思い出の美術館91 - 100

思い出の美術館91:テート・ブリテン(ロンドン)

ロンドンの地下鉄のヴィクトリア線のピムリコの駅で降りて、テムズ河畔に出て、ミルバンクを北に向かって歩いて行くと、ギリシア神殿のような建物が見えてきます。これが、イギリス近代美術の殿堂であるテート・ブリテンです。

ここは、砂糖王のヘンリー・テートによって、そのコレクションを展示するために、19世紀末に設立されました。コレクションの中心は16-19世紀のイギリス絵画です。その他に、フランス印象派の作品もあります。現代美術のコレクションは、最近できたテート・モダンに移りました。

最初のほうの部屋には、ヴァン・ダイク、ホガース、ゲインズバラなどの近世イギリス絵画があります。ブレイクの部屋では、”アダムの創造”などの、彼に特有の詩的作品があります。もう少し行くと、コンスタブルの風景画があります。

さらに行くと、私の好きなラファエル前派の部屋があります。ここでは、ミレイの”オフィーリア”が必見です。漱石の”草枕”で引用されたことでも知られています。その他に、ロセッティの”ベアタ・ベアトリクス”、バーンジョーンズの”黄金の階段”などがあります。

最後に風景画家のターナーの部屋があります。”ノラム城、日の出”、”雪嵐の中の蒸気船”、”平和”(写真)などがあります。ターナーのコレクションは特に充実しています。
思い出の美術館92:朝倉彫塑館(谷中、東京)

山手線の日暮里駅の西口から出て、御殿坂をしばらく歩いたあと、左に折れると、ちょっと趣の有る横町に入ります。ここにあるのが、朝倉彫塑館です。これは、彫刻家の朝倉文夫の私邸とアトリエを美術館に改装したものです。

朝倉文夫は、明治から昭和初期の彫刻家で、東京美術学校(現芸大)の教授として、日本の近代彫刻の確立に貢献しました。大の愛猫家としても知られています。

美術館に入ってすぐ、コンクリート造りのアトリエに入ります。ここには、彼の代表作である”三相”、”ダンサーの一時”、”市川団十郎像”などがあります。リアリズムの中にあたたかみのある作風です。かわいらしい”子猫の群”もあります。

アトリエの奥には、朝倉の住居があります。こちらは、数寄屋造りの日本建築です。彼の愛蔵の書画、陶器類も展示されています。中庭は日本庭園になっていて、池には鯉が泳いでいました。

帰りには、”猫”シリーズのポストカードを買って帰りました。この近くにある谷中銀座商店街には、面白いお店がたくさんあります。
思い出の美術館93:資生堂ギャラリー(銀座、東京)

銀座中央通りを歩いて、銀座7丁目にやってくると、れんが色の資生堂ザ・ギンザのビルがあります。ここの地下にあるのが資生堂ギャラリーです。ここでは、主に、現代美術やデザイン関係の展示をしています。ここは、2001年に出来たのですが、もともとは、1919年に設立された歴史有るギャラリーなのだそうです。

私達が、数年前に行ったときには、”都市に生きるアール・デコ”というテーマで、写真展をやっていました。ニューヨークやマイアミ、ロンドンなどに残るアール・デコ建築、特にホテルと、人々の暮らしを写した写真作品です。都市の音を聞かせる展示もありました。展示のしかたも、資生堂らしくしゃれたものです。

その後、話題になった展覧会としては、現代美術の蔡国強展などがあります。 それにしても、入場料がただなのにはびっくりしました。
思い出の美術館94:テート・モダン(ロンドン)

ロンドン地下鉄のロンドン・ブリッジ駅で降りて、テムズ川右岸を西に歩いて行くと、シェイクスピアのグローブ座があります。そのグローブ座の向こうにある工場のような建物が、近年、開館されたテート・モダンです。かつてバンクサイド発電所だった建物を改造して、2000年に公開されました。

テート・ブリテンが近代までのイギリス美術を収蔵しているのに対し、ここにはイギリス以外も含む現代美術が収蔵されています。入り口を入ると、巨大な吹き抜けになっています。ここには彫刻が展示されています。展示スペースは7階の建物を占めています。

