読書メモ

・「信州の城と古戦場
(南原公平:著、 \1,100、令文社) : 2003.11.09

内容と感想:
 
私が住む上田市には上田原古戦場といって、かつて戦国時代に村上義清が武田信玄を迎え討った「上田原の戦い」(1548年早春)があった場所がある。”原”が付くくらいだから、かつては大軍同士が激突するにはもってこいの土地だったのだろう。また長野市へ行けば、謙信と信玄が5度に渡って激突したという川中島合戦の舞台、八幡原がある。
 趣味の山歩きで信州のあちこちを訪れるとよく目にするのが、城跡(城址)を示す道案内。この手の案内はきっと他県に行っても同じ状況だと思うが、観光客を呼び込むのに一役買っているのだろう。あるときは登頂したら、そこが山城の跡だったということもある。信州は山国だからそういった山城(平地に築くのが平城)が多かったと見える。
 本書はたまたま書店で目にとまった新書版サイズの本である。戦国史好きの私には題名に”信州”が付いていたこともあって、思わず手が伸びた。著者が地元信州の方かどうか不明だが、信州各地の城跡や古戦場を訪ねて、実際に取材しただけあり中身が濃い(取り上げられているのは主に戦国時代の史跡である。)。ボリュームも手ごろで、信州人が地元の歴史を知るには良書となるだろう。
構成は、信州を走る鉄道の路線別に以下のように4つに分類して書かれている:

・信越線・飯山線に沿って
・小海線に沿って
・中央線・大糸線に沿って
・飯田線に沿って

 本書の面白い点は、とことどころにちょっとだけ添えられる著者の感想である。現代人への警告であったり、批判であったり、愚痴だったり・・。
 巻末には、本書で取り上げられた史跡が現住所(アクセス方法も)で示してあり、老後の史跡巡りには丁度よいかも。また、戦国から幕末にかけての信州内の大名配置(各藩の石高も)もあり興味深い。
 著者が「あとがき」で記しているように、「既成の英雄観や合戦を勇壮なものとする観念を打破してゆくのは、むずかしいけれど重要なこと」というのが、執筆後の著者の歴史に対するスタンスを示している。

更新日: 03/11/16