読書メモ
・「「戦う組織」の作り方」
(渡邉 美樹:著、PHPビジネス新書 \760) : 2011.02.26
内容と感想:
先日、都知事選立候補を表明したワタミ会長の渡邉氏が会長就任を機に2009年に書いた組織論の本。
前半は組織のあり方、トップやトップ層に求められる覚悟を、後半は部下指導の方法論について語る。
前半が経営者レベル、後半が現場レベルの「戦う組織の作り方」についての解説になっている。
「悩めるリーダーの処方箋」となるよう願って書かれた。
著者は社長を辞めて会長になったが、「社長以外にもやるべき仕事がある」と考えている。
引き続き代表権は持ち、CEOを務めるとのこと。
著者が考える「戦う組織」とは、「社員一人ひとりが自律的に考え、厳しい状況の中でも道を切り拓いていける」組織だ。
その「戦う組織」を作れるかどうかは「リーダーで99%が決まる」というように、結局、リーダー論が展開される。
サブタイトルには「リーダーの覚悟」という言葉があるが、「戦う組織」には「厳しくも公正なリーダー」が求められる。
第4章では「リーダーに求められる資質や能力の多くは、仮説と検証の繰り返しによって磨かれていく」と述べているように、
一朝一夕には覚悟あるリーダーになれるものではない。
しかし、ワタミを優良企業に育て上げただけあって、著者には厳しさだけではなく、公正さや優しさ、人を大事にする姿勢が感じられた。
○印象的な言葉
・「厳しい」組織は少数派?目的の達成のための厳しさ
・人には必要なときに必要な接し方をするだけ
・社長も店長も対等。役割が違うだけ。役職に上下はない
・属人的な能力に頼らない組織
・部下が育つ環境ときっかけを提供するのがリーダー。リーダーは持ち場をうまく部下に与えてあげる
・人は余裕がないと言い訳に走る
・低い評価を下すなら、汚名返上のチャンスを与える
・今の仕事100%、明日の仕事20%。120%の課題で新しいことにチャレンジ
・強すぎるリーダーシップは組織がトップに依存する。幹部同士の横の連携も育ちにくい
・グループ会社の社長に自社以外の会社の経営委員会や監査委員会の委員の役割を果たしてもらう
・ワタミ事業の三本柱:外食、介護、宅配弁当。強みはお金を出す財布がそれぞれ異なること。外食は可処分所得から、
介護は預貯金や退職金から、宅配弁当は年金から支払われる。
・年寄り人口の増加が一段落するのが2025年前後。介護、高齢者向け宅配もその頃は成熟産業になる。ビジネスのピークは2017、8年になり、競争が激しくなる。
・社会的入院は入院が長引けば病院の収入が減るしくみ。病院経営を圧迫する
・介護サービスは効率性ではなく、満足感や幸福感を優先
・老人に安易におむつや車椅子を勧めない
・人の可能性を見切る冷たい集団ではいけない
・M&Aを行なった側のトップは、自ら現場に入るべき。リーダーたる者、常に一番の勝負どころに立ち続けなくてはならない
・自分にとって楽な場所、楽しい場所ほど、部下に譲り渡さなくてはいけない
・部下一人ひとりの弱点に対して、必要となる経験の仮説を立てる
・平常心でブレない判断ができる人
・じっくりと時間をかけて質問内容を考えて、ポイントを突いた質問ができる。
・熱さと冷静さ
・部下が伸びない根本的な原因はリーダーの無関心
・夢やビジョンを示せないリーダーのもとでは、部下も夢もビジョンを持てない
・リーダーは必ずしも部下よりも優秀である必要はない
・器の小さなリーダーほど、自分の価値観だけで部下を評価しようとする。価値基準はひとつではない
・思考の三原則(安岡正篤):長い目、多面的・全面的、根本的に見る、考える
・状況把握力や判断力は自分で試行錯誤を重ねながら身につけていくしかない
・欲や焦りが判断を狂わせる
・寄り添うリーダーシップ:部下が上司を信頼し、自然について来る
・新人には仕事に就いてから間がないとき、やっていることが正しいかどうか判断する力がない。それが正しいなら上司は「大丈夫」のサインを出してあげる
・信頼関係ができていない状態で叱ると部下の心は離れる。叱るときは感情をコントロールする
・努力してもしなくても評価が同じであれば、人は努力することを止めてしまう
・部下の評価は感情や損得ではなく、理念と目標に沿って行なわれるべき。公正さ
・評価とはその人が最も能力を発揮できる役割は何かを判断するために行なう
・見守られているという部下の安心感
・仕事における幸せとは:笑顔、元気さ、心遣い、心穏やか、働く喜び、前向き、意欲的
・小さな夢を実現すると、次の小さな夢が沸き起こってくる
・課題には期限を設定し、結論を出すまで徹底的に考える。結論を出した以上は悩まない
・従業員を雇うということは、従業員やその家族の生活や命を預かること
・人は経営資源ではない。人は買ったり、売ったり、捨てたり拾ったりするものではない。人切りするときは会社が潰れるとき
・社員を優先することが、結果的には株主の利益にもなる
-目次-
はじめに なぜワタミは「厳しい」組織であり続けるのか?
第1章 一〇〇年続く「強い組織」を作るために
第2章 成長を続ける「戦う組織」の作り方
第3章 組織を引っ張る「戦うリーダー」の条件
第4章 「戦う部下」を育てるリーダー力の磨き方
リーダーの資格とは? ―「俺が育ててやる」と思うのは大きな自惚れ
リーダーに求められる仕事とは? ―部下の不出来をなじるのは上司の怠慢に過ぎない
「叱れない」「嫌われたくない」では上司失格 ―リーダーのほめ方&叱り方
厳しくも公正な部下評価を ―○×をつけるのではなく、人を育てる機会として
リーダーが身につけておくべき「力」とは? ―苦い経験を重なるからこそ、成長がある
仕事をする上での「幸せ」とは何かを考える ―悩み多き時代に「夢」を持つことの重要性
エピローグ ワタミを支えるのは「人」である
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