展示は、年代順ではなくて、風景・静物・人体・歴史という4つのカテゴリーに分けてなされています。展示されている主な画家は、ルオー、スーチン、ベックマン、ノルデ、キリコ、ピカビア、ボイス、ロスコ、リキテンシュタインなどです。

私達が2000年に行ったときには、開館直後でした。美術館前にある歩行者用の橋、ミレニアム・ブリッジが、揺れ過ぎて立ち入り禁止になったのを憶えています。
思い出の美術館95:大原美術館(倉敷、岡山県)

倉敷駅から倉敷中央通りを進み、倉敷国際ホテルの手前で左に折れると、倉敷川に沿う美観地区に入ります。この美観地区の一角にあるギリシャ神殿風の建物が、日本有数のコレクションを誇る大原美術館です。この美術館は、本館の他に、工芸館、東洋館、分館よりなっています。

ここのコレクションは、倉敷紡績社長の大原孫三郎が、パリにいた洋画家児島虎次郎に委嘱して集めたものです。ここの目玉となるのは、エル・グレコの”受胎告知”です。その他の有名作品は、モロー”雅歌”(写真)、モネ”睡蓮”、ゴーギャン”かぐわしき大地”、セガンティーニ”アルプスの真昼”などです。その他に、ルノアール、ロートレック、ピカソ、マチスなどの作品もあります。当時、まだ評価のさだまっていなかった作家の作品まで購入した、児島虎次郎の見識には脱帽です。

工芸館には、バーナード・リーチ、河井寛次郎、芹沢けい介らの作品があり、ここも見のがせません。

隣の喫茶店”エル・グレコ”も有名ですが、入ったことはありません。運河沿いの道を散策しながら、古い建物の中のお店を見てまわるのも楽しみです。
思い出の美術館96:伊勢神宮徴古館(伊勢、三重県)

伊勢神宮の外宮から内宮へ行く道の途中に、伊勢神宮関係の宝物を展示する伊勢神宮徴古館があります。片山東熊の設計になる、ルネッサンス風の重厚な明治の建物です。

伊勢神宮は、20年ごとに式年遷宮によって建て替えられますが、その式年遷宮関係の資料、神宮に奉納された宝物などが展示されています。種々の装束、楽器、武具などがあります。また、遷宮の様子をえがいた絵図・古文書や、おかげ参り関係の資料もあります。

また、神宮に献納された、明治時代からの絵画、彫刻も展示されています。たとえば、三重県出身の洋画家、平賀亀祐の作品があります。

徴古館の前の道をさらに進むと、伊勢内宮の門前町に出ます。ここで、名物の赤福餅を食べました(賞味期限切れ問題がおこるだいぶ前です)。
思い出の美術館97:オルセー美術館(パリ)

パリのRERのC線のミュゼ・ドルセー駅を降りるとすぐ、セーヌ左岸のオルセー美術館に出ます。ここは、かつての鉄道のオルセー駅を改修して、1986年にオープンしました。そこで、美術館内は、かつて線路があったところや、プラットホームがあったところがおよそ判別できます。かつての大時計も残っています。

ここには、印象派を中心とする19世紀後半の美術作品が収蔵・展示されています。1階には、印象派誕生前の写実主義やバルビゾン派などがあります。クールベ”オルナンの埋葬”、ミレー”落ち穂拾い”、アングル”泉”、モロー”オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘”などが有名です。

1階奥のエスカレーターで、一気に3階に上ります。3階は印象派のフロアです。印象派の色彩を生かすために、自然光の中で見られるように設計されています。モネ”サン・ラザール駅”、ドガ”ダンスの教室”、ルノアール”ムーラン・ド・ラ・ギャレット”など、おなじみの絵がならびます。続いて、印象派後のゴッホ”オーヴェールの教会”、ルソー”蛇使いの女”、ゴーギャン”タヒチの女たち”などがあります。

中二階に降りると、アール・ヌーボーの部屋があり、アール・ヌーボー好きな私達としては見のがせません。ガレやギマールの作品もあります。
思い出の美術館98:国立西洋美術館(上野)

上野駅の公園口で降りて前の道を行くと、左に東京文化会館、右に国立西洋美術館が見えてきます。この西洋美術館の建物は、コルビジェのデザインで、四角いらせんとも言える建築です。彼の”無限成長美術館”の構想の一部を、実現したものです。

