思い出の美術館171 - 180

思い出の美術館171:江戸東京たてもの園(武蔵小金井、東京)

JR中央線の武蔵小金井駅からバスに乗って数分で、小金井公園に着きます。私が行った時には(2017年4月)ちょうど桜が咲いていました。この公園の一角にあるのが、歴史的建造物を集めた、江戸東京たてもの園です。

主に民家よりなる西ゾーン、大型の邸宅の中央ゾーン、商店よりなる東ゾーンの3つのゾーンよりなります。現在、30棟の建物が移築、保存されています。

私が注目したのは、コルビュジェの弟子の前川國男の自邸です。全体を1つの霧妻屋根に収めており、大きな窓の開放的なデザインです。中に入ると、吹き抜けの居間が印象的です。

この他に、高橋是清邸、草葺の吉野家、蔵造りの小寺醤油店などが、印象に残りました。デ・ラランデ邸には、カフェがあります。また、園内にはうどんのお店”蔵”があり、そこで”武蔵野うどん”というのを食べてきました。
思い出の美術館172:ちひろ美術館・東京(上井草、東京)

西武新宿線の上井草駅を出て、北東方向に歩いて行くと、住宅街の中にちょっとしゃれた建物があります。これが、いわさき・ちひろの自宅跡に建てられた、ちひろ美術館・東京です。安曇野ちひろ美術館(思い出の美術館48)の姉妹館です。

小規模ながら、4つの展示室を持っています。私が行ったときには(2017年4月)”ちひろとアンデルセン”という展示をしていました。ちひろが描いた、アンデルセン童話の挿絵の原画の展示です。”人魚姫”、”赤い靴”、”裸の王様”など、おなじみの童話です。私も子供のころ見た覚えがあります。

美術館の一角には、ちひろのアトリエが復元・保存してあります。彼女が使った絵の具、絵の具皿、彼女の独特のファッションなども、興味深いです。

館内にはカフェもあって、地元の人たちが集っていました。
思い出の美術館173:すみだ北斎美術館(両国、東京)

JR総武線の両国駅から”北斎通り”を東に行くと、数分で緑町公園に着きます。そこにある、銀色の”M”のような建物が、すみだ北斎美術館です。2016年に開館したばかりの新しい美術館です。

ここでは、葛飾北斎が墨田区に住んでいたことにちなんで、彼の作品を、そして彼と墨田区の関わりについて展示しています。

私が行ったとき(2017年4月)には、ここの収蔵品の核をなす、ピーター・モース・コレクションの特別展をしていました。主な北斎作品は、”新版浮絵忠臣蔵”、”富嶽三十六景、武州玉川”、”百物語、こはだ小平次”、”巳待”、”略画早指南”、”北斎漫画”など。

解説が、絵とは別に、タッチパネルになっているのは良い工夫です。これだと、解説を読む人による渋滞が起こらないでしょう。

ただし、”富嶽三十六景”が2点しか出ていなかったのは、ちょっと残念。そして、北斎のロボットはちょっと気持ち悪かったですね。

ちなみに、この独特の建築は、人気の建築家、妹島和世氏の設計によるものだそうです。
思い出の美術館174:江戸東京博物館(両国、東京)

JR両国駅の北に接して、両国国技館の東に、空中に浮かんだような感じの建物があります。これが、江戸から明治にかけての東京の歴史を展示する、江戸東京博物館です。

このビルの5階と6階が、広大な展示室となっています。内部は、江戸城、江戸の暮らし、江戸の美、文明開化、関東大震災、空襲などのゾーンに分かれています。

実物史料もありますが、あまり歴史的価値の高いものとは言えないようです。そのかわり、レプリカや大掛かりな復元模型が多くてちょっとがっかり。それでも、外国人のお客さんたちは、喜んでいました。博物館というより、テーマパークに近いかな。

展示室の一角でやっていた、”戦時下東京のこどもたち”という企画展は、見応えがありました。
思い出の美術館175:黒田記念館(上野、東京)

上野公園の国立博物館のとなり、あるいは芸大の向かい側に、黄褐色の重厚な建物があります。これが、画家、黒田清輝の主要作品を展示する、黒田記念館です。

黒田清輝は、法律家としてフランス留学中に絵画に目覚め、フランス近代絵画を学んで、日本に導入しました。その後の日本洋画の方向を決めたと言えます。

主な展示作品は、”智・感・情”、”湖畔”、”読書”、”舞妓”、”花野”など、代表作品が並んでいます。特に、”智・感・情”は、3体の裸婦像で、1900年のパリ万博に出品され、銀賞を受賞しています。

”湖畔”は、以前に芸大美術館での展覧会で見逃したので、今回、やっと見ることができました。これだけ充実しているのに、入館料がただなのには、驚かされます。
思い出の美術館176:チェアーズ・ギャラリー(旭川、北海道)

