思い出の美術館11 - 20

思い出の美術館11:笠間日動美術館(笠間、茨城)

筑波山の北にある笠間市は、陶芸の里として、また、笠間稲荷で有名です。笠間稲荷の東側の道に入って行くと、笠間日動美術館があります。ここは、日動画廊のオーナーである長谷川仁が設立した個人美術館です。個人美術館とは言っても、3棟の展示館よりなる立派な美術館です。

ここには、日本の近代洋画を中心とした優れたコレクションがあります。岸田劉生の麗子のデッサンや、藤田嗣治のデッサン、佐伯祐三の自画像が印象に残りました。変わったところでは、有名画家のパレットのコレクションがあります。展示館の間の庭園には、彫刻作品が展示されています。

帰りには、窯場を回って、陶芸作品を見て回るのも楽しみです。そのあと、笠間駅前の”グリュイエール”でお茶をしました。
思い出の美術館12:ひろしま美術館(広島)

広島県庁のななめ向かいに、緑に囲まれたひろしま美術館があります。白い円筒形の展示棟が特徴です。

比較的歴史の浅い美術館ですが、収蔵品の質の高さに驚かされます。ゴッホの”ドービニーの庭”、マネの”灰色の羽根帽子の婦人”、フジタの”受胎告知”を始めとする、印象派からエコール・ド・パリの優品がそろっています。

日本人の画家では、浅井忠や佐伯祐三などの作品が所蔵されています。

札幌の美術館を全部合わせても、この美術館1館にかなわないという感じで、札幌の人間としては、ちょっと嫉妬してしまいます。
思い出の美術館13:マチス美術館(ニース、フランス)

パリから飛行機で約1時間で、コート・ダジュールの中心都市、ニースに着きます。ニース駅の北東2kmほど行ったところの岡の上にマチス美術館があります。17世紀に建てられたという地中海風のピンクの建物で、かつてはイタリア人の別荘でした。そばには、ローマ時代の円形競技場の遺跡があります。

ここには、晩年の切り紙作品”ジャズ”シリーズ、”波”、”青のヌード”など、マチスの後半期の作品が展示されています。マチスは晩年には体力が低下して、絵の具を使うことができなくて、切り紙を使う事にしたそうです。大きな原色の色面が踊っています。

帰りは、豪邸の並ぶシミエ大通りを下って、町の中心へ歩いて行きました。ニースの海岸は、このさらに南になります。
思い出の美術館14:神奈川県立近代美術館(鎌倉)

鎌倉の鶴岡八幡宮の鳥居をくぐってしばらく行くと、左の垣根の切れ目に小さな入り口があります。ここに入ると、すぐ前に神奈川県立近代美術館があります。もっとも、こちらは裏口で、正面は反対側なのですが。

美術館の建物は、コルビジェの弟子だった坂倉準三の設計になります。そういえば、コルビジェのサヴォワ邸に少し似ているような。

ここは、昭和初期の日本の画家の1級の作品を収蔵しています。松本竣介の”立てる像”、シュール・レアリスムの古賀春江の”窓外の化粧”などが有名です。この前行ったときには、藤田嗣治の作品もありました。この他に明治期の版画の展示もしていました。

1階に下りて、源平池を眺めると、鴨が泳いでいました。
思い出の美術館15:札幌芸術の森美術館(札幌)

札幌から南に、真駒内川に沿う道を南下して行くと、複合文化施設の”芸術の森”があります。ここには、野外の彫刻美術館や、PMFのピクニック・コンサートがおこなわれる野外ステージなどがあります。そして、ここのもう1つの中心的施設が、芸術の森美術館です。

この美術館は、企画展中心の美術館で、現代美術の企画展を重視しているようです。これまでの展覧会で、特に印象に残ったのは、草間弥生展とイサム・ノグチ展です。

草間弥生展では、美術館前の池を有効に使って、彼女のトレードマークである水玉のオブジェを浮かべた展示をしていました。若い人達がずいぶん来ていました。

イサム・ノグチ展でも、巨大なみかげ石の彫刻”エナジー・ヴォイド”を池の中央に立てていました。ここの学芸員さんは、展示方法に工夫をしています。

美術館の中には、小さいながら感じの良いカフェテリアもあります。
思い出の美術館16:ヴィクトリア&アルバート美術館(ロンドン)