ここには、松方幸次郎氏の松方コレクションを中心とする一流のコレクションがあります。中世から20世紀までのヨーロッパ絵画、彫刻が含まれます。有名なところでは、グレコ”十字架のキリスト”、ルーベンス”エウロペの略奪”、クールベ”波”、モロー”牢獄のサロメ”、モネ”睡蓮”、ルノアール”アルジェリア風のパリの女たち”、ゴーギャン”海辺に立つブルターニュの少女”などが挙げられます。前庭には、ロダンの”地獄の門”があります。

企画展も、かなり質の高いものがやって来ます。思い出されるのは、数年前にあった、ダ・ヴィンチ展や、モロー展です。

1階にある”カフェすいれん”は、雰囲気がいいとどこかに書いてありましたが、まだ、入ったことはありません。
思い出の美術館99:東京国立博物館(上野)

上野駅の公園口で降りて、西洋美術館の前を過ぎ、右にまがって科学博物館の前を通り過ぎると、広大な東京国立博物館の前に出ます。正面に見える本館のほかに、東洋館、平成館、表慶館、それに最近できた法隆寺宝物館などがあります。

日本風の屋根を持つ帝冠様式の本館には、数十点の国宝を含む、古墳時代から明治時代までの日本美術が収蔵・展示されています。代表的な作品は、”普賢菩薩像”、”扇面法華経冊子”、”地獄草紙”、”平治物語絵巻”、雪舟”破墨山水図”、光琳”風神雷神図屏風”などがあります。常設展だけでも、十分満足することができます。点数が多いので、絵画だけでも疲れてしまいます。ときどき、窓から見える、美術館裏の庭園が目を癒してくれます。

特別展も、なかなか良いものがあります。憶えているところでは、”北斎展”や”ダ・ヴィンチ展”がありました。

本館の右側にある東洋館には、中国、朝鮮等のアジアの美術作品が展示されています。本館の左側にある、青銅のドームの表慶館は、特別展に使われています。左側奥にある、ポストモダンの法隆寺宝物館には、法隆寺の小金銅仏などが展示されています。

本館のギフトショップは充実しています。ここだけでなく、世界中の美術館のミュージアム・グッズがそろっています。
思い出の美術館100:ルーブル美術館(パリ)

2年以上にわたって続けてきた、この”思い出の美術館”も、予想を越えて100回にもなりました。そこで、100回を記念して、ルーブル美術館をとりあげます。

パリのチュイルリー公園から東に歩くと、ルーブル宮の重厚な建物が見えてきます。中庭の中心にあるガラスのピラミッドから、地下に入ります。メトロの1番、7番線のパレ・ロワイヤル駅を降りて直接行くこともできます。

美術館の建物は、北のリシュリュー翼、東のシュリー翼、南のドノン翼よりなります。広大なルーブル美術館は、とても1日や2日で全展示室を見る事はできません。私達は、リシュリュー翼3階のフランス・オランダ絵画、ドノン翼2階のイタリア絵画だけを見ました。その他の、彫刻部門、工芸部門、エジプト美術などは、残念ながら割愛しました。

フランス絵画部門は、中世絵画、フランス・ルネサンスのフォンテンブロー派の絵画から始まります。続いて、プーサンの”アルカディアの牧人たち”があります。ロココの部屋には、ワトー、フラゴナールがあります。19世紀の部屋では、ドラクロアの”民衆をひきいる自由の女神”を見ます。大作のダヴィッドの”ナポレオンの戴冠式”も見のがせません。

オランダ絵画の部屋では、レンブラントの”水浴のバテシバ”とフェルメールの”レースを編む女”を挙げておきましょう。イタリア絵画の部屋では、ルーブルを代表するダ・ヴィンチの”モナ・リザ”やラファエロの”女庭師の聖母”があります。”モナ・リザ”の前は、いつも混み合っています。

建物が複雑なので、案内図を見ながら歩いていても、道に迷ってしまいます。この美術館には、4-5箇所のカフェがあるようです(行ったかもしれませんが、昔のことなので憶えていません)。ギフトショップも充実しています。

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