読書メモ
・「ビジネス読解力を伸ばす未来経済入門」
(小宮一慶:著、ビジネス社 \1,500) : 2011.02.11
内容と感想:
近未来の日本経済、世界経済がどのように変わっていくのかを分析しようとした本。
第一部で過去25年間ほどの日本と世界経済の流れを分析し、第二部で近未来に起こりそうなイベントを分析、
これらを踏まえて第三部では政治、企業経営がこれから何をすべきか解説している。
過去の歴史を知り、近未来に予定されているイベントを知れば、自分がやるべきことが見えてくる。
著者の思考法はこうだ。
「WHAT、WHY、HOW」。現象を正確につかみ、理由を考え、どう活かすか考えるのだ。本書もそういう考え方で書かれている。
特に第二部の様々な具体的な予測情報は役に立ちそうだ。
テーマは資源、食糧、水、環境、IT、インフラ、ハイテク、少子高齢社会、医療福祉、新興国など幅広い。
第一部で北欧諸国の高負担・高福祉に触れている。
教育、医療などの社会保障システムの充実で豊かさを実現している。
これを読んで考えさせられるのは、北欧の成功の要因は優秀な政治家がリーダーシップを取ったのか、国民が賢かったのか、という点だ。
人口の少ない北欧方式は日本では難しいという議論もある。我々は良い知恵を出せるだろうか、政府は国民のコンセンサスを得られるだろうか。
○印象的な言葉
・世界経済が回復すると、外資系企業や投資ファンドが以前以上に日本市場にやって来る
・デジタル化の進展は文化・教育に及ぶ
・衰退するお寺市場。7.6万の寺、31万の僧侶。一寺当たりの損益分岐点は檀家300軒。檀家が急減
・税収の8倍超もの長期債務をもつ国
・納税者は自治体の株主
・フレキシキュリティ:フレキシブル(柔軟性)とセキュリティ(保障・安全)
・冷戦構造は日本経済の成長を高めた「ゲタ」。ハンディをもらっていた。アジアにおける資本主義の広告塔としての役割。
古い会計制度で業績を実態以上に良く見せることができた
・日本のバブル時代、外資系金融機関などが日本での拠点拡充に動き、一等地での一流ビルの賃料が一気に跳ね上がった。都心で土地が急激に値上がりし、周辺地域や全国へ拡大
・現役世代が高齢者世代の社会保障を負担するやり方が機能しなくなる
・高齢化による貯蓄率の低下は融資資金、投資資金の減少につながり、雇用や設備投資の減少につながる
・デンマーク:所得税率50%。医療費・学費は無料。大学生には月額手当て、18歳までに児童手当。社会人への職業訓練・教育プログラムの充実。失業中は雇用保険がカバー。解雇が容易
・中国は共産主義政権を守るために資本主義という劇薬を飲んだ
・中国沿岸部の一人当たりGDPはモータリゼーションが一気に加速するという5千ドルを超えている
・企業は設備投資の償却期間を短くする傾向にある。それが短期間の製造量を更に増加させる動機になる
・医療費などの自己負担率が増え、低所得層を直撃
・ビジネス社会も二極化。資源を動かす人、単なる労働資源の人
・プライベート・エクイティ・ファンド:非効率な経営をしているところに投資し、経営を効率化し投資価値の増加を狙う
・ガス輸出国フォーラム:ガス版OPEC。ロシアが主導
・メタンハイドレート:天然ガスの100年分相当の埋蔵量。2018年以降に実用化予定
・穀倉地帯ウクライナには外資系ファンドや多国籍企業が次々と投資
・中国は南米や中央アジアへ農業投資。サウジアラビアはウクライナ、エジプト、タイ、パキスタンに投資し、大規模な農地確保に動く。農地バブルの可能性
・2013年には世界の原油需要が生産能力を超える
・世界の未発見資源の1/4が眠る北極海。ロシア、米国、カナダなどが権益を主張
・2050年には17億人が「水難民化」する。水を巡る国際紛争が勃発する
・ローカル放送局の再編
・団塊世代の一斉退職が2012年前後から始まる。一学年275万人。退職後の就職希望者が増える
・家のバリアフリー化などリフォーム市場は団塊世代中心に伸びる(⇒DYIセット)
・終末医療の一般化には社会の意識変化が関係する
・インドの医療義中るレベルの高さ、治療費の安さ
・国民には分かりにくい一般会計と特別会計を抜本的に組みなおす必要がある。連結で「見える化」すべき
・財政力指数が優良な東京都は普通交付税がもらえない唯一の自治体
・カナダやニュージーランドは公務員を半減し国家破綻を乗り切った
・良い仕事を追い求めれば、結果として企業業績も向上
・もし現在その事業をやっていないとして、あえてそれを今から始めるか?ノーならその事業の存続を考えるべき(ドラッカー)
・合弁契約では撤退に関する条件を決めておくことが重要
・M&Aのリスク:買収先をうまくコントロールできない、技術やノウハウをもつ従業員が大量に辞める、顧客が離れる
・事業ポートフォリオ:事業ドメインを守りながらポートフォリオを拡大する。周辺事業への挑戦、既存事業の掘り下げ
・自立とは自分で自分の人生を決定すること
・フィンランド技術庁:研究開発面をマネジメント。プロジェクトを厳選して、予算をキャピタルローンや補助金、低利融資という形で企業や団体に注ぐ
-目次-
はじめに
第一部 時代の流れを把握する
(一)日本経済と世界経済の「地殻変動」
(二)人口動態の変化で形を変える社会
(三)国際競争力が物語る「世界と日本」
(四)冷戦の崩壊が「世界的な供給過剰」をスタートさせた
(五)二極分化を続ける世界
第二部 未来経済を読み解く
1・資源、食糧、水、環境、排出権、経済ブロック化
2・IT機器、インフラ、コンテンツ、ハイテク
3・少子高齢社会、医療福祉
4・新興国の市場
第三部 次代を構築する「創造力」
1.「国家経営」を強化する
2.「企業経営」を強化する
おわりに
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