読書メモ

・「霞ヶ関維新 ―官僚が変わる・日本が変わる
(新しい霞ヶ関を創る若手の会 :著、英治出版 \1,200) : 2011.05.30

新しい霞ヶ関を創る若手の会(NPO法人プロジェクトK)。各省庁の若手職員有志が実名で活動。 「霞ヶ関の構造改革」を目指す。個別の政策論よりも、政策決定の仕組みを改革することが急務、という観点。 三つの国家像:協創国家、小強国家、真豊国家。
総合戦略本部の設置、人事制度の刷新、業務の効率化・透明化が不可欠。

○印象的な言葉
・共感から共汗へ
・短期的な緊急対策と中長期的な抜本対策の両方を常に念頭に置く
・日本人の各種意欲が弱くなってきている
・政治への無関心。何も変わらないという無力感(⇒結果的にお上への依存心を高め、投げやりにさせている?)
・若年層の意見を必ずしも反映しない政治・行政
・円の実効為替レート(自国通貨の実力を示す)は1980年時分に戻った
・日本は政治部門が民間の足を引っ張っている。政府予算の無駄遣い(⇒国民が増税を望まない理由)
・水平的・空間的視点。垂直的・時間的視点
・アブダビ投資庁(世界最大の政府系ファンド)の運用資金は日本の年間一般会計予算を軽く超える
・政府系ファンドは長期的な保有、安定株主として歓迎しうる。現場での運用の多くは欧米人
・近代日本の歴史は35〜45周期で展開。現在は衰退期の途中
・若年層の目標喪失感。挑戦より、のんびり暮らす。「危機」をうんざりするほど聞かされ、不感症になっている
・現実逃避し思考停止するのではなく、未来を信じ、問題の本質に冷静に立ち向かう。現実を直視せず無理に安心するのではなく、遠くを見通す
・マスコミはヒステリックに問題を強調し、犯人を槍玉に挙げて溜飲を下げることに終始している
・あきらめ気分の蔓延。求められるのは建設的な議論と解決策の策定・実現
・ニーズの多様化、より専門的なサービスが求められる今、政府だけで公共サービスを提供し続けることは限界
・アメリカの個人主義。利己的な傾向が強い反面、社会貢献も盛ん。利己的な傾向を補完している
・日本社会の過度のまじめさと、それに伴う非効率性が、ストレス社会にしている
・どんな選択をしよとも過度の不利益を被ることのない安全・安心な制度
・戦略がなく、戦術の寄せ集め。全体として整合性に疑問
・閣僚たちは本来の国務大臣として国家全体の戦略について議論できるよう、スタッフを確保すべき
・政治の要諦は「食糧、軍備、民の信頼」(孔子)
・多種多様な「本部」や「会議」。「部分最適」のオンパレード
・米国政府は国家公務員を専門家として採用、管理能力を買われたものだけが管理職となる
・幹部はリスクを取るからこそ幹部。自分のリスクをゼロにするために部下に100点満点の作業をもとめがち
・霞ヶ関の貴重な資源を有効に活用し、法案の質を落とすことなく、資源の一部を戦略策定などへ振り分ける余地がある
・弁護士事務所への法案策的業務の委託
・法案が多過ぎる。無理やり法律にしようと不要な労力を費やしている
・霞ヶ関では莫大な政治的・経済的損失が発生し続けている。官僚自身が自覚し、主体的に行動を起こすことが重要(⇒彼らも不幸なまま)
・ブータンの幸福度の指標GNH。心理的幸福感、時間の使い方、生活水準、文化、健康、教育、環境、ガバナンス、地域活力で評価。 文化・生活を大切にし、急ぎすぎる開発を避け、自然保護とのバランスが取れ、身の丈に合った開発や発展を選ぶ
・「相対的な」幸せを際限なく求めず、自分が「絶対的に」幸せだと思えること

-目次-
第1部 日本の現状をどう見るか 1.データから見る日本 2.日本を取り巻く国際環境/近代国家の盛衰サイクルから見た日本 3.安易な悲観論を超えて
第2部 めざすべき国家像と戦略の必要性
1.私たちがめざす国家像 2.めざすべき国家像を実現するための戦略 3.総合戦略の不在の具体例と国民生活への悪影響 4.戦略の不在を助長する霞ヶ関のミクロな問題点
第3部 戦略国家の構築に向けて
1.霞ヶ関構造改革の三つの柱 2.霞ヶ関構造改革を実現するためのプロセスと手段 3.総合戦略本部ができると何が変わるのか
第4部 霞ヶ関構造改革の先にあるもの
1.霞ヶ関構造改革の先にある五つの価値 2.プロジェクトKのこれまでの活動 3.PSRとM&A!――霞ヶ関だけではできないこと 4.プロジェクトKの今後と連携の拡大