮でした。重厚なバロック様式の宮殿です。宮殿の前は、広大な幾何学式庭園になっていて、はるかかなたにシュテファン寺院の搭が見えます。

ここは、現在は、ウィーンの19世紀末から20世紀の美術を展示する美術館になっています。ウィーン分離派とそれに続く画家たちの作品が展示されています。有名なところでは、クリムトの”キス”、”ユーディット”、”水蛇”、シーレの”家族”があります。クリムトに関しては、ここが一番充実しているのではないでしょうか。このほかに、ココシュカやシュトゥックの作品もあります。

私達が以前に行ったときには、企画展として、モネの作品の展示をしていました。

ここからそう遠くないところには、オットー・ワーグナーのアール・ヌーボー建築、マジョリカ・ハウスがあります。

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