読書メモ

・「こんな介護で幸せですか?
(中村 寿美子:著、小学館101新書 \720) : 2011.01.12

内容と感想:
 
既に日本は「超高齢化社会」。2007年には高齢者が人口の21%を占めるようになっている。介護が必要な人も急増し、今の福祉では支えきれなくなっているという。 本書は老人ホームの食事の問題から、親を入居させたい施設に入居させられない問題まで、介護コンサルタントの著者が書いた介護ガイドである。 介護に関する正しい知識と十分な情報が必要だが、非常に不足していると著者は言う。
 まだ私の身近には要介護者はいないのだが、介護現場職員の定着率の低さや人手不足、親が要介護となったときのことが気になり始めたため本書を手に取った。 介護保険制度や関連施設、介護現場の実態を知ることができた。老人ホームなど施設系の介護に比重をおいて書かれている。 「介護の本質」が自立支援であり、自己決定が原則であることも分かった。そこには高齢者の尊厳を傷つけないことが大切になってくる。人が相手なのだから当然だ。
 国は長期入院を認めていないこともあり、「今後は多くの人が介護施設で最期を迎えることにな」るだろうという。ますます施設の重要度が高まりそうだ。 ほとんどの高齢者は「仕方なく」など「後ろ向きの姿勢」でホームに入居するという。入るからにはできれば前向きに生活してもらいたいもの。 介護保険を賢く利用するためにも、自分が利用する立場になったときのためにも情報収集は必要だ。

○印象的な言葉
・介護のイメージ:国の世話になる、面倒を見てもらう
・介護の長期化、要介護度の重度化が進行。医療技術の発達で寝たきりになってからも長くなる傾向にある
・特別養護老人ホームはどこも満室
・介護以外の世話をするゆとりがない現場
・長期の介護による家族の疲労、共倒れ
・要介護度が高くなるほど施設への保険料給付額(収入)は増えるが、職員の負担も重くなる
・日本尊厳死協会:延命措置をしないことを生前から約束
・病院では入院日数の短縮化が進む
・一病息災:持病があるゆえに定期的に診察や検査を受け、長生きする
・介護はチームプレー。リーダーが重要
・定額償却方式なら、途中退去した場合の返還金が目減りしにくい良心的な老人ホーム。クーリングオフ制度もある
・認知症は80歳代では2割、90歳代では3割になる
・認知症患者は感情的な対応をされると否定された気分になり反発する。怒りや不安で感情が不安定になる
・グループホームに対する第三者評価
・高齢者の居住の安定確保に関する法律:所得の低い人に家賃の補助、低価格で借りられる
・介護保険施設や有料老人ホームなどの倒産件数は増加傾向。ホームの経営状況を測れるのが入居率。7割は必要
・社員寮を改修した高齢者住宅
・家族的な経営の小規模ホーム。自分らしく充実した生活
・経営者の顔が見えるホーム
・ホーム見学、体験入居。入居者や職員の表情、態度など雰囲気を感じ取る
・パンフレットや広告では分からないホーム職員の質、隠れた費用
・人件費節約のため職員の大半がパートやアルバイトが占めるホームも珍しくない
・リハビリを担当する機能訓練指導員。有資格者がホームに職員として勤務しているのはまれ
・情報開示に積極的で、透明性が高いホーム。ホームの個性はトップで決まる
・親を施設に預けることへの抵抗感、罪悪感。高齢者は家族に見捨てられたと感じる
・自宅は貸家にし、家賃収入で自分は老人ホームで暮らす

<その他>
・なぜ介護保険制度の保険料を納めるのは40歳以上なのか
・認知症による記憶障害:こまめに日記や記録をつけさせると本人が自覚できるし、安心もできる
・老人ホームの評価(目利き)がビジネスになる。アドバイザ的なニーズが高まる。多様なサービスを提供。ネットの活用

-目次-
第1章 要介護の高齢者になぜ「胃ろう」が増えているのか? ―医療と介護の間で揺れる特別養護老人ホームの実態
第2章 なぜ老人ホームの食事は「おいしい」と感じられないのか? ―豪華施設でも「食事内容」への不満はなくならない
第3章 介護付き有料老人ホームなら「介護は安心」のウソ ―介護保険を適用した「包括的サービス」の限界
第4章 入居費用が同じに見えても、施設によって異なる総費用 ―有料老人ホームの入居費用はなぜ高いのか?
第5章 家族が入居させたい施設に入居させられない不可思議 ―認知症高齢者ケアの切り札「グループホーム」が抱える難題
第6章 一人で暮らしたい高齢者の落とし穴 ―高齢者専用賃貸住宅で暮らすことで生じる“将来不安”
第7章 あなたの「老後の住まい選び」ここが間違っている ―本当によい有料老人ホームの見分け方
第8章 それでも幸せな老後を送れるかはあなた次第 ―「終の棲家」としての介護施設の役割