思い出の美術館121 - 130

思い出の美術館121:新潟県立近代美術館(長岡、新潟)

新潟から新幹線で30分弱で、新潟県南部の都市、長岡に着きます。駅を出て、市内循環バスに乗って、信濃川を越えて行くと、 20分ほどで新潟県立近代美術館に着きます。銀色のチューブ型の歩道橋が目につきます。

この美術館は、以前は新潟市内にあったのですが、長岡に移って平成5年に開館しました。世界と日本の近代洋画を中心としたコレクションがあります。3つの展示室を持ちます。

私が行ったときには(2009年9月)、特別展として、”ネオテニー・ジャパン展”をやっていました。これは、日本の現代美術の展覧会で、札幌ですでに見ています。常設展では、これにちなんで、”現代美術のクラシック”という展覧会をやっていました。今回は、こちらのほうを見ました。

この展覧会は、1930年代から現代までの、主として日本の現代美術を展示しています。おもな作品は、ウォーホール、”花”、リキテンシュタイン、”睡蓮と柳”、岡本太郎、”顔”、白髪一雄、”白色のひろがり”、李禹煥、”線より”、篠原有司男、”花魁殺し”などです。これらの作品は、村上・奈良の世代に比べて、骨太で、格闘の跡が感じられます。

ここの収蔵品には、梅原龍三郎、”紫禁城”、佐伯祐三、”広告塔”、モネ、”コロンブの平原、霜”、ミレイ、”アリスグレイの肖像”などもありますが、今回は残念ながら出ていませんでした。

これほどの美術館が、新潟市でなくて長岡にあるのは、角栄、真紀子の力によるのでしょうか?
思い出の美術館122:新潟市美術館(新潟市)

新潟駅で観光循環バスに乗り、北にむかいます。万代橋で信濃川を渡り、しばらく行くと、西大畑の新潟市美術館前の停留所です。ここで降りて、合同庁舎前を過ぎて、歩いて行くと、ちょっとした公園があり、その向かいが、 新潟市美術館です。

新潟市によって、1985年に設立された美術館です。国内外の、近現代美術作品と、地元新潟の作家の作品を収蔵しています。建物は、坂倉準三とならぶコルビュジェの弟子の前川国男の設計です。そういえば、なんとなく、コルビュジェの上野西洋美術館に似ている感じもします。

私が行ったときには(2009年9月)、特別展として、”水と土の芸術祭”をやっていました。これは新潟市のあちこちを会場とした、現代美術の祭典です。今回は、常設展のほうを見ました。主な展示品は、マックス・エルンスト”ニンフ・エコー”、マグリット”博学な樹”、ルドン”黄色いケープ”、草間弥生”自己消滅”、 李禹煥”点より”などです。今回は出ていませんでしたが、ボナールの”浴室の裸婦”もあるようです。小さい美術館にしては、なかなか充実しています。

美術館のむかい側の西大畑公園も前川国男の設計です。
思い出の美術館123:白桃美術館(新潟市)

新潟駅北口広場から大通りを進み、最初の信号を左折して、南西にずっと進むと、500mほど行ったところに、コンクリートの立方体の建物があります。これが 白桃美術館です。小さな美術館です。

ここは、書家の伊藤省風氏が、2004年に設立した個人美術館です。ここには、主に、古代から近代までの、日本画、浮世絵、書などが展示されています。

私が行ったときには(2009年9月)、”墨の美展 -室町水墨から鉄斎まで-”という展覧会をやっていました。1階展示室は、室町期の水墨画で、伝雪舟、伝如雪、一休などの掛け軸の小品がありました。2階展示室は、江戸から明治期の水墨画で、若沖”松図”、池大雅”滝図”、応挙”柳図”、鉄斎”滝図”などがありました。この他に、洋画もあって、香月泰男の風景画などがありました。個人美術館としては、なかなかのコレクションです。
思い出の美術館思い出の美術館124:蕗谷虹児記念館(新発田市、新潟)

