思い出の美術館21 - 30

思い出の美術館21:札幌彫刻美術館(札幌)

札幌市西部の高級住宅地、宮の森の坂道を上って行くと、前庭に彫刻のある小さい美術館が見えてきます。これが札幌彫刻美術館です。

ここには、札幌出身の彫刻家である、本郷新の作品が展示されています。本郷新と言えば、大通り公園の”泉の像”のような公共彫刻で知られています。広島の平和記念公園にある”嵐の中の母子像”も彼の作品でした。この美術館には、”わだつみのこえ”などの主要作品が収蔵されています。私は、彫刻家のデッサンがすばらしいのに驚きました。

美術館隣の本郷新の旧アトリエも、本郷新記念館として公開されています。ブロンズ彫刻の原形の石こう像があります。公園でよく見る彫刻の原形もあります。近くで見ると意外な大きさです。
思い出の美術館22:ピカソ美術館(マレ地区、パリ)

セーヌ右岸のマレ地区は、かつて貴族が住んでいた歴史的地区です。バスチーユのそばのヴォージュ広場を見た後、北西に向かってしばらく歩くと、ピカソ美術館があります。ここは、かつて貴族の館であった立派な建物を利用したものです。

世界中にピカソの美術館は数多くありますが、ここは最も収蔵作品数が多いのではないでしょうか。この厖大な作品は、ピカソの遺族が相続税代わりに、フランス国家に納入したものだそうです。初期の青の時代から始まって、ピカソの全時代の作品があります。

代表的な収蔵作品は、”青の時代の自画像”、”画家とモデル”、”抱擁”などです。作品の数と多様性には、圧倒されます。我々が考えつきそうなアイデアは全て、ピカソがすでにやっているんですね。
思い出の美術館23:千葉県立美術館(千葉市)

千葉駅からモノレールに乗って、千葉みなと駅で下りて、海のほうに歩いて行くと、広い敷地の中に立つ千葉県立美術館が見えて来ます。赤レンガ風の壁のポストモダン建築です。

バルビゾン派のミレーの作品や、浅井忠を中心とする明治の洋画のコレクションがあります。代表的な作品は、ミレーの”垣根に沿って草を食む羊”、浅井忠の”農婦”などです。この前行った時には、明治の洋画の展覧会をやっていました。

浅井忠は千葉県の佐倉出身の明治初期の画家です。バルビゾン派の影響を受けて、千葉の農村風景の美しい絵を描きました。その後、京都に移って、京都画壇の設立に尽力しました。彼の作品の多くを、ここで見ることができました。

ただ、美術館のまわりにお店が何もなくて、歩いている人も少ないのが、ちょっとさみしい感じです。
思い出の美術館24:東京国立近代美術館(竹橋、東京)

東西線の竹橋駅をおりて、お掘を渡ると、白い大きなモダニズム建築の東京国立近代美術館があります。ここには、明治から現代までの、洋画、日本画、彫刻の優品が展示されています。

この前は、特別展の藤田嗣治展を見にいきました。フジタの全生涯を展望するという意味では、日本で始めての展覧会です。よく知られた、フジタの裸婦と猫の絵ももちろんすばらしいのですが、今まで知られていない絵も注目されます。パリ滞在の初期のころのキュービズムの絵も興味深いです。さらに、”アッツ島玉砕”などの戦争画は衝撃的です。

近代美術館は、常設展も充実しています。安井曾太郎の”金蓉”、岸田劉生の”麗子五歳像”、中村つねの”エロシェンコ氏像”などが有名です。日本の近代絵画の歴史をたどることができます。

ここには、良いレストランがあるようですが、残念ながら、まだ行ったことがありません。
思い出の美術館25:ウイリアム・モリス・ギャラリー(ロンドン)

ロンドンの地下鉄ヴィクトリア線の北の終点、ウォルサムストー・セントラルで降りると、ロンドン北部の郊外、ウォルサムストーに出ます。ここからバスでちょっと行ったところに、ウイリアム・モリス・ギャラリーがあります。このれんが造りの建物は、モリスがオックスフォード大学に入る前に住んでいたところです。

ここには、モリスの壁紙、テキスタイル、ケルムスコット・プレスの本”チョーサー作品集”などが展示されています。バーンジョーンズのデッサンもありました。ロンドンの美術館の例にもれず、ここも無料です。先生に連れられた子供達が、見学に来ていました。

