思い出の美術館1 - 10

思い出の美術館1:北海道立近代美術館(札幌)

緑豊かな知事公館の隣に立つのが、北海道立近代美術館です。ここの目玉は、パスキンやスーチンを中心とするエコール・ド・パリのコレクションです。常設展で見ることができます。もう1つは、岩橋英遠、神田日勝らの北海道出身の画家の作品です。2階に上ると、ガレ等のアール・ヌーボーのガラスのコレクションがあります。アール・ヌーボー好きの私達には、見のがせません。今は、企画展として、浮世絵美人画の展覧会をしています。美術館の帰りには、喫茶店の「かえる屋」でお茶をするのが楽しみです。
思い出の美術館2:三岸好太郎美術館(札幌)

知事公館の森のはずれに、小さな美術館が立っています。札幌出身の画家、三岸好太郎のための美術館です。美術館のデザインは、好太郎のアトリエのデザインに基づいているとか。私は、初期のころの、妻節子を描いた作品が好きです。ちなみに、節子も画家で、その美術館が岐阜のほうに出来たと聞きます。この初期の作品のあと、好太郎はめまぐるしくスタイルを変えます。そして31才の短い生涯を閉じました。
思い出の美術館3:日本民芸館(駒場、東京)

井の頭線の駒場東大前の駅から細い道を西に行くと、りっぱな門を持つ瓦ぶきの建物があらわれます。民芸の巨人、柳宗悦が創立した日本民芸館です。柳が集めた、日本各地および朝鮮の民芸品が展示されています。
この前に行ったときには、朝鮮の陶器、家具類、民画の展示が行われていました。その他に、濱田庄司、バーナード・リーチ、芹沢鮭介などの、民芸の同人の作品もあります。うちの奥さんは、沖縄の紅型(びんがた)がお気に入りです。
ここのミュージアム・ショップはお勧めです。柳の眼にかなった民芸品を買うことができます。帰りに、近くの紅茶のお店”piyoko”で紅茶シフォンを食べました。
思い出の美術館4:松本民芸館(松本、長野)

数年前、松本市を訪れましたが、町のたたずまいが気に入りました。昔の町並みが保存されています。その松本市の郊外の閑静な場所に、松本民芸館があります。これは、柳宗悦に賛同する、松本の民芸グループが設立した美術館です。
美術館の建物も、蔵造りの立派なものです。道祖神の立つ庭園も趣があります。館内には、日本民芸館と同様に、日本各地およびアジアの陶器、織物等が展示されています。特に、信州の民芸家具、織物、染色が充実しています。
2階の窓の外には、畑の風景が広がっていました。
思い出の美術館5:五島美術館(上野毛、東京)

東急大井町線の上野毛駅から、多摩美大の方に歩いて行くと、閑静な高級住宅地の中に五島美術館があります。寝殿造りを模したという、典雅な白い建物です。
五島美術館と言えば、国宝の「源氏物語絵巻」です。名古屋の徳川美術館とならんで、「源氏物語絵巻」を収蔵する美術館として有名です。「夕霧」、「御法」といった私の好きな巻がここにあります。このほかに「紫式部日記絵巻」、「三十六歌仙絵」が収蔵されています。これらの重要な作品は、秋の優品展で展示されることもありますが、なかなか展示されません。
美術館の裏には、所々に石仏のある庭園があって、ここを散策するのも楽しみの一つです。
思い出の美術館6:ギュスターブ・モロー美術館(パリ)

メトロのトリニテの駅からしばらく歩いて行くと、普通の家とまちがえて通り過ぎてしまいそうな小さな美術館があります。これが、私の大好きな画家、ギュスターブ・モローの美術館です。ギュスターブ・モローは19世紀末の象徴主義の画家で、世紀末の画家や作家に多くの影響を与えました。
この美術館は、もとモローのアトリエだった家です。中には、モローの居室がそのまま保存されています。1、2階には、小品やデッサンが展示されています。らせん階段を上がって3階に出ると、有名な「出現」が現れます。踊るサロメの前に、ヨハネの首が出現する劇的な絵です。思っていたよりも大きな絵でした。
この前、Bunkamuraでモロー展があって、ひさしぶりにモロー美術館の絵に再会しました。
思い出の美術館7:東京都庭園美術館(目黒、東京)

目黒駅を下りて東に行くと、白金の森の中に庭園美術館があります。アール・デコ様式の白亜の建物です。この建物は、皇族の朝香之宮の旧邸だそうです。
朝香之宮は、スピード狂で、フランス滞在中に自動車事故に会い、パリで長期療養することになりました。その時に、夫人とともに、当時パリではやっていたアール・デコの洗礼を受けたようです。自邸内をアール・デコで装飾しました。
ここでは、ラリックのガラスの衝立てが、圧巻です。ラリック特有の、妖精のような女性像がレリーフされています。以前に行った時は、アール・デコの企画展をやっていました。
名前の通り庭園も広くて立派で、散策が楽しめます。
思い出の美術館8:サントリー美術館(赤坂から六本木へ、東京)

赤坂見附の交差点の角にあるサントリー・ビルの11階に、サントリー美術館はありました(過去形で語ることになりました)。
ここでは、日本の工芸美術を主にコレクションしています。特に、江戸期のガラス製品と南蛮美術のコレクションが有名です。以前に行った企画展では、薩摩切子、江戸切子などのガラス器が展示されていました。
鑑賞の合間には、窓から弁慶堀や赤坂プリンスをながめて、ぼーっとしていました。
現在、この美術館は、六本木に移転して再開されました(思い出の美術館83)。赤坂のちょっと江戸っぽい雰囲気も良かったのですが、残念。 
思い出の美術館9:函館美術館(函館)

お花見で有名な、五稜郭公園のそばにある幾何学的な建物が、北海道立函館美術館です。館内に入ると、中央のホールには、ブールデルのブロンズを始めとする数点の彫刻があります。常設展では、田辺三重松などの道南出身の画家の作品が展示されています。
数年前に行った時には、企画展として、ロートレックのポスターを展示していました。 その前の年には、フランスの20世紀の作家、ソニア・ドローネーのテキスタイル・デザインをやっていました。ここの学芸員さんは、デザイン関係に強いのでしょうか。
帰りには、五稜郭そばの六花亭でお茶をして行きました。
思い出の美術館10:ナンシー派美術館(ナンシー、フランス)

パリ東駅から、特急で3時間弱行くと、ロレーヌ地方の中心都市、ナンシーに着きます。ここが、私たちがハネムーンで行った、あこがれのアール・ヌーボーの街、ナンシーです。
ナンシー派美術館は街の中心からはずれた、駅の西側にあります。コバルト・ブルーの線で格子模様が壁に描かれた、印象的な建物です。
ここには、エミール・ガレやドーム兄弟のガラス器および、ガレ、マジョレリ、バランの家具など、アール・ヌーボー・ナンシー派の作品が展示されています。
1階で目に着くのは、ガレが中国風の装飾をほどこしたピアノです。2階には、ガレの”暁と黄昏”のベッドがあります。巨大な蛾の装飾が特徴です。有名なガレの”ひとよ茸のランプ”もここで見られます。
ここナンシーの街には、マジョレリ邸を始めとして、アール・ヌーボーの家がたくさんあります。これらの家を回って見て歩いたのが、一番の思い出です。

前ページ/previousHOME次ページ/next