新潟駅から、白新線で、一面の田園の中を40分ほど進むと、新発田市に着きます。古い町並みが保存された城下町です。駅を降りて、まっすぐ伸びる道を、北西に歩きます。しばらく歩いたところで、右に曲がって、市役所の方向に向かいます。裁判所のところで左に曲がり、歩いて行くと、市民文化会館の大きな建物が見えてきます。その手前にあるとんがり屋根の建物が、 蕗谷虹児記念館です。

蕗谷虹児は、大正から昭和初期の抒情画家で、魅力的な少女像で知られています。雑誌”令女界”や”少女倶楽部”の挿絵で有名です。また、童謡の”花嫁人形”の作詞もしています。この記念館では、彼の足跡を示す記録や、彼の作品が展示されています。

1階には、彼の若い頃の作品がありました。ここ新発田で生まれた彼は、始め日本画を学び、夢二風の絵を描いていました。その後、パリに渡って、アール・デコの絵を学びました。この時に、フジタとの交流もあったようです。パリ時代の、女性の横顔のデッサンや、パリのポン・ヌフあたりの街角の絵が、心に残りました。

2階には、挿絵画家としての活躍が展示されています。アール・デコと浮世絵の要素をとりこんだ、センスの良い絵は、時代を超えていて、古さを感じさせません。晩年には、東映のアニメーションにも関わっていたそうで、これには驚きました。ただし、彼は、生涯、純粋美術にあこがれていたようです。

記念館からさらに北西に行くと、新発田城があります。春には桜が咲いて美しいそうです。帰りには、寺町を通って帰りました。ところどころに、”たまり駅”という、町の人たちによるお休み所があって、観光客を歓迎してくれます。私は、ここでお茶と和菓子をいただきました。
思い出の美術館125:アルテ・マイスター(ドレスデン、ドイツ)

ドレスデンは、旧東ドイツに属する、ザクセン州の古都です。エルベ川の両岸に広がる、美しい街です。第二次大戦のときの爆撃で、市街はほぼ完全に破壊されましたが、その後、市民の努力によって、かつての美しい街を復興しました。

旧市街の西部にあるのが、ザクセン王フリードリッヒ・アウグスト1世が18世紀に建造した、ツヴィンガー宮殿です。その一角にあるのが、 アルテ・マイスター絵画館です。ここには、アウグスト1世のコレクションを中心とする、ルネッサンス ー バロック期の絵画が収蔵されています。数年前のエルベ川の洪水で、ここの絵が避難したことも記憶に新しいことです。

受付を通って2階に上がると、展示室です。右の部屋に入ると、ルーベンス”レダと白鳥”があります。次に、レンブラントの部屋です。”鷲に捕われたガニメデ”、”放蕩息子の帰還”が有名です。端の部屋には、フェルメールの”窓辺で手紙を読む少女”、取り持ち女”がひっそりとあります。前者は、フェルメールらしい静謐な世界を表現しています。

奥の部屋には、ドイツルネッサンスのクラナッハ、デューラーがあります。ぐるっともどって、入り口の左の部屋に入ると、イタリア・ルネッサンスの部屋です。ここには、この美術館を代表する、ラファエロの”サン・シストの聖母”があります。この絵は、聖母よりも、足下の天使で有名ですね。

この宮殿のとなりには、有名なオペラハウスの、ゼンパー・オーパーがあります。この日の夜、ここでヘンデルのオペラを見ました。
思い出の美術館126:陶磁器コレクション(ドレスデン、ドイツ)

ザクセン王宮のツヴィンガー宮殿にある、もう1つの美術館が” 陶磁器コレクション”です。 アルテ・マイスター絵画館を出て、宮殿の中庭を横切って、宮殿の南翼に入ると、 陶磁器コレクションへの入り口があります。アルテ・マイスターの入場券で、ここにも入ることができます。

