思い出の美術館161 - 170

思い出の美術館161:平福記念美術館(角館、秋田)

桜で有名な秋田県の角館は、江戸時代の武家屋敷が保存された情緒ある町です。JR角館駅を出て、西に向かい、郵便局のところで右折して、武家屋敷通りに入り、北に向かうと、つきあたりに 平福記念美術館があります。

この美術館は、明治時代の日本画家、平福穂庵・百穂父子を記念したものです。平福百穂は、秋田蘭画の研究をもしていたので、秋田蘭画の作家、小田野直武などの作品も収蔵されています。私の目的は、こちらの秋田蘭画のほうです。百穂は、忘れ去られていた秋田蘭画を、世に知らしめた貢献者です。

私たちが行ったとき(2014年5月)には、ちょうど、竹久夢二展をやっていました。夢二は好きなのですが、もう、あちこちで見ていますので、ざっと流して見て、秋田蘭画のコーナーへ。秋田蘭画は、平賀源内の指導で秋田で生まれた、独特の洋風絵画です。小田野直武の”不忍池図”の模写がでていました。その後、武家屋敷でも、他の直武作品を見ることができました。

帰りには、近くの桧木内川堤で、夢のような桜吹雪の景色を堪能しました。
思い出の美術館162:福岡市美術館(福岡市)

博多から地下鉄で西に行くとすぐ、大濠公園駅に着きます。福岡市民のいこいの場の、大濠公園です。池にそって、南に歩いていくと、 福岡市美術館があります。ここには、現代美術の優れたコレクションがあり、また、福岡に縁のある画家の作品も収蔵しています。

私は、常設展を見てきました。主な展示作品は、デルヴォー”夜の通り”、ダリ”ポルトリガトの聖母”、シャガール”空飛ぶアドラージュ”、ウォーホール”エルヴィス”、イヴ・クライン”人体測定”などです。日本人画家としては、青木繁”秋声”、松本竣介”彫刻と女”などがあります。

そして、何よりもうれしかったのは、フジタの”仰臥裸婦”があったことです。特徴的な”乳白色の肌”の作品で、足元に猫もいます。別室でやっていた、ゲオルグ・グロッスの版画展も見応えがありました。

収蔵作品の質の高さに、びっくりです。しかも、これが200円で見られるというコスト・パフォーマンスの高さにも。

けれども、展示作品リストも無く、絵はがきの種類も少なめでした。これだけの作品が尊重されていないようで、ちょっとかわいそう。
思い出の美術館163:石橋美術館(福岡、久留米)

西鉄福岡駅から、西鉄急行で30分ほどで、久留米駅に着きます。駅からバスに乗って、東に少し行くと、美しい庭園を持つ、石橋文化センターに着きます。

ここには、広大な庭園の中に、数棟の文化施設がありますが、中心になるのは 石橋美術館です。ブリジストンの創業者、石橋正二郎氏のコレクションを中心とする収蔵品が展示されています。久留米出身の画家、青木繁、坂本繁二郎の優れたコレクションがあります。

展示品の目玉は、青木繁の”海の幸”、”わだつみのいろこの宮”の2作品です。この夭折の画家の代表作品で、わざわざここに来て見る価値があります。その他には、坂本繁二郎”帽子を持てる女”、黒田清輝”針仕事”、佐伯祐三”コルドヌリ”、古賀春江”単純な哀話”、藤島武二”青富士”などが、主な展示品です。

そして、ここにもフジタの作品がありました。少女を描いたデッサンの小品ですが、なかなか良い絵です。

ブリジストン美術館からも、コロー、ルソー、ヴラマンクなどの作品が来ていました。

ブリジストン美術館だけでも、たいしたものなのに、ここにも美術館を作ってしまうとは、石橋氏のメセナ活動は、脱帽ものですね。

なお、この美術館は、代表的な作品をブリジストン美術館に移して、”久留米美術館”と名前を変えて再オープンするそうです。ちょっと残念。
思い出の美術館164:九州国立博物館(福岡、太宰府)

西鉄福岡駅から20分ちょっとで、太宰府天満宮で有名な太宰府駅に着きます。駅を出て、人の流れに従って、門前町を行くと、天満宮です。天満宮の手前で門前を右に折れると、 九州国立博物館へ行く、エスカレーターの入り口があります。

エスカレーターを上り、長い動く歩道に乗って行くと、やっと、美術館に着きます。曲面を多用した、未来的な建築です。美術館の入り口に入ってから、展示室に着くまでが、また、長い。途中、誘導の係員が何人もいます。

ここには、縄文、弥生時代から江戸時代までの、日本の歴史を象徴する文化財が、展示されています。この展示は、”アジアとの文化交流”をテーマとしているようです。たとえば、ガンダーラ仏から、中国の仏像、そして日本の仏像までの流れが、示されています。でも、阿修羅像のはでなレプリカは、無くてもよかったかな。

たしかに、弥生時代から古墳時代までの展示は、充実しているようです。しかし、全体的には、二流品のよせあつめという感じが、ぬぐえません。ハコがりっぱなだけに、ちょっと残念です。

帰りには、太宰府名物の、梅が枝餅をいただきました。
思い出の美術館165:HOKUBU記念絵画館(札幌)

