読書メモ  

・「登山の運動生理学百科」(山本正嘉・著、 \2,000、東京新聞出版局) : 2000.10.29

はじめに:
 著者は国立鹿屋体育大学スポーツトレーニング教育研究センター助教授で、教育学と運動生理学が専門。若い頃から登山に親しんできたという。本書はその著者だからこそ書けた本といえる。

内容と感想:
 
題名は”百科”となっているが、読後の私の印象では山本氏の実証論文・レポートといったところ。
氏が冒頭に書いているように、ただの「ハウツーではなく、なぜそうしたほうがよいかを、実験データを示して」書かれている。

 目次を挙げると、
第1部<基礎編>身体の仕組みを知って安全登山
 第1章:登山と健康
 第2章:登山と疲労
 第3章:中高年、女性、子供の登山
 第4章:登山と体力トレーニング

第2部<発展編>高度な登山も、身近により快適に
 第5章:クライミング
 第6章:高所登山

 本書のような性格の本はこれまで見かけなかったと思い、店頭で見かけて思わず衝動買いをしたのだが、考えさせられることが多かった。
 山に登るようになって、これまではただひたすら山頂を目指すだけであった。それだけで十分かもしれないが、本書を読んで、これまで大きな怪我のないのはただ運がよかっただけなのかも知れないし、もっと自分の体のことを知っていれば、もっと快適に安全に登れていたのではと感じるようになった。
 スポーツをやったことがある人間なら常識的・経験的に理解しているようなことも、多くの実験データを示して噛み砕いて書かれているので(ただ被験者の数が少ないので普遍性を欠くのが気になる)、理解が深まるし新たな発見もある。
 これまで登山に関するハウツー本はあまり読んで来なかったが、本書のように科学的に説明してもらうと、水の飲み方ひとつにしても納得して実戦に取り入れていこうという気持ちになる。
 本書を踏まえて今後、山で応用するに当たり、念頭に置いておきたいのは、速くかつ疲労せず怪我をしない歩き方の向上、水分・食料・休息の定期的な摂取、山以外での日常の体力作りなど。まずは兎に角、自分を知るということになるであろう。その上で自分はこんなに歩けるんだ、と登る度に思えるように向上していけるといいと感じている。

更新日: 00/10/30