ここには、アウグスト1世が集めたコレクションを中心とする、歴代の陶磁器の名器が収蔵されています。王は、自らを”陶磁器病”と形容するほどの陶磁器マニアでした。中国、日本の陶磁器をはじめとして、この近くのマイセン窯の優品もあります。

日本の陶器が壁一面に装飾的に展示されています。これは、18世紀にアウグスト王が、日本の陶器を展示するために作った、”ヤパーニッシェ パレス(日本宮殿)”を再現したものです。17、18世紀の有田、伊万里や柿衛門が中心となります。おそらく、長崎の出島を経て、オランダ商人によって輸出されたものでしょう。中国陶器は、主に明時代のもので、清代のものもあります。

ここからマイセンまでは、電車ですぐなのですが、私たちは時間がなくて、行けませんでした。
思い出の美術館127:バウハウス・アルヒーフ(ベルリン、ドイツ)

ベルリンのティーアガルテン(動物園)の南にある、地下鉄(Uバーン)のノーレンドルフ・プラッツの駅を降ります。北にむかう道を歩いて行くと、ラントヴェーア運河に出ます。運河に掛かる橋を渡ってすぐ、右側に白い建物が見えてきます。これが、20世紀デザインの原点、 バウハウスの作品を展示する、 バウハウス・アルヒーフです。

バウハウスは20世紀始め(1919年)に、建築家のグロピウスや画家のクレーらによって、創設されたデザイン集団、そしてデザイン教育の学校組織です。始め、ワイマールに建てられましたが、その後、デッサウに移転しました。ここで、現代デザインの萌芽となる多くの作品が生まれました。しかし、ナチスによる弾圧を受けて、1933年に閉鎖され、主要なメンバーは、アメリカへと移りました。

バウハウスの看板のところから、細いわたりろうかを歩いていくと、未来的なデザインの白い建物に来ます。この建物は、グロピウスのデザインに基づいているそうです。渡りろうかにそってぐるっとまわりながら下りると、美術館の入り口です。

始めの部屋は、建築に関する展示です。グロピウスやミース・ファン・デア・ローエの建築模型があります。現在の目で見ても、その新しさは色あせていません。次に、テキスタイル、陶芸、食器類、タイポグラフィーなどの展示があります。クレー、カンディンスキーやシュレンマーの絵もあります。次に、イッテンの色彩教育の展示です。Yokoの専門分野ですので、解説をしてもらいました。

奥の部屋は、家具類です。ブロイヤーのパイプ椅子(ワシリー・チェア)、ローエのバルセロナ・チェアなどがあります。壁面一面に椅子を並べた展示は圧巻です。

入り口近くに、ショップがあります。カタログや絵はがきだけでなく、食器やおもちゃなどのバウハウス製品を売っているのはうれしいですね。そして、ここのカフェでお茶をしました。食器がバウハウスでなかったのが、ちょっと残念。
思い出の美術館128:ゲメルデ・ガレリー(絵画館)(ベルリン、ドイツ)

ベルリンの地下鉄(Uバーン)のポツダマー・プラッツ駅で降りると、ポツダム広場です。ここには、かつてのベルリンの壁の一部が保存されています。ここから西にむかって歩いていくと、ソニー・センター、ベルリン・フィルハーモニーを過ぎて、クルトゥーア・フォールムという美術館群があります。このなかにあるのが、 中世 - 近世絵画の殿堂、ゲメルデ・ガレリーです。

ここのコレクションは、かつてベルリン郊外のダーレム美術館にあったものを移動したものです。そのコレクションは、もともとは、ブランデンブルグ選帝候フリードリッヒ・ウィルヘルム王とプロイセンのフリードリッヒ2世の宮廷コレクションでした。イタリア、ドイツ、オランダの、ルネッサンスからバロック期の絵画が中心です。

受付を通って右側にならぶ部屋は、ドイツ絵画の部屋です。中世のキリスト像、祭壇画があります。また、ドイツ・ルネッサンスの、デューラー”聖母像”、クラナッハ”ヴィーナスとキューピッド”などの有名作品があります。