札幌地下鉄の東豊線、学園前駅を降りて、北西に少し歩くと、小さな個人美術館、HOKUBU記念絵画館があります。北武グループ会長の、浮世絵や近代版画を中心とするコレクションを、収蔵展示しています。

私が行ったときには(2015年12月)、「キモノといえば日本の…」というテーマで、着物の女性を描いた版画を展示していました。印象に残ったのは、歌麿”夕涼み”、英泉”傾城江戸方格、溜池山王”、夢二”雪の夜の伝説”、小村雪岱”おせん”、石井柏亭”東京十二景、赤さか”、などです。

夢二がたくさん展示されていたのはうれしかったのですが、刷りが新しいのが、ちょっと残念。そして、コーヒーのサービスまであったのには、ちょっと感激しました。
思い出の美術館166:日本民藝館西館(駒場、東京)

日本民藝館(思い出の美術館3)の西館が、近年オープンしたので、行ってみました。この西館は、柳宗悦が自宅として利用していたものです。もとは、栃木県にあった長屋門で、これを発見して購入・移築した経緯は、柳の伝記に面白く書いてあります。

柳の生活を、垣間見ることができます。印象的だったのが、彼の書斎(写真)で、大蔵経が全巻ずらっと並んでいます。Blake関係の本を圧倒しています。彼が、いかに仏教に入れ込んでいたかが分かります。

声楽家であった、妻、兼子の部屋には、ろうそく立てのついた古いピアノがありました。ちなみに、伝記によると、彼女は、この家が気に入らなかったそうです。

このとき(2016年1月)、本館では、「美の法門」展をやっていました。柳の収集した、仏教関係の民藝の展示です。なかでも、木喰仏が、印象に残りました。
思い出の美術館167:中村屋サロン美術館(新宿、東京)

新宿駅東口を出て、新宿通りへ曲がるとすぐ、新宿中村屋の新しいビルがあります。ここの3階にあるのが、中村屋サロン美術館です。中村屋の創業者、相馬愛蔵・黒光夫妻に縁のある画家、彫刻家の作品を、収蔵・展示しています。

特に、黒光氏は、多くの優れた芸術家を後援し、中村屋は一種のサロンのようになっていました。主な収蔵作品は、中村彝:”少女”、”麦藁帽子の自画像”、萩原守衛:”女”、”坑夫”などです。

私が行ったときには(2016年1月)、”新宿風景展”という特別展をやっていました。江戸の広重、昭和初期の川瀬巴水、佐伯祐三らによる、新宿の風景画の展示です。中村彝の作品が見られなかったのが、残念。
思い出の美術館168:永青文庫(目白台、東京)

地下鉄有楽町線の江戸川橋駅を出て、神田川沿いに公園の道を歩いて行き、新江戸川公園の手前のところで右折して、坂を上っていくと、豪華な洋館が見えてきます。これが旧細川邸で、現在は永青文庫となっています。

ここには、外様大名の細川家に伝わる、宝物・美術品が収蔵・展示されています。主な収蔵品は、武具・馬具のほか、天目茶碗などの茶器、能装束などです。

私が行ったときには(2016年1月)、”狂言を楽しむ”という特別展をやっていました。”武悪”、”黒色尉”などの狂言面、狂言装束、狂言の台本などが展示されていました。

この近くには、昔、芭蕉が住んでいた芭蕉庵がありました(深川の芭蕉庵とは別)。
思い出の美術館169:東京ステーションギャラリー(丸の内、東京)

近年改修された東京駅の、丸の内側北口ホールの中に開設されたのが、東京ステーションギャラリーです。駅の中ということで、アクセスは最高。小規模ながら、ちょっと気の利いた展覧会を、やっています。

私が行ったときには(2016年1月)、”パリ・リトグラフ工房idemから”という展示をやっていました。小説家の原田マハ氏のプロデュースで、モンパルナスにある現代美術系のリトグラフ工房、idemの作品を展示しています。

李禹煥、森山大道、やなぎみわなどの、日本に関係のある作家の作品もありました。そして、驚いたのは、映画監督のデヴィッド・リンチが、なかなか優れた作品をここで作っていることです。

ギャラリーの階段部分の壁面には、昔の東京駅の赤レンガが露出していました。
思い出の美術館170:北海道博物館(札幌)

札幌の地下鉄東西線の終点、新札幌駅から、バスに乗り20分ほど行くと、開拓の村の近くに、北海道博物館があります。旧北海道開拓記念館がリニューアルされたものです。北海道の自然史、文化史に関する展示をしています。

入るとすぐに、マンモスとナウマン象の巨大な化石に驚かされます。そして、縄文人の土器や土偶、北海道特有の擦文文化の展示へと進みます。

アイヌ文化の展示が充実しています。アイヌの住居、丸木舟、生活用具などがあります。アイヌの衣装は、樹皮や草の繊維で織った物や、獣皮、魚の皮を利用した物もあります。アイヌの弦楽器、トンコリに実際に触ることもできます。

さらに、明治の北海道開拓時代の展示も、興味深いです。ニシン漁業や炭鉱が繁栄していた時代の状況が、展示されています。 リニューアルにあたっては、アイヌ民族文化研究センターも統合されたそうです。ということは、これはもしかして、予算削減のための規模縮小?

ここの近くの、北海道開拓の村では、明治時代などの建築が保存されています。

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