この周辺は、インド系の人が多く住んでいる地区です。帰りにわりとおいしいカレーを食べる事ができました。
思い出の美術館26:木田金次郎美術館(岩内、北海道)

積丹半島の西にある、ちょっとさびしい港町が岩内市です。札幌からは、直通バスで行く事ができます。バスターミナルの近くにある、ちょっと変わった建物が、木田金次郎美術館です。

木田金次郎は岩内に生まれ、漁業を続けながら、岩内周辺の風景を描きました。その後、有島武郎と出会ったことが、彼の才能を開花させました。有島は彼をモデルとして、小説”生まれ出づる悩み”を書きました。

ところが、岩内の大火によって、彼の作品の大半が焼けてしまいました。その後、それを補うように、彼は精力的に描きました。彼が好んで描いたのは、岩内周辺の海景、ニセコの風景などです。この美術館では、彼の主要な作品を見る事ができます。激しいタッチが印象的です。

この小さな美術館には、ちいさなティールームもあります。
思い出の美術館27:竹久夢二伊香保記念館(伊香保、群馬県)

伊香保温泉の中心部から、渋川のほうにちょっと行ったところに、竹久夢二伊香保記念館があります。土蔵造りの趣のある建物です。伊香保は、夢二ゆかりの土地で、彼は近くの榛名湖畔にアトリエを造りました。

ここには、夢二の作品の中でも、特にデザイン関係の作品が充実しているように思いました。夢二の絵葉書、手ぬぐい、浴衣のデザイン、本の装丁にはすばらしいものがあります。肉筆画としては、”榛名山賦”が有名です。

私にとって特に興味深かったのは、夢二の鉛筆スケッチです。市井の人々のなにげない表情をうまくとらえています。

記念館のとなりには、いろいろなオルゴールを展示している展示館がありました。帰りには、水沢観音に寄って、門前の水沢うどんを楽しみました。
思い出の美術館28:ドラクロワ美術館(サン・ジェルマン、パリ)

セーヌ左岸の、サン・ジェルマン・デ・プレ教会の裏の道に入って行くと、小さな美術館、ドラクロワ美術館があります。ここは、17世紀に建てられた建物で、ドラクロワが死の直前まで、アトリエとして使っていた所です。

ドラクロワ美術館とは言っても、ここには、ドラクロワの大作はありません。作品としては、”砂漠のマグダラのマリア”等があるくらいです。その他に、多くのデッサンがありますので、私としては満足できます。彼の生活をしのばせるものとしては、パレットや手紙類が展示されています。

美術館の中庭も、なかなか落ち着いた感じの良いところです。にぎやかなサン・ジェルマンの近くだとは思えません。
思い出の美術館29:東北福祉大学芹沢けい介美術工芸館(仙台)

仙台駅前からバスに乗って30分ほど行くと、市北部の北山の近くにある東北福祉大学に着きます。東北福祉大学の建物の中にあるのが、芹沢けい介美術工芸館です(「けい介」の「けい」は金へんに圭)。

芹沢けい介は柳宗悦の民芸の同人の一人で、有名な染色家です。私には、彼の染めた雑誌”民芸”の表紙がまず思い浮かびます。彼は、民芸の”型染”を発展、洗練させ、独自の作品を作りました。

この美術館には、有名な”風の字ののれん”を始めとする、芹沢けい介の作品が展示されています。華麗な着物が印象的でした。また、意外なことに、彼の作ったステンドグラスもありました。この他に、企画展もおこなっており、私達が行ったときには、ちょうど、アイヌの工芸を展示していました。

美術館の中にはちょっとした喫茶コーナーもあります。仙台市街をながめながら、コーヒーを飲みました。
思い出の美術館30:東京芸術大学大学美術館(上野)

上野の国立博物館の前の道を谷中に向かって歩くと、東京芸術大学の前に出ます。門を入ってすぐのところにあるのが、東京芸術大学大学美術館です。

ここには、明治から昭和の画家の作品が所蔵されています。高橋由一の”鮭”、上村松園の”序の舞”などが有名です。中でも、歴代の芸大卒業生の卒業製作の自画像が注目されます。フジタの若き日の自画像も、ここに収蔵されています。

以前に行った時には、明治の油画の展示をやっていて、教師であったフォンタネージの風景画もありました。

芸大前をさらに北に向かって歩くと、谷中に出ます。このあたりを散歩するのも楽しみです。桃林堂の和菓子や、嵯峨乃家のおかきを買って帰りました。

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