さらに進むと、オランダ、フランドル絵画です。ここには、この美術館を代表する作品が集まっています。ブリューゲル”オランダの諺”、ルーベンス”アンドロメダ”、レンブラント”ベレーをかぶった自画像”があります。そして、見逃せないのが、フェルメール”真珠を持った若い女”、”ワイングラスを持つ女”の2点です。これで、今回のドイツ旅行では、4点の フェルメールを見たことになりました。

反対側の部屋は、イタリア美術です。フラ・アンジェリコ”最後の審判”、ボッチチェリ”聖母と聖人”があります。そのほかに、ラファエロ、チチアーノ、カラヴァッジオなどの優品があり、なかなか見切れません。あまりにも名作が多いので、このあたりまで来ると、観賞するのにも、少し疲れてきます。

帰りに、ここのカフェテリアでお昼を食べました。値段も安くて、なかなか美味しかったですね。クルトゥーア・フォールムには、他に、工芸美術館、版画素描美術館、美術図書館がありますが、時間がないので、今回はあきらめました。
思い出の美術館129:新ナショナルガレリー(ベルリン、ドイツ)

ポツダム広場近くにあるクルトゥーア・フォールムを出て、教会をみながら南東に歩くと、現代美術専門の 新ナショナルガレリーがあります。この建物は、ミース・ファン・デア・ローエ設計のモダニズム建築です。全面ガラス張りの黒い低層建築で、”ガラスの明るい神殿”とも言われます。地図で見ると、平面図が正方形をした建物です。あまりにも、モダニズムすぎて、私たちは入り口がわからず、うろうろしてしまいました。

ここには、ドイツを中心とする、20世紀美術の作家達の作品が収蔵されています。キルヒナー”ポツダム広場”、ベックマン、ココシュカなどのベルリン表現主義や、ゲオルグ・グロッスなどのベルリン・ダダの作品があります。他に、ヨーゼフ・ボイス、ホドラー、クレー、ムンク、ピカソ、ウォーホール、エルンストなどもあります。館外にも、ヘンリー・ムーアやカルダーの彫刻があります。

私たちが行ったときには、特別展をやっていて、大変な行列ができていて、常設展が見られなかったのが残念。このポツダム広場周辺には、この他に、国立図書館や楽器博物館などがあります。
思い出の美術館130:旧ナショナルガレリー(ベルリン、ドイツ)

ベルリンのSバーンのハッケシャー・マルクト駅で降りて、南西へ歩き、橋を渡ると、”博物館島”です。ここは、ベルリン中心部、シュプレー川の中州で、5つの博物館が集まっています。ここには、19世紀にプロイセン国王の王立美術館がありました。その後、第二次大戦の空襲で破壊されましたが、戦後に復興されました。東西ベルリンの統一後は、さらに発展しました

博物館島の東岸、ボーデ通の北にあるのが、 旧ナショナルガレリーです。ここには、印象派を含む、19世紀のヨーロッパ絵画が収蔵・展示されています。美術館の外観は、ギリシャ神殿を模したもので、列柱が並んでいます。

寒い中、入り口で待たされたあと、階段を上って、美術館に入りました。1階には、クールベ(”波”)、コンスタブル、そして、ドイツ写実主義のメンツェルの作品などが展示されています。マックス・ベックマンなどの、私たちの好きなゼセッション、世紀末美術の作品もこの階にありました。

2階には、フランス印象派の部屋があります。マネ”温室”、モネ””サン・ジェルマン教会”、セザンヌ”ポントワーズ、クールーブルの粉引き小屋”など、この美術館を代表する作品が、ここにあります。ドイツ象徴主義のベックリン”死の島”もこの階にあります。3階には、神秘的な風景画、フリードリッヒ”樫の森の僧院”などがあります。ただし、この時は、特別展をやっていて、あまり見られませんでした。

地下のショップも充実しているのですが、あまりにも混んでいて、なにも買えませんでした。

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