ロンドンのケンジントン・ガーデンの南のアレキサンドラ・ゲートを出て南下すると、右側にヴィクトリア&アルバート美術館が見えて来ます。ここは、主にデザインと工芸の美術を展示する美術館です。

ここの展示品はあまりにも多いので、ウイリアム・モリスとそのグループの作品だけを見る事にしました。近代デザインの父であるウイリアム・モリスは、私達の最も好きな芸術家の一人です。

モリスの壁紙”アカンサス”、ステンドグラス、タペストリー”果樹園”、ケルムスコット・プレスの本などが、展示されています。中でも圧巻なのは、グリーン・ダイニングルームです。ここは、もともとこの美術館の食堂だったところで、モリス商会によって内装のデザインがおこなわれました。

私達が訪れた時には、ちょうど、企画展としてアール・ヌーボーの総合的な展覧会をやっていました。この展覧会はその数年後に日本にやって来ましたので、東京都美術館でまた見る事ができました。
思い出の美術館17:岩手県立美術館(盛岡、岩手)

盛岡は、明治時代の建物の残る、感じの良い町です。盛岡駅前から、スケート場行のバスに乗って郊外に出ると、岩手県立美術館があります。美術館の前面に広い水面のある、ポストモダンな建物です。

ここには、岩手出身の画家である、萬鉄五郎や松本竣介の良いコレクションがあります。松本竣介の”Y市の橋”が有名です。この他に、彫刻家の船越桂のお父さんの彫刻家、船越保武のコレクションもあります。

りっぱな美術館なのですけれど、観客が少ないのが残念でした。広い展示室の中に私一人しかいなくて、自分の足音だけを聞きながら見て回りました。
思い出の美術館18:東京国立近代美術館工芸館(北の丸、東京)

東西線の竹橋駅で下りて、近代美術館の前を通り過ぎて、北の丸公園の中を歩いて行くと、明治時代のゴシック風れんが造りの建物があります。これが、東京国立近代美術館の別館の工芸館です。この建物は、旧近衛師団指令部を転用したものだそうです。

ここには、明治から昭和初期の陶芸、漆器、ガラス器等の工芸作品が収蔵されています。以前に行ったときには、日本のアール・ヌーボーについての展覧会をやっていました。藤島武二の”みだれ髪”の装丁や、”明星”の表紙、橋口五葉の装丁が印象に残りました。

美術館脇の庭園もなかなかきれいで、散策が楽しめます。
思い出の美術館19:アルテピナコテーク(ミュンヘン、ドイツ)

ドイツ南部のバイエルン州の中心都市、ミュンヘンは、歴史ある美しい都市です。ミュンヘン中央駅から北に1kmちょっと行くと、世界有数の美術館であるアルテピナコテークがあります。

私達が行った時(10年前くらい)には、この美術館は改装工事中で、となりの現代美術館、ノイエピナコテークを間借りして展示が行われていました。現在は、もう工事は終わっています。

ここには、バイエルン王家によって収集された一流の美術品が展示されています。中心になるのは、私の好きなアルブレヒト・デューラーの作品です。”4人の使徒”、”キリストに似せた自画像”が有名です。

この他に、ラファエロ、レンブラント、チチアーノ、クラナッハ、ムリリョの優品が充実しています。工事中なので、展示作品は少なくなっているはずなのですが、それでもひと回りすると、すっかり疲れてしまいました。

この日のミュンヘンは、雨模様で寒かったので、ちょっと残念でした。
思い出の美術館20:碌山美術館(安曇野、長野)

大糸線の穂高駅のちょっと北の踏み切りを渡ると、緑につつまれた碌山美術館があります。どことなく教会を思わせる、煉瓦造りの印象的な建物です。この時は夏だったので、ツタの緑がきれいでした。

ここには、明治の天才彫刻家、萩原碌山の彫刻作品が展示されています。”女”、”文覚”などが有名です。相馬黒光をモデルにしたという”女”は意外に小さいのにびっくり。

碌山、荻原守衛は、この穂高で生まれました。渡米して絵を学んだ後、フランスに留学して、ロダンの教えを受けました。その後、相馬黒光の中村屋サロンに属して、その芸術を深化させました。

この他に展示館が2つあり、高村光太郎など、碌山の周辺の彫刻家や画家の作品を展示していました。

この後、近くで、名物の信州そばを食べました。安曇野一帯の道祖神めぐりも楽しみです。

前ページ/previousHOME次ページ/next