思い出の美術館151 - 160

思い出の美術館151:三岸節子記念美術館(一宮、愛知)

岐阜駅から、JRで20分ほどで、尾張一宮駅です。駅からバスに乗って、20分ほど西に行くと、不思議なジグザグの屋根をした、 三岸節子記念美術館に着きます。

三岸節子は、大正昭和期の女性画家です。彼女は、この美術館の地にあった毛織物工場の工場主の吉田家の娘として生まれ、女子美術大学で油絵を学びました。その後、札幌出身の画家、三岸好太郎と結婚しますが、好太郎は早世してしまいます。それでも、彼女は、渡仏したりしながら、旺盛に制作を続けます。

この美術館には、彼女の生涯にわたった、主要な作品が、収蔵展示されています。私が好きなのは、”20才のころの自画像”です。若い頃の意気込みが、表情に見て取れます。渡仏後の、ブルゴーニュやヴェネチアの風景も、なかなか良いです。ぶどう畑の深いワイン色が印象的です。

美術館の一角には、彼女の実家の土蔵が保存されています。ここには、彼女のパレットやイーゼル、着物、収集した土器などが展示されています。

このあたりには、ジグザグの屋根をした毛織物工場が、今でも見られます。この美術館の屋根は、この工場の屋根をモチーフとしたものだそうです。
思い出の美術館152:岐阜市歴史博物館(岐阜市、岐阜)

名古屋からJRの特急で30分ほどで、岐阜に着きます。岐阜駅からバスで北に行くと、岐阜城の建つ金華山のふもとの岐阜公園です。公園の南の入り口近くにあるのが、 岐阜市歴史博物館です。

ここには、縄文時代から、近代に至る、岐阜地方の歴史を展示しています。やはり、戦国時代にこの地を支配した、斉藤道三や織田信長関係の展示が中心になります。

私たちが行ったとき(2011年秋)には、特別展示として、薬師寺展をやっていました。奈良の薬師寺の寺宝を展示していました。目玉になるのは、東院堂の聖観音像です。白鳳期を代表する優美な像です。像のうしろにまで回って見る機会はそんなにないですね。薬師寺に行ったときには、こんなに近くで見る事はできませんでした。

もう1つの国宝は、吉祥天女像です。ふっくらとした、唐風の美女です。思っていたよりも、小さい絵でした。

2階の常設展示室では、壬申の乱と岐阜についての展示をしていました。この岐阜公園では、ロープウェーで岐阜城跡に登ることができます。
思い出の美術館153:観音の里歴史民俗資料館(高月、滋賀)

滋賀県の米原で東海道新幹線を降りて、北陸本線に乗り換えて、琵琶湖東岸を行きます。しばらくすると、湖東の観音の里、高月に着きます。駅を出てすぐの道を北に歩きます。途中で右に折れて、流れに沿った細い道を歩いて行くと、渡岸寺観音堂( 思い出の古寺23)に着きます。ここには、国宝の十一面観音があります。そして、この観音堂の東にあるのが、 観音の里歴史民俗資料館です。

ここには、この地に多い観音像や、ここの歴史、民俗についての展示がされています。まず目を引くのが、大円寺”釈迦苦行像”です。骨と皮ばかりの異形の釈迦像です。この他に、この地方の横山神社”馬頭観音像”、春日神社”神像”などがあります。また、この地方の儒者、雨森芳州関係の史料の展示もあります。

ここを出発点として、高月、木之本周辺の観音を巡るコースがあるのですが、私たちは時間がなくて、ここ1か所しか、行けませんでした。
思い出の美術館思い出の美術館154:成川美術館(箱根、神奈川)

箱根湯本からバスに乗って西に行くと、芦ノ湖の湖岸、元箱根に出ます。元箱根港のバス停の正面、芦ノ湖を見下ろす高台にあるのが、 成川美術館です。

この美術館には、日本画と中国美術品、能面などが展示されています。平山郁夫、加山又造、堀文子などの作品を収蔵しています。私たちが行ったとき(2011年12月)には、”新春の花”という題で、梅と椿に関する絵を展示していました。牧進の椿の大屏風などが、ありました。

