山ある記 |
|||
熊伏山 (1,653m くまぶしやま) − 長野県天竜村、南信濃村 2005.12.30(金) |
|||
天候:曇 標高差:710m |
<死ぬかと思った・・> 年末休暇を利用して南信へ。静岡県との県境でもあり、標高も低いから雪は大丈夫と思ったのが甘かった。 飯田まで高速を飛ばしたところまではよかったが、そこからが長かった。 登山口に着く前から林道にはかなりの積雪。雪が深そうなので一瞬諦めて引き返そうかとも思った。その雪を割って進んだところの登山口に駐車。 既に正午前。こんな時間から雪山に登ろうなんてのが間違いであった。 こんな日に登山する物好きは私くらい。入り口から登山道はすっかり雪に埋まっていた。この雪ではどこまで登れるか分からないが、 折角来たのだからとりあえず行けるところまでと歩き出す。雪対策にスキーパンツ、ストックを用意。 |
||
|
11:50
登山口(標高940m)。雪の積もった階段を登っていく。気温6.7度。 12:15 あずまや(約1,045m)。雪の上に先行者の足跡があったため、それに従ったため道を誤り、回り道をしてしまった。 それくらいに道がはっきりしないほどの積雪があった。気温1.5度。 12:25 青崩峠(約1,082m)。峠を吹き抜ける風が強く冷たい。陽射しも少なく、雲行きが怪しい。更に進むべきか迷ったが、まだ行けそうだと判断。気温0.4度。 13:15 反射板(約1,390m)。先行者の足跡がなかったらここまで歩こうとは思わなかっただろう。小休止。甘納豆で小腹を満たす。時々、薄日が射す。気温-2.8度。 13:50 約1,495m地点。こんな雪山でも小鳥の囀りが聞こえる。慰めになる。一部青空も見える。今思えばなぜ、ここまで進んでしまったのだろうと思う。 何かに取り憑かれていたとしか思えない。気温-4.4度。 14:10 約1,565m地点。この時期としてはぎりぎりの時間帯。常識ではもう下山している時間だ。 雪女か何かに誘われるように私の足は山頂に向かっていた。気温-5.2度。 |
||
<日帰り入浴>
遠山温泉”かぐらの湯”。南信濃村。 登山口から和田地区に下ってきた、遠山川沿いにある。 露天、サウナ、寝湯、打たせ湯、ジェットバスなど、施設は充実。 お湯に浸かって生きていることを実感しながらも、ついさっきまでの緊張した山行が現実だったのかどうか不思議な感じがしていた。\700。 <参考地図> |
14:35
山頂。いくつかのアップダウンを繰り返して、いつ山頂が現れるのかと思いながら、ようやく登頂。雪が舞い始めていた。
そんな天候だから展望を楽しむこともなく、下山を急ぐ。明るいうちに下山できるだろうか? 異変は間もなく起きた。 足が上がらなくなったのだ。両腿が攣ったような状態では、まともに前に進めない。手で腿を揉み解したり叩いたりしながら、 だましだまし下るが、登りがあると途端に足が上がらなくなる。一瞬、パニックに陥る。凍死の二文字が頭によぎる。 とりあえず腰を下ろして熱いお茶を飲み、気持ちを落ち着かせる。冷静になってみると、これは脱水症状に近いと診た。 寒くてもけっこう汗をかいているはずだ。水分補給が足りなかったようだ。 パニクった頭でおにぎりを頬張るが、口の中が渇いて唾も出ないので飲み込めもしない。お茶で流し込むようにして半分だけ腹に詰め込む。 どこまで歩けるだろうか不安だったが、再び足を揉み解して歩き始めた。 15:30 反射板。生きていることにホッとする。景色を楽しむ余裕もない。いったい自分は何をしに来たのだろうか?気温-4.7度。 15:55 青崩峠。雪の上をほとんど転がるようにして下ってきた。さっきは喉を通らなかったおにぎりを貪り食う。生きている実感が湧いてきた。ここまで来れば、もう少しだ。気温-1.6度。 16:05 青崩神社の小さな社。無事の下山を感謝してのお礼参り。大袈裟だが一度は死を覚悟した。生死の境を味わった。こんなところで死ぬんだろうかと思うと情けなくなった。 人生、案外あっけないもんだと思ったときもあった。下山したら、帰省して例年のように新年を迎える予定だったのに、と親の顔が浮かんだこともあった。 16:15 登山口。無事に下山してみると、人間、意外と強いなと思った。貴重な経験をした。気温-0.8度。 |
||