読書メモ
・「齋藤孝のざっくり!世界史 〜歴史を突き動かす「5つのパワー」とは」
(齋藤 孝:著、祥伝社 \1,500) : 2011.03.20
内容と感想:
一般的な世界史本とは違った切り口で、世界史の面白さに迫った本。
何が世界を動かしてきたかを見るために、5つのパワーをテーマに掲げている。
近代化のパワー、帝国主義、モノへの欲望、資本主義・社会主義・ファシズム、宗教パワー。
これらのキーワードを核に歴史を見ていくことで、各時代の出来事がもつ意味が見えてくる。
そしてそれらが現在につながっていることを実感できる。歴史の教科書的な作りではないため、読み物として読めば読みやすいし楽しめる。
歴史を学ぶことは決してカビくさい過去を振り返ることではなく、
現在にも大いに影響し続けており、未来を読み解くことに役立つということが分かるだろう。
歴史はご先祖様たちの過ちを伝えてくれる。同じ過ちを繰り返すなと語りかけている。
グローバル化が急速に進む現代。「ざっくり」とでも世界史を知っておくことは、世界を理解し、世界と付き合っていくためにも有用だ。
そうした知識があれば海外旅行ももっと楽しめるし、ビジネスでも役立つはずだ。
○印象的な言葉
・社会主義という名の宗教
・平等と独裁は紙一重
・ゆるいイスラムの戒律
・地中海文明が欧州の原点
・古代ギリシャは市民権をもつ市民だけによる直接民主政。奴隷制度もあった
・エジプト王ファラオは神の化身であり、軍の最高指揮官。太陽信仰
・王制ローマは共和政に変わり、帝国となっても元老院と皇帝による共同統治。のちに専制君主化すると崩壊
・キリスト教を国教としたローマは約千年間「仮死状態」となる。神により合理性や明晰性、発想力が押し潰された
・長い忠誠の沈黙を打ち破るきっかけはルネサンス、宗教革命
・イスラム教が西欧を嫌うのは神より人間を重視する近代文明への反発から
・カトリック的ゆるさ、プロテスタント的厳しさ
・禁欲を旨とするプロテスタント。仕事は重要。消費にお金を使うことを嫌い、貯まったお金は投資に回す。資本主義の母体
・ほとんどの帝国は領土を広げること自体が目的化し、それが原因で崩壊
・ギリシャ語のロゴスは「言葉」を意味する。ロゴス重視が西洋らしさ。
・ローマ帝国の働かなくても生きていける無産市民の退廃。財産はなくても市民権、投票権はもっていた
・イスラム帝国の繁栄を支えたのは異民族を区別しない平等な税法
・ローマ帝国の皇帝は実質的に世襲だった
・今は武力でなくお金の力で侵略する時代
・国際金融資本:戦争でどちらが勝っても損をしない仕組みを作る
・コーヒーはプロテスタントを中心に広がった。コーヒーハウスがフランス革命につながる議論の場を提供
・欧州諸国は植民地でのコーヒー栽培で原住民を酷使した。原住民は激減し、それを補うためにアフリカ黒人を奴隷として運んだ
・日本茶も中国茶も紅茶も、もとは同じ茶の木から作られる。日本に茶を伝えたのは遣唐使
・ウーロン茶を改良したものが紅茶のルーツ
・コカ・コーラは第二次大戦で兵士の士気高揚に役立つ軍需品だった
・南米のインディオは過酷な金脈探しとスペイン人が持ち込んだ病原菌により激減。アフリカ黒人を奴隷として送り込んだ
・南米から大量の金を掠奪したスペインはアルマダ海戦で英国に敗れ、金を奪われる。英国はポルトガルからも金を奪い取り、大英帝国を築く
・錬金術。「賢者の石」を作り出せれば金を作り出せ、不老不死も手に入れられる
・11世紀の水車の普及。動力をフイゴに利用し、鉄の生産量が飛躍的にアップ。農村に鉄製品が普及し、中世農業革命が起きる
・中国では16世紀ごろ、製鉄のために森林が失われ、砂漠化が始まった。スペインでも全土が禿山になった
・米国の生活様式を作り上げたのはハリウッド映画
・アジア植民地化の際に送り込まれた宣教師たち。武力で押さえつけず、宗教で心を変えようとした
・多様性をもったものが一つの場所に集まることで化学反応が起き、新しい文化が誕生する
・資本は自己増殖を行なう価値の運動体(マルクス)
・社会主義は人間の根本的な心の動き(欲)を無視してシステムを作った
・資本主義が止まらないのは、欲望が止まらないから
・ブランドものは自信が持てない人の補強剤
・人脈は社会関係資本
・フランス革命で自由を勝ち取ったのはブルジョア。多くの不自由な人は残った
・マックス・ウェーバーは社会主義の失敗を予言。官僚制の必然的な結果として社会主義は滅びる。官僚制化は歴史の必然。官僚制は腐敗する。能力の否定がやる気を奪う
・ファシズムは国民社会が陥った「統合の危機」をナショナリズムの高揚と指導者崇拝で克服しようとした。既成の伝統的支配層への反発。政治的・社会的没落の危機に瀕した中間階層の危機意識
・ファシズムの特徴は「なんでも反対」。反社会主義、反資本主義。国際協調にも反対
・第二次大戦は植民地を既にもっていた国ともっていない国との戦い
・心が弱っているときに自信を持って道を指し示すのはマインドコントロールの手法。ダメなやつと追い込んでおいて、優しい言葉をかける
・人は不安な状態になると自分とは異なるものを見つけ出し、排除することでまとまり安心を得ようとする(⇒いじめの構造)
・自分を大きなものに投げ出すことで自分を安定させる。宗教や信仰の根本。自我を捨て心を開け放つ
・身体を支配することは心を支配する近道。身振りや立ち居振る舞いを規定
・十字軍により欧州にアラビア文化がもたらされ、ルネサンスのきっかけとなった。古代ギリシャ・ローマ的な英知がイスラム文化圏に受け継がれていた
・イスラム教では聖俗を分けるという発想自体が存在しない
・インドのムガル帝国はイスラム王朝。イスラム化したインド商人が活躍。彼らが東南アジアにイスラム教を広めた
-目次-
第1章 西洋近代化のパワー
――モダニズムという止まらない列車
第2章 帝国の野望史
――なぜ君主たちは領土を拡げつづけようとするのか
第3章 欲望の世界史
――「モノ」と「あこがれ」が歴史を動かす
第4章 世界史に現われたモンスターたち
――資本主義・社会主義・ファシズムが起こした激震
第5章 世界史の中心にはいつも宗教があった
――神様たちは本当に世界を救ったのか?
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