ここのもう1つの”売り”は、展望室からの展望です。芦ノ湖と、箱根神社の赤い鳥居が見えます。天気が良ければ、富士山が見えるのですが、私たちが行ったときには、残念ながら、ちょっと雲に隠れていました。
思い出の美術館155:諸橋近代美術館(裏磐梯、福島)

郡山から磐越西線に乗って、猪苗代湖の北、猪苗代の駅で降ります。そこで、五色沼に向かうバスに乗って、40分ほど揺られて行くと、森の中にお城のような建物が見えてきます。これが、ダリのコレクションで有名な、 諸橋近代美術館です。

ここの収蔵品は、実業家の諸橋氏のコレクションです。個人美術館としては、かなりの規模です。最初の部屋には、ダリの彫刻作品が展示されています。おなじみの柔らかい時計のある”時間のプロフィール”や”引き出しのあるミロのヴィーナス”などがあります。

奥の部屋は、彼の絵画作品です。圧巻は、大画面の”テトゥアンの大会戦”です。中心には、ダリ自身とガラ夫人が描きこまれています。学生時代の印象派風の作品も、珍しいです。”ドンキホーテ”などのリトグラフは、バルセロナでも見たことを思い出しました(思い出の美術館141)。

次の部屋は、ダリ以外の画家の作品ですが、ここもかなり充実しています。ルノアール”モーリス・ドニ夫人”、パスキン”帽子を持つ少女”、キリコ”イタリア広場”など、巨匠達の作品が展示されています。特にうれしかったのは、フジタの作品”メキシコの家族”があったことです。

美術館の前には池があり、また渓流が流れています。遠くには、磐梯山を望むこともできます。
思い出の美術館156:倉敷民芸館(倉敷、岡山)

倉敷駅から、正面の道をまっすぐすすんで、美観地区をめざします。美観地区は、倉敷川にそって、蔵造りの家々が立ち並ぶ、江戸時代の情緒のあふれる町です。ここの代名詞とも言えるのが、大原美術館(思い出の美術館95)です。 大原美術館を越えて、川に沿って歩くと、中橋の近くに、2棟ならんだ蔵が見えてきます。ここが、 倉敷民芸館です。

この美術館は、民芸思想に共鳴した、外村吉之介氏によって1948年に設立されました。駒場の民芸館に次いで、日本で2番目の民芸館です。

倉敷の陶芸、ガラス製品を始めとして、日本各地の陶芸、木工、家具、染色、織物、家具などを展示しています。さらに朝鮮、中国、ヨーロッパ、アフリカなどの民芸作品もあります。倉敷ガラスの瓶の青い色が、印象に残りました。

そして、バウハウスのグロピウスが、ここを訪れたときの手紙が、展示してあって、ちょっとびっくり。

ここの建物は、江戸時代の米蔵を利用したものです。民芸館の前の倉敷川を、川めぐりの舟がのんびりと進んでいました。
思い出の美術館157:夢二郷土美術館(岡山、岡山)

岡山市の名所、後楽園の北の入り口から、蓬莱橋を渡ると、風見鶏の付いたとんがり屋根の小塔のある建物があります。これが、 竹久夢二の作品を展示する夢二郷土美術館です。

夢二の生家が、岡山県邑久町にあることにちなんで、岡山市に彼の美術館が建てられました。

ここには、赤い着物が印象的な”立田姫”や、”秋のいこい”、”旅の唄”などの、肉筆作品があります。彼の欧米旅行のときの作品、”ベルリン風景”なども、注目されます。彼が作詞した曲もある、セノオ楽譜のシリーズもありました。

夢二の美術館と言えば、伊香保の 竹久夢二伊香保記念館(思い出の美術館27)、東京・弥生の夢二美術館(思い出の美術館66)に行きましたが、それらに劣らず、ここも、なかなか充実しています。特に、 肉筆作品の良品が多いように感じました。
思い出の美術館158:地中美術館(直島、香川)

