思い出の美術館141 - 150

思い出の美術館141:バルセロナ王立美術サークル美術館(バルセロナ、スペイン)

バルセロナ旧市街(ゴシック地区)の中心、大聖堂の前のノヴァ広場から、北西に伸びるアヴェニュー・デル・ポルタル・デ・ランゲルに入るとすぐ、ダリの垂れ幕のさがる建物が見えてきます。ここが、バルセロナ王立美術サークルのダリ美術館です。ダリ美術館としては、フィゲラスの ダリ劇場美術館(思い出の美術館135)が有名ですが、ここも、小規模ながら充実した美術館です。

ここには、ダリの絵画、版画、彫刻、装飾品など、700点あまりが展示されています。コレクションの中心は、クロット・コレクションと呼ばれるブロンズ彫刻です。騎馬像に、ダリ特有のデフォルメを加えた像などです。その他に、ドンキホーテのなどの版画シリーズもあります。金工、宝飾品、ガラス器、陶器も並んでいました。

ヘリコプターを使ったパフォーマンスなど、彼のパフォーマンスの写真パネルも展示されていました。また、円形の劇場を使った、不思議なパフォーマンスの模型もあります。

展示会場を回って、最後に重いカーテンをくぐると、出口に出ました。明るい戸外に出ると、夢からさめたようです。
思い出の美術館142:レンブラント・ハウス(アムステルダム、オランダ)

アムステルダムのトラムのレンブラント広場の停留所を降りると、すぐ、レンブラント広場です。ここには、”夜警”の彫像があったはずなのですが、私たちが行ったときには、なぜか撤去されていました。そこから北に向かい、橋を渡って運河沿いに進み、南教会の手前で右に曲がって、橋を渡るとあるのが、 レンブラント・ハウスです。ここは、かつて、レンブラントが20年ほど住んだ家で、現在は博物館として公開されています。

れんが造りの3階建ての家です。窓に付いている赤と緑の窓扉が、目立ちます。中に入ると、台所や寝室があります。寝室には、屋根つきのりっぱなベッドがあります。各室内には、当時(17世紀)の絵が飾ってありますが、残念ながら、レンブラント自身の油絵は、ここにはありません。

上の階には、レンブラントの奇妙なコレクションがあります。彼は一種の収集狂で、ギリシャ彫刻や美術品だけでなく、動物の骨や武具まで集めていました。これらの雑多な品物が所狭しと並べてあります。

そして、彼のアトリエがあります。イーゼルの上にキャンバスがあり、筆が並んでいます。フランスから来た女の子たちが、筆を手にしてポーズをとって、写真を撮っていました。壁には、絵の具壷が並んでいて、かたわらには顔料を砕くための石盤がありました。

最上階では、彼の版画作品の展示をしていました。ここには、彼のエッチングのほぼ完全なコレクションがあります。私たちが行ったときには、宗教画の展示がされていました。

彼は結局、破産によって、この家を手放すことになります。皮肉なことに、その時の財産目録のおかげで、この家の再現が可能になりました。
思い出の美術館143:猫の博物館(アムステルダム、オランダ)

アムステルダムのトラムのコーニングス広場の駅で降りて、ヘーレン運河に沿って、東に歩いて行くと、猫の絵の小さな看板がかかった家があります。猫に関する美術品を集めた、 猫の博物館です。看板は小さいので、見過ごさないように。ノックをすると、ドアを開けてくれました。

この博物館は、設立者のボブ・メイヤー氏の愛猫、J.P.モルガン(猫の名前)を記念して、1990年に設立されました。美術館の建物は、19世紀のタウンハウスで、当時のインテリアが保存されています。

ここには、猫をテーマと下した、世界中の美術品、民芸品が展示されています。猫好きで有名なフジタはもちろん、 ピカソ、 レオノール・フィニ、ヴァン・ドンゲン、スタンランなどの猫作品があります。猫と女性を描いた国芳の浮世絵もあります。

民俗学的な作品としては、エジプトの猫神像、東南アジアの猫彫刻、日本の招き猫などがありました。招き猫をたくさん並べたピンボールもありましたが、これは後で、デザインハウスの”ドローク”でも見ました。

美術館の一角には、2匹の”生きている”猫が、イスの上で丸くなっていました。猫好きには必見の美術館ですね。ここを出てから、シンゲルの花市を見て帰りました。
思い出の美術館思い出の美術館144:根津美術館(青山、東京)

地下鉄千代田線の表参道の駅を出て、表参道を東南に歩いて行きます。このあたりは、ブランド・ショップの建つ、にぎやかな通りで、外国人もたくさん歩いています。通りのつきあたりに、竹垣のある料亭のような建物が見えます。これが、日本美術、東洋美術の優れたコレクションを持つ、 根津美術館です。

この美術館はしばらく改装中で閉鎖されていましたが、近年再開されました。ここは、東武鉄道社長の根津嘉一郎の邸宅跡で、氏のコレクションを収蔵するために作られました。おもなコレクションは、障屏画、仏教美術、茶道具、陶磁器、中国古代美術などです。国宝7点を含む、約7000点の作品があります。

