読書メモ

・「日本の森はなぜ危機なのか ―環境と経済の新林業レポート
(田中 淳夫:著、平凡社新書 \760) : 2011.02.02

○印象的な言葉
・森林の所有・管理の分離
・畜産と林業の融合。牛が下刈り
・放置された人口林が森林として不健康な状態になる。病害虫の大発生など。昆虫や鳥獣も棲めず生物多様性も衰える
・古来、山林の所有権はもたず入会権だけで山を利用するケースも多かった
・山仕事が山村の失業対策事業と化している
・幕末、全国が禿山にあんり災害が頻発。それが幕府を疲弊させ、明治維新を誘発した
・国産材の値段は今や外材と変わらない。木の質(乾燥度)の問題。問屋機能が充実していない。注文に応じた出荷ができない
・付加価値の高い商品を作り、販売する努力が足りなかった
・貧弱な林道。日本の地形や作業形態に合った機械が開発されていない
・数寄屋造り。数寄屋とは茶室のこと
・高級材生産でやっていけるのは、ごく一部の林業地だけ
・「遊び派」森林ボランティア
・間伐している木は、本来自然に枯死するか生長を止めてしまう分に過ぎない。自然間引き。無間伐施業が伝統だった
・欧州林業の主流は天然更新
・焼畑林業:農業と林業を合体
・ログウェル日本:ネットで林家と工務店を結ぶ。木材の量や種類を確保
・品質向上やコスト削減など林業に改革を行なえる素地が充分にある
・木質はセルロース、ヘミセルロース、リグニンからなる。リグニンは接着物質として機能。
・木質の相分離システムの設備は低エネルギー、低コスト。林業現場や製材所に設置、生産した炭水化物とリグノフェノールは液体や粉体加工し保管、輸送しやすい。 古紙や木質廃棄物のリサイクル。
・ISO14061やFSCの森林認証は大規模森林所有者が世界をマーケットにするためのもの。おおがかりで手続きも複雑、費用もかかる
・入会権の分譲
・山作りの請負。山の経営を預かる。最低でも100ヘクタールないと安定した経営はできない。大面積を長期に請け負えれば、路面網設置や大型機械導入・運用も効率的
・伝統的な軸組工法に習熟していない大工が増えている。職人の教育も重要
・善意だけの行動は空回りしやすく、長続きしない、規模も大きくなりえない
・住宅価格に占める木材の値段は一般的な木造住宅で1割。大手住宅メーカーなら営業・管理経費が4割を占める
・木造住宅なら傷んだ部材を取り外して交換、修理するのは簡単。固定資産税は木造のほうが安い。償却年数が少ないため
・木質系燃料による火力発電で町内の電力を自給

<その他>
・花粉症対策に伐採後は別の木への転換を
・CADで木彫り支援
・間伐材の登山道整備への活用

-目次-
はじめに ―森林と林家のためにできること
第1部 森林危機の本当の姿
 森林危機には二種類ある
 木を売らなかった林業 ほか
第2部 林業を環境産業に変える
 間伐しなくても森は育つ
 植えなくても木は生える ほか
第3部 日本が変われば森も変わる
 山村ファンをつくるシステム
 長期伐採権制度で森林経営を ほか