旭川駅から、駅前の宮下通を東に300mほど歩くと、”蔵囲夢”という、古いレンガ倉庫を利用した商業施設があります。その一角にあるのが、デザイナーズチェアを展示する”チェアーズ・ギャラリー”です。

ここでは、東海大学名誉教授の織田憲嗣氏の椅子コレクションを展示しています。私たちが行ったときには(2017年夏)、”北欧のグラフィックデザイン展”という題で、北欧の家具メーカーのポスターを中心とする特別展をしていました。

椅子としては、ヤコブセンのセブンチェア、ウェグナーのザ・チェア、ピーコックチェア、ケアホルムのハンモックチェアなどが、ありました。

ポスターで面白かったのは、モブラー社のもので、ウェグナーの椅子にすわるケネディやオバマの写真を利用した作品です

同じ敷地にあった”大雪地ビール館”は、この日は残念ながら休みでした。
思い出の美術館177:ホキ美術館(土気、千葉)

JR外房線の土気(とけ)の駅で降りると、新興住宅街が広がっています。地中海風の家が並ぶ中を行くと、昭和の森公園を背景として、カーブした白い直方体の建築が見えてきます。これが、写実絵画専門のホキ美術館です。

ここには、野田弘志、森本草介など、日本を代表する写実絵画家の作品、約400展が収集・展示されています。私が行ったときには、主な展示作品は、森本草介:”アリエー川の流れ”、”横になるポーズ”、野田弘志:”摩周湖・夏天”、”崇高なるもの”、五味文彦:”樹影が刻まれる時”などでした。

これらの写実画は、一口に言えば写真のように描いた作品ですが、不思議なことに写真とは違った迫真性があります。作家による個性の差も見られます。近づいて見ると、森本氏のようにタッチを残さないものもあれば、あえてタッチを残した作品もあります。技術もあるレベルを超えると、単なる技術を超えた感動があるのですね。
思い出の美術館178:静嘉堂文庫美術館(二子玉川、東京)

田園都市線の二子玉川駅で降りてバスに乗って数分行くと、静嘉堂緑地の東端に着きます。ここから緑地の中のだらだらした坂道を上って行くと、静嘉堂文庫美術館が見えてきます。ここでは、三菱社長の岩崎弥之助が収集した書籍・美術品を収蔵・展示しています。

収蔵品では、曜変天目や平治物語絵巻が有名です。私が行ったときには(2018年3月)歌川国貞展をやっていました。主な展示作品は、”北国五色墨”、”仁木弾正、五代目松本幸四郎”、”卯の花月”、”双筆五十三次”、”今風化粧鏡”など。国貞のような幕末の浮世絵になると、テーマや表現が多彩になってきます。

国貞のコレクションといえば、北海道近代美術館にもありますが、静嘉堂文庫のコレクションもなかなかのものです。窓から見える裏庭には、梅が咲いていました。

この近くには、昔、芭蕉が住んでいた芭蕉庵がありました(深川の芭蕉庵とは別)。
思い出の美術館179:松濤美術館(松濤、東京)

井の頭線の神泉駅を降りて北に数分歩くと、マンション街の狭間に特徴的な曲面を持った建築が見えてきます。これが建築家白井晟一が設計した渋谷区立松濤美術館です。ここには特に独自のコレクションは無いようですが、持ち込みの企画展を行っています。

私が行ったときには(2018年3月)、斎藤茂吉の書画の展覧会をやっていました。茂吉が絵が得意とは、知りませんでした。”蕗の薹図”、”南瓜図”などなかなか上手で、彼の短歌も添えてありました。また、画家の平福百穂とも交流があるらしく、百穂の絵に賛をしたりしていました。

地下では、小学生の絵画展をやっていました。地下の中央にある池と噴水が、印象的な建築です。
思い出の美術館180:国立歴史民俗博物館(佐倉、千葉)

成田の近く、京成の佐倉駅を降りて、西にしばらく歩いていくと、佐倉城跡があります。堀を渡ってカーブする道を上って行くと、国立歴史民俗博物館入口に出ます。ここには、先史時代から近代までの歴史資料が展示されています。

私が行ったときには(2018年3月)、”世界の眼で見る古墳文化”という展示をしていました。それなりに興味深い展示ではあるのですが、展示品の多くがレプリカなのでがっかり。展示の構成も教科書的な通り一遍なもので、突っ込んだところがありません。

地元の佐倉も歴史ある町なのですが、佐倉の歴史についての言及もありません。ハコが立派なのに展示のクオリティが低いというのは、江戸東京博物館を思わせます。

同時に展示していた”和宮ゆかりの雛人形”というのは本物なので、ほっとしました。

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