門を入り、館入り口までの、竹林に沿うアプローチを歩くと、青山の喧噪を忘れます。私が行ったときには(2010年9月)、”新創記念特別展”として、主な収蔵品の展示をしていました。美術館に入ってまず眼にはいるのは、中国の北魏時代の石仏”如来三尊像”です。

奥の部屋には、日本の絵画があります。中でも、応挙の”藤花図屏風”は見事です。繊細な藤の花と、大胆な樹幹の描写のコントラストは、さすがです。その他に、南北朝期の”五百羅漢図”、室町の”白衣観音図”も印象に残りました。

2階には、中国、殷時代の青銅器があります。怪物を思わせる、不思議な形です。そして、奥の部屋には、仁清の”色絵武蔵野茶碗”などの茶道具の優品がありました。

その後、中庭に出てみました。ここには、茶室4軒を含む、大庭園です。ところどころに、石仏や石塔があります。それらを見ながら散策していると、表参道にいるとは思えない、落ち着いた気分になります。
思い出の美術館145:泉屋博古館分館(六本木、東京)

地下鉄南北線の、六本木一丁目駅の2番出口を出て、エスカレーターに乗り、さらに エスカレーターを乗りついで上って行くと、高台の上に出ます。そのまま、陸橋をまっすぐ進んで行くと、左に見えてくるのが 泉屋博古館分館です。京都にある 泉屋博古館の東京分館です。

泉屋博古館は、住友家のコレクションを所蔵展示しています。東京分館には、茶道具、日本画、能面などを収蔵しています。

私が行ったとき(2010年9月)には、”近代日本画にみる東西画壇”というタイトルで、東京、京都、大阪3都の日本画家の作品を展示していました。東京は、”粋(いき)”をキーワードとして、橋本雅邦”春秋山水”、平福百穂”堅田の一休”、小林古径”人形”などを展示していました。”人形”は、西洋人形を描いた、珍しい絵です。

京都は”雅”をキーワードとして、富岡鉄斉”詩経天保九如章図”、堂本印象”北条時宗”、木島桜谷”秋草図”などを展示していました。円山四条派の流れをくむ、色彩豊かな絵です。

大阪は、”婀娜(あだ)”をキーワードとして、上島鳳山”十二月美人”、姫島竹外”七賢人”などを展示していました。

ここには、他に、モネの”モンソー公園”や岸田劉生の”二人麗子像”などもあるそうですが、このときは、出ていませんでした。
思い出の美術館146:大倉集古館(六本木、東京)

泉屋博古館分館( 思い出の美術館145)の前の道を、北に向かって歩いて行くと、スペイン大使館を過ぎ、ホテル・オークラの角のところに、瓦葺きの建物が見えてきます。これが、 大倉集古館です。日本や中国の、仏教美術、絵画、工芸、書などを収蔵する美術館です。

ここは、ホテル・オークラの大倉喜八郎氏によって、大正6年に創立されました。その後、関東大震災に被災しましたが再建され、コレクションを拡大してきました。”普賢菩薩騎象像”、”随身庭騎絵巻”、”古今和歌集序”の3点の国宝を含む、2000点のコレクションを誇ります。

私が行ったとき(2010年9月)には、”欣求浄土”というタイトルで、仏教美術の特別展をやっていました。美術館の前には、あ・うんの仁王像、中国の仏像があります。館内に入ると、1階には、”当麻曼荼羅”、”融通念仏縁起絵巻”、”普賢菩薩十羅刹女図”などの浄土系の仏画がありました。羅刹女図は、十二単を着た、珍しいものです。

そして、国宝”普賢菩薩騎象像”です。やや小ぶりながら、格の高い像様です。

2階には、”阿弥陀三尊来迎図”、”十六羅漢図”などが、ありました。漆黒を背景にした、金色の阿弥陀如来は、実に美しいです。

ここの仏教美術のコレクションの一部は、以前に北海道近代美術館に来たことがあります。今回見たものは、その時見たものとは違うものでした。ここには、他に、橋本雅邦、下村観山、小林古径などの、近代日本画もあるようです。
思い出の美術館147:川村記念美術館(佐倉、千葉)

佐倉は、成田の近くにある、城跡の残る、城下町です。京成佐倉駅または、JR佐倉駅から、無料送迎バスに乗って、南に行くと、 20-30分で川村記念美術館に着きます。アクセスはちょっと不便ですが、19、20世紀美術の一流のコレクションを持つ、行く価値のある美術館です。

ここは、第日本インキ(DIC)のコレクションを収蔵・展示するために、同社の研究所の敷地に、1990年に設立されました。チケットを買って、園内に入ると、広大な庭園があり、白鳥が池で泳いでいます。美術館は、ヨーロッパ中世の城を思わせるデザインです。

