読書メモ

・「だれが日本の「森」を殺すのか
(田中 淳夫:著、洋泉社 \1,700) : 2011.02.09

○印象的な言葉
・フィンランドは小規模林家が多い。組合をつくり、そこに森林経営を委託する形で規模のメリットを確保。冷涼な気候と雑草の種類が少ない生態系。平坦な林地。
・欧州では木材の集成化が当たり前。板にするため乾燥が容易。
・神社仏閣を建築・修理するには大径木の檜が必要。もう日本にはない
・日本の木材貿易は製品輸入が主流。木材問屋がいらなくなっている
・木材は少量を少数の国で取引するため価格変動が激しい
・建築家は自分の作品という意識が強い。大半はかっこいい建物を建てようとする。木造についてあまり勉強していない
・ハウスメーカー業界があるのは日本だけ
・飛鳥の百済大寺や大官大寺には九重塔があった
・家康の江戸城天守閣は五層六階、高さ60mで日本最大だった。世界最大の木造建築
・木造ドーム:出雲ドーム、小国ドーム(熊本)、大館樹海ドーム(秋田)
・ケヤキ材は家具や内装用として他の木より一桁違う値段
・節や曲線のある木目がくつろげる
・高度経済成長期に持ち家ブームが起き、数奇屋風建築物が広がる。ハウスメーカーの台頭とも歩調を同じくしている
・北欧のホワイトウッドは多湿な日本では腐朽しやすい。シロアリの心配もある
・針葉樹材は断熱性能が高く、触感がソフト。杉や檜は耐久性がある
・家を建てるまえに建築家の「人」を見る
・日本に輸入される木材や木製品の2割は違法性がある
・速水林業:先進的な森林経営
・反りや曲がりを出さない加工法。隙間を見えなくする大工の技
・集成により間伐材の力学的な弱さを克服
・水中乾燥:木を水に漬けておくと中の樹脂が抜け、代わりに水が浸透。乾燥が速く、割れや狂いが少なくなる
・マイクロ波照射による乾燥。高周波真空乾燥
・素材である木の歴史を語ることでドラマを感じさせる
・限定品という価値
・スターリングエンジン:木質に外から熱を加え、内部のガス膨張を利用して動かす外燃機関。小型で効率も高い
・木質ペレットの製造には、それが持つエネルギーの半分を使う。資源が小規模で分散しているのがデメリット。 木質廃棄物を処理費をもらってペレット化できるため、ペレットはただ同然で売られている。
・スウェーデンでは炭素税(環境税)で化石燃料の価格を上げ、バイオマスエネルギーの普及を後押しした
・日本のバイオマス事業は赤字かそれに近い
・ドイツのヘルト社のバイオマスボイラー:木材のほか藁や食品屑など何でも燃やせる。事前加工不要。高温でガス化し完全燃焼。温水をつくり暖房に利用。メンテナンスも楽
・世界最古の木造建築物・法隆寺の金堂は千数百年の間、少しずつリフォームされてきた

<その他>
・土建屋の林道網整備への転換
・ダムに溜まる流木の処理は?

-目次-
第1部 森林資源を十分に生かせない“日本木材事情”
 木材輸入大国が、中国へ「国産材」を輸出
 “巧みな戦略”で日本を席巻する欧州材
 “木材輸入大国”を選択した日本
 “樹種”にいい加減な外材という名の商品
 日本の備長炭と中国の「木炭輸入禁止令」
第2部 使う側から検証してみた「国産材」の将来性
 なぜ日本人は「国産材」を嫌うのか
 “木づかい”から見た日本列島史
 伝説の巨大木造建築物と現代の“巨大木造ドーム”
 現代日本人がこだわる“無節信仰”
 人間の感性で測定してみた“木材の価値”
 「国産材」が世界で生き残るための条件
第3部 「認証」制度の有効活用が、日本の森を救う
 “近くの山の木で家を建てる”方法がある
 山と住まいを結ぶ“産地認証制度”と販売戦略
 全国で乱立する“木材の認証制度”の行方
 木材の“ウッドマイルズ”を算出する試み
 「森林認証」の取得が、日本の木材を変える
第4部 日本の「森」を殺すな、新しい“木づくり”への挑戦
 日本の都市に似合う“木造ビル”を建てる
 “銘木”は6色、“間伐材”は24色のクレヨン
 雑木を「宝の素材」に変える技がある
 木を利用した“バイオマスエネルギー”の真実
 チェーンソーアートで山村を活性化する
 “森林産業”を生み出して森を救う