直島は、瀬戸内のアートの小島です。岡山の近くの、宇野港からフェリーに乗って行きます。直島の宮浦港に着くと、草間弥生の”赤かぼちゃ”が出迎えてくれます。島内は、町営バスで移動しますが、私たちが行ったときには、特別に、 地中美術館への直通バスが出ていました。

バスを降りてから、睡蓮の花が咲いた”モネの庭”を通って少し歩くと、地中美術館の入り口に着きます。安藤忠雄設計の、美術館の建物は、名前の通り、地下に埋没しています。

ここに展示されているのは、3人の作家、モネ、 ジェームズ・タレル、 ウォルター・デ・マリア”の作品だけです。モネの”睡蓮”のシリーズは、比較的晩年の作品、視力が低下してからの、ちょっと、抽象画を思わせる作品です。

ジェームズ・タレルの”オープン・フィールド”は、ふしぎの国のような体験ができる作品です。一見、壁に貼ってある、青い画面に見えます。しかし、壁を通り抜けるように、中に入って行く事ができます。中は、青い光に満たされた、ふしぎな空間です。外に出て振り返ると、やはり、青い平面にしか見えません。

ウォルター・デ・マリアの”タイム/タイムレス/ノータイム”は、階段状の部屋に、大きな黒い球体が置かれた、一見神殿を思わせる作品です。

美術館のカフェからは、美しい瀬戸内の海を見ることができます。ちなみに、外の景色が見られるのは、ここだけ。そして、地中美術館からベネッセハウスに行く途中には、草間弥生の”黄色かぼちゃ”を始めとする野外彫刻がたくさん設置してあります。

ただし、鑑賞者を拒絶するような安藤建築は、私にとっては、居心地の悪い空間です。作品の解説が無いのも、不親切で、ちょっとがっかり。
思い出の美術館159:池田20世紀美術館(伊豆高原、静岡)

伊豆の伊東から、シャボテン公園行きのバスに乗って、南に進み、美しい一碧湖を越えてしばらく行ったところに、この美術館があります。印象派から20世紀美術までを中心とするコレクションを持つ、美術館です。

このコレクションおよび美術館は、ニチレキ株式会社社長の、池田英一氏によるものです。

おもな収蔵品は、シニャック”アンチーブ風景”、ルノワール”カーニュ風景”、ココシュカ”アルジェリアの女”、コクトー”アルルカン”、ダリ”炎のキリン”、ウォーホール”マリリン・モンロー”などです。

シニャックの作品は水彩で、油絵とは一味違った、軽快な作品です。これはこれで、なかなか捨てがたいですね。 ココシュカ の作品も、意外な感じで、印象に残りました。 小規模ながら、充実した展示です。 ただし、展示作品リストが無かったのが、ちょっと残念。

美術館前庭の木には、みかんがたわわに実っていました。帰りに、一碧湖に向かって歩いて行くと、富士山が見えました。
思い出の美術館160:秋田県立美術館(秋田市、秋田)

秋田駅西口を出て、西に向かって歩いていくと、千秋公園の南にお堀をへだてて、”エリアなかいち”という複合施設があります。ここにあるのが、一流のフジタ・コレクションを誇る、 秋田県立美術館です。

ここの収蔵品の中心をなす、平野政吉コレクションは、秋田の豪商、平野政吉によって収集されたものです。平野は、まだ、フジタが日本で不当に低い評価を受けていた時期に、彼の作品を評価し、購入しました。

コレクションの中心は、彼の南米旅行後の作品で、以前の”乳白色の肌”を離れて、華やかな色彩が生まれる時期です。”カーナバルの夜”、”五人女”などは、この時期の作品です。なかでも圧巻なのは、巨大な”秋田の行事”です。横幅20mにもわたる、この作品は、躍動する群像の表現です。

でも、私の好みは、やはり”乳白色の肌”で、トレードマークの猫もいる、”眠れる女”ですね。この時は、特別展として、フジタの素描が展示されていたのも、うれしいです。

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