館内に入ると、第1室は印象派の部屋です。モネ”睡蓮”、ルノワール”水浴する女”など、この美術館を代表する作品がならびます。そして、フジタの2点、”2人の女友達”、”ノアイユの肖像”です。彼の最盛期に属する、乳白色の絵肌の作品です。ピカソ”シルヴェット”、マグリット”冒険の衣服”も忘れられません。

隣の部屋には、レンブラント”広つば帽を被った男”があります。レンブラントの油絵を常設している所は、日本には珍しいのではないでしょうか。奥の部屋には、”南蛮図屏風”などの日本絵画もありました。

2階には、ここが力を入れている、アメリカ現代絵画があります。圧巻は、ロスコの部屋です。彼がニューヨークに設置しようとして果たせなかった、”シーグラム壁画”が、部屋一面に展示されています。ステラの大きな立体作品の一群も、迫力があります。

私たちが行ったとき(2010年9月)には、アメリカン・ミニマルアートの画家、バーネット・ニューマンの特別展をやっていました。単純な色面と、言葉の表示を組み合わせた表現です。

その後、広大な庭園を散歩しました。暑い日でしたが、睡蓮の花が涼しげに咲いていました。そして、レストランで、ユダヤ人のニューマンにちなんだ、ユダヤ料理を食べました。
思い出の美術館148:三菱一号館美術館(丸の内、東京)

東京駅の丸の内口を出て、南西に行くと、三菱銀行の向かいに見えてくる歴史的建造物が、 三菱一号館美術館です。2010年にオープンしたばかりの新しい美術館です。地下鉄で行くときは、千代田線の二重橋前駅から行くのが近いです。

三菱一号館は、19世紀末に、ジョサイア・コンドルの設計によって建てられ、銀行として使われていました。コンドルは、ニコライ堂や旧岩崎邸の設計でも知られている明治の建築家です。その後、老朽化のため、解体されました。最近になって、当初の設計に基づいて、再建されたのが、この 三菱一号館美術館です。

ここには、19世紀末のポスターや版画、工芸品を中心としたコレクションが収蔵されています。特に、ロートレックのポスター作品が充実しているようです。私たちが見に行ったとき(2010年12月)には、”カンディンスキーと青騎士”展をやっていました。カンディンスキー、ミュンター、マルクらを中心とする、ミュンヘンの20世紀美術運動です。なお、このときは、ロートレックの展示はありませんでした。

このあたりは、東京ステーション・ギャラリーや、出光美術館が近くにあり、銀座にも近いので、ロケーションとしては最高ですね。
思い出の美術館149:名古屋ボストン美術館(金山、愛知)

名古屋駅から、名鉄で南に行くと、2駅目が金山駅です。駅の西口を出てすぐのところにあるのが、アメリカのボストン美術館の分館である、 名古屋ボストン美術館です。ホテルグランコート名古屋のビルの3−5階が、美術館になっています。

ここは、アメリカのボストン美術館の分館として、1999年に設立されました。ボストン美術館の収蔵品を中心として展示しています。

私たちが行ったとき(2011年10月)には、”恋する静物”という題で、ボストン美術館の静物画のコレクションの展示をしていました。16世紀から現代までの静物画があります。17世紀オランダでは、寓意画として、静物画が盛んに描かれました。

そして目玉になるのは、印象派の画家たち、マネ、ルノアール、そしてポスト印象派のセザンヌ、マチスの作品です。セザンヌはもちろん、りんごの絵です(”卓上の果物と水差し”)。20世紀の作家では、モランディのお馴染みの瓶の絵がありました。

館内はすいていて、ゆっくりと観賞できました。そのあと、併設のボストンカフェで、セザンヌのりんごにちなんだ、りんごのケーキを食べました。
思い出の美術館150:明治村(犬山、愛知)

名古屋駅から、名鉄犬山線でまっすぐ、犬山城で有名な犬山に行きます。犬山の駅からバスに乗って20分ほどで、 明治村に着きます。日本各地の明治期の建築を移築した、建築公園です。

この明治村は、昭和40年に15棟の建物でオープンし、現在では、アメリカ、ブラジルを含む、67棟の建物を収用しています。

敷地は、1丁目から5丁目までの5区画に分かれています。バスを降りて、入り口に入ると、そこは2丁目です。ここには、札幌電話交換局などがあります。1丁目には、聖ヨハネ教会堂など、3丁目には、品川灯台など、4丁目には、呉服座などがあります。園内には、レトロなバスが運行されています。

そして、5丁目には、私たちの目的である、フランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテルがあります。ライトに特有の、水平線を強調したデザインです。大谷石を多用したのも特徴です。このころ、彼は、マヤ・アステカ建築に興味を持っていたので、その様式の複雑な彫刻も見られます。このホテルは、関東大震災に耐えたとよく言われますが、どうも、それは事実ではないようです。

その後、5丁目のはずれにある、大明寺聖パウロ教会という、離島の教会を見ましたが、なかなか良かったです。そうしているうちに、帰りの飛行機の時間がせまってきたので、名物のカレーパンというのだけ買って、